メグの1日
「こんにちはー! オルトゥスへようこそ!」
あれから、月日が経った。正確には覚えてないけど、3ヶ月くらいかな?
ようやくいつもの日常に戻ってきたってところだ。私も日常生活は問題なく送れるようになってる。もう、リハビリ大変だったよ! リハビリが、じゃなくて、すぐに休ませようとする保護者を押し切るのに多大なる労力を要したのだ。ひとりでできるもん! を何度発動したことか……!
「おはよーメグちゃん。エルフの郷方面の泊まりの依頼とか入ってない?」
「おはよーございます、ラックさん! 確かありましたよ! 2つくらいあったかなぁ」
「どんな依頼?」
「旅行客の護衛と、害獣駆除だったかな? ラックさんの受けてる依頼の事を考えるとー、害獣の方が通り道だよ!」
「覚えてんのか? すげぇなメグちゃん。ありがとよ! 行ってみる!」
このように! ちゃーんとお仕事も通常通り。噛む事が減ったからだいぶスムーズになったと思う。けど、何人もが少し残念そうな、寂しそうな顔をしながら頭を撫でていくのは解せない。生き物は成長するものなのだ。受け入れてほしい。
今日は午前中にお仕事、午後からは修行の時間という予定だ。みんなががんばってる、という事を見聞きしていると、私も負けてられないなって思ったから。やっぱり互いに影響しあえる存在って大事だな、って実感するよ。それが私にとってはリヒトとロニーという話。
ケイさんがロニーの師匠になったことで、ロニーは現在、ケイさんの仕事のない日は朝から晩まで秘密の特訓を続けているんだって。内容は知らないけど、一緒に依頼の現場にも行ってる様子。お昼ご飯や夕飯の時には、あのロニーがヘロヘロになって戻ってくるので、一体どんな修行をしてきたのか聞くのが恐ろしくもある。もう一度言おう、あのロニーが、である!
それからリヒトと父様からは定期的にお手紙が来る。なぜ父様も? と思わなくもないけど、リヒトが書くなら我も! と一緒に送ってくるのだ。まぁ、いいんだけどね? その分、私は2通のお返事を書かなきゃいけないわけだけど、書くのも楽しいし否やはない。
じゃあ何が引っかかるのかって? そんなの、父様からの手紙は毎度ボリューミーな上に、私を誉め殺す言葉や会いたいとかの話ばっかりなんだもんっ! もちろんそれだけじゃないけどさぁ、リヒトの様子や魔王城の近況なんかも色々教えてくれるよ? その部分の内容を探すのはいつも苦労するのだ。
ちなみに、私からの返事はいつも、その抜き出した中身のある内容にのみ触れています。父さまがストーカー化しないか心配だ。手遅れ? 違うと信じたい。
さてと。そろそろお昼の時間です! 今日はみんなお仕事で忙しいから、1人ランチと洒落込みます。やっとみんながお留守番を許してくれたんだよねぇ。それもこれも、新たなブレスレットのおかげである。
なんと、ミコラーシュさんとマイユさんがコラボして、私のブレスレットをリニューアルしてくれたのです! 元々の物に機能を増やしてくれたのだ。
当然、転移対策の機能だ。さすがにいかなる魔術も防ぐ、という魔術は存在しないから、何か問題があった場合、すぐ保護者に連絡がいくというシステムである。私が助けを求めれば、世界中どこにいても居場所がわかるんだって。人間の大陸でも、だ。すごい。
「そんなものなくても、今はなぜか、メグがどこにいてどんな状態かすぐにわかる」
ギルさんはそんな事を言ってたっけな。なんでも、極限状態で能力が覚醒したらしい。それほどの衝撃を与えてしまったのは私なわけだけど、それを喜んでいいのか、申し訳なく思えばいいのかは、よくわからない。
「こんにちはー! チオ姉!」
「お、お疲れメグちゃん! 今日のランチはちらし寿司だよ!」
「やったぁ! 良い匂いーっ」
食堂について真っ先にチオ姉に挨拶すると、労いつつ本日の献立を教えてくれる。例の一件から、ちらし寿司はオルトゥスでも定番メニューの仲間入りなのだ。
「スープはどう? 再現できそう?」
ランチプレートができるまで、私はそんな事をチオ姉に聞く。ロニーと共にオルトゥスに帰ってきた次の日、人間の大陸で手に入れたスープをチオ姉に渡したのだ。レオ爺のスープの味に似てると思ったから渡したんだけど……チオ姉からすれば似てないかもしれないって内心ドキドキだった。
けど、チオ姉は一口飲むなり、目を見開いて私に質問攻めしてきたのだ。あれには驚いたー!
「うーん、もう少しでわかりそうなんだよね。何が違うんだろうなぁ……」
それ以降、チオ姉はずっと研究しているのだ。
「私、チオ姉のスープも好きだよ?」
「ふふ、ありがとうね。それはあたしもさ! けど、レオの味が再現出来たら、料理の幅も広がるだろ?」
ニッと笑いながらチオ姉は嬉しそうにそう言った。うん、そうだよね! 探究心や向上心を忘れない、それがチオ姉なのだ。
「じゃあ応援する!」
「おっ、心強いね! 出来たら1番に教えるよ」
約束、と私たちは小指を絡ませて笑い合った。チオ姉なら、きっと再現出来ちゃうよね! その日を楽しみにしよう。……正直味の違いがわからないのは、この際気にしたら負けである!
「さ、出来たよ。しっかり食べるんだよ!」
「はーい! いただきますっ」
チオ姉のちらし寿司ランチプレートは、言うまでもなく美味でした!
お腹も膨れたところで、早速私は訓練場へと向かいます。動きやすいように戦闘服にチェンジ! 精霊たちにも魔力をたっぷりあげているので魔術の訓練も出来ちゃう。でもまずは、衰えた体力を戻すために、訓練場にある様々な器具で身体を動かすのだ!
器具っていっても、スポーツジムにあるような筋トレグッズの方ではなく、アスレチックみたいになってる場所で運動する。筋トレはね、私はまだ空き瓶とかで十分なレベルだから……
というかあんな重そうなの持てる気がしないし、腹筋マシンにしろ背筋マシンにしろ、身長が足りなくてまだ使えない。あのフロアでトレーニングするのは100年後とかじゃないかな……
「よぉし、やるぞー!」
「お、メグ! 今日もがんばれよー!」
訓練場へ到着して気合いを入れていると、すでに訓練していたギルドの人たちがそんな風に声をかけてくれる。えへへ、共にがんばろー! もちろん、暗黙のルールにより、それ以上はお互いに声をかけ合わない。各々、トレーニングに集中するためだ。
今日の私の特訓をしてくれる先生はお父さんである。でも、たぶんまだ仕事してるから、先に準備運動だ。ストレッチして、アスレチックを何周かこなしてたら来るだろう。よし。
こうして私は入念にストレッチから始めた。ポカポカとほどよく身体が温まったところで、レッツアスレチック! これがなかなか楽しかったり。
予想通り、しぼらくするとお父さんがやってきたので、そこからは効率の良い身体の動かし方や魔力の運用法など、実践を交えてお勉強。さすがお父さんは教え方がうまい。
「環の時とは大違いだなぁ……メグは運動神経良くてよかったな?」
こういうからかいさえなければいいのにっ! 悪かったね! 前世運動音痴で!
こうして夕方には特訓を終え、お風呂に入ってから夕食、就寝という流れが、最近の私の1日だ。丸1日お仕事の日も、お休みの日もあるけど、少しの時間でも訓練は欠かさないようになったのだ。えへん。
充実した毎日。いつか、簡単な依頼とかもできるように、というのが今の目標。過保護なみんなを説得するためにも、こうしてせっせと頑張ることが近道だ。今日も私は程よい疲労感の中、眠りについた。
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