買い物へ
おはよーございます! 寝る前にあれこれ考えて、羞恥で寝れないかも? と心配した私ですが、そんな事は一切なく熟睡した模様です。夢も見なかったしね。でも、メグとはまたお話ししたいからまた夢で会えるといいんだけど。ま、そんな都合良くはいかないかぁ。
さて、今日も元気にお仕事しよう! 色んな事があり過ぎてちょっと気持ちが混乱しがちだけど、朝は変わらずやってくるのだ。えっと、確か今日は午前中だけ看板娘なんだよね。午後はお昼寝以外予定はなかったと思う。出発が5日後って言ってたし、ギルさんに頼んで必要なものを揃えに行こうかな?
そんな事を考えながら今日もクローゼットの前に立つ。ど、れ、に、し、よ、う、か、なー!
「よちっ! 今日はこれー!」
悩むこと数秒。コーディネートはされてるので選ぶだけなのはつくづく楽である。そして、今日選んだのはずっと気になっていた着物風ワンピースである!
白い生地に赤い大きな花の柄が刺繍されてて、シンプルながらなかなかに目立つ。腰には帯のような太いベルト。1人で着やすいように簡単に留められるようになってる優しい作りだ。丈はそれなりに長いけど裾が少し広がっているから歩きやすそう。あとは所々レースで飾り付けもしてあってちょっと不思議なデザインになっている。
「下駄とかサンダルじゃなくてよかったー」
基本は靴までセットになってるんだけど、この服でも靴はショートブーツの様な形。これでもオルトゥスで働いてる身だから歩きやすさは重要である。さすがはランちゃんだ!
最後に鏡の前でくるんと一回りして全身チェック。うん、可愛らしい! さて、ギルさんの部屋のドアをノックしましょー!
ノックするとすぐに返事があり、それからドアが開いた。ギルさんはいつ見ても同じ服なんだけど……着替え、ないのかな? それとも同じ服を何着も? そんな素朴な疑問を思い切ってぶつけてみると。
「あぁ、この服は特別製だからな。自動洗浄してくれる。魔物型になった時に自動的に亜空間へと収納され、人型に戻れば洗浄された状態になっている。普通の服より魔術も通しにくいから戦闘服でもある」
だからあまり着替える必要がないんだそうだ。ちなみに寝る時も快適らしい。何そのスーパー素材……さ、さぞやお高いんでしょうね!?
「ちょうどお前のも出来る頃だからな。午後は空いているんだろう? 受け取りに行くか?」
「ふぇ!? 私の、でしゅか?」
何でも、私が狙われていると知った時にすでに注文していたのだそう。なんて用意が良いんだ、このパパは!
「まさか遠征に行く事になるとは思わなかったが……間に合いそうで良かった。これで安全性が増すからな」
そう言ってくしゃりと私の頭に手を置いたギルさんは次いで、まぁ指1本触れさせる気はないが、と告げた。イケメンか!? あ、イケメンだった。
それから2人で朝食を食べ、お昼寝から起きる頃には自室にいるから呼ぶように、とギルさんと約束をしてからお仕事開始となりました! 食堂でもそうだったけど、今日はやけにギルド仲間に声をかけられたよ。
「聞いたよメグちゃん。遠征だってな」
「あぁ、心配だよ! でもギルさんがいるもんね……!」
「もう立派なオルトゥスの一員だねぇ」
「しっかりな! ちびっころ!」
概ね心配と激励のお言葉だった。いつも思うけど本当に皆さん優しいよね。お姉さん、嬉しくて何度も涙ぐんじゃったよ!
「精一杯、がんばりましゅ!」
その度に私が返せる言葉と言えばこの程度だというのに。足手纏いにならないように、は違う。だっているだけで足手纏いにはなっちゃうもん。自分に出来ることを、も違うんだよね。私に出来ることなんて知れてるもん。言うなればハイエルフの郷というドアを開ける鍵みたいなもんだ。あればいい、居ればいいのだ。
だから言えるのは、頑張るという事くらい。これも一体何を頑張るんだって感じだけど、怖くて泣いたりしないとか、出来るだけ邪魔にならない場所にいる、とかそんなもんである。情けないけど私は自分の事はわかっているのだ。必要であれば精霊たちに助けてもらうべく、毎日ちょこちょこ魔力を渡してたりはするけどね。貯魔力である。
どうせ何も出来ないけど、だからって何もしないのとはわけが違うのだ。微々たることでもしないよりマシ、0よりマシなのだから。
さて、無事に午前中のお仕事も終わって今からお昼ご飯ですっ! ルンルンとギルさんと食堂に向かっていると、ケイさんとバッタリ出会った。うーん、今日もイケメンオーラ全開で眼福です!
「じゃあお昼寝の後から買い物かい? それならボクとメアリーラちゃんも行っていいかな?」
「いいでしゅけど、メアリーラしゃんも?」
「そうだよ。ラグランジェに依頼するんだ。忘れちゃった? ぬいぐるみの事」
「! ぬいぐるみー!」
そうだった! 私の部屋のお披露目の時にそんな話で盛り上がったよね!
「ぜひ、ボクからメグちゃんに贈らせて欲しいなって思って。今注文したら、ギルドに戻ってきた時には出来ているだろうから」
あ、そうか。もうあと4日後には旅立つんだよね。そう思うとドキンと心臓がはねる。それを察したようにケイさんはフワリと笑ってこう付け足した。
「楽しみがあった方が、頑張れるだろう?」
その言葉の裏には、お互い無事にいようね、という意味が含まれているように感じて、緊張がホロホロ解けて心が温まっていく気がした。
「あいっ! しゅっごく楽しみでしゅっ!」
「……流石だな」
「んー? 何の事だい?」
とぼけたようにウインクしたケイさんは誰よりもカッコ良く見えた。
さてさてギルさんとケイさん、それからメアリーラさんと私の4人でやってきました! ラグラン
「あら、久しぶりねぇ。んふふっ、聞いてるわよぉメグちゃん! 随分頑張ってるじゃないのぉ! おかげで売り上げがのび続けてるのよぉ!」
「本当でしゅか!? きっとみんな、このお店の魅力に気付いたんでしゅよ! 私の宣伝はお店を覗いてみるキッカケになってるだけでしゅ」
だって、お店を見てみても気に入ったものがなかったら買うこともないし、売り上げが伸びるわけないもん。だからこれはランちゃんの腕がいい証拠なのだ!
「んまっ! 嬉しいことを言ってくれるわねぇ。でも、こぉんなに完璧に着こなしてくれるメグちゃんがいてこそなのよ? これからも張り切っちゃうわぁ」
ランちゃんは嬉しそうにクネクネと身体を動かしながらそう言った。えへへ、そう言ってもらえると私も嬉しい。
「ラン、出来ているか? メグの戦闘服を受け取りに来たんだが」
「バッチリよぉ! 可愛くて機能も十分なスペシャルな戦闘服が! 予算は気にしなくていいっていうから色々付けちゃったわ! もちろん、安全面に最も重点を置いて作らせてもらったわ」
「それでいい」
予算度外視!? そ、それって大丈夫なの……? ギルさんにはすでに結界まで張れちゃう亜空間収納ブレスレットまで貰ってるんだけど!? チラと見上げると、言いたい事が伝わったのかギルさんはこう言った。
「……収入はたくさんあるんだがほとんど使わないから貯まっていく一方なんだ。むしろ使わせてくれると助かるくらいでな」
ああ、一生に一度は言ってみたいセリフだ。とはいえ金額が金額だけに麻痺しそうだし、買ってもらう私としてはガクブル物だよ!?
「メグちゃん。ギルナンディオの言うことは本当だよ? この男は全くお金を使わないから、経済を回すためにもこういう時にドカンと使ってくれた方が世のため人のためなのさ」
「お前は遊びに使い過ぎだろう」
「可愛い女の子に払わせるなんて、そんな事出来ないよ」
「ケイさん、つまりは女の子と遊びに行き過ぎなのですよ……!」
結論。ギルさんもケイさんも、タイプは違えどお金の使い方が豪快である! そんな事を考えながらしばし遠い目になりましたとさ。はぁ、しゅごい。
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