種族についてお勉強
サウラさんとジュマくんが出て行った後、私はシュリエさんにエルフについて聞いていた。自分の種族だもん。ちゃんと知っておきたいと思って。
自分の種族だというのに人に聞くという不自然さ。でも聞くは一時の恥、って言うでしょ? 使う場所違う? 細かいことはどうでもいいのっ!
でも実際は拍子抜けするくらいあっさりと答えてくれた。自分の種族について改めて説明するなんてこと、どの種族でもあまりないそうで、子どもゆえの純粋な疑問として捉えられ、問題なく聞くことが出来たのだ。
確かに人間って何? って小さい子に聞かれても、まあ、変ではない、かなあ。犬って何? 猫って何? 人間って何? ……うん、ちょっと変わり者かなって思うけど。
「まずエルフの特徴と言えるものは、輝く髪と青系統の瞳、他の者より耳が尖っている事ですかね。私のような色合いが一番多いかも知れません。メグは髪も目も色が少し変わっていますが、間違いなくエルフの特徴と言えますね」
そうなんだ……私は今のところ耳と髪の色しか実感が持てないんだけどね。まだ自分の姿を見てないし。ま、そのうち鏡くらいは見る機会があるだろう。
「それから、エルフは元来自然と共に生きる種族。ですので自然魔術が得意です。ですから普通の生活魔術はうまく使えなかったりするのですよ」
「そうなのか、知らなかったな」
「あまり知られていませんからね。それに、違うと言っても魔術効果はあまり変わりませんから、知られていなくても問題はないんですよ」
ギルさんが驚いたように口を挟む。うまく使えないだけで、生活魔術の使い方でも発動はするのだそうだ。細かい制御が出来ないけど。魔術っていうのも色々あるのねー。
「あとは他の亜人のように、我々をエルフの亜人、とは呼びません」
どうも、人間、亜人、エルフ、といった具合に1つの種族として存在するようだ。エルフの他に、ドワーフやサウラさんの小人、あとは巨人なんかも亜人とは別扱いなんだって。
「簡単に言うなら、亜人というのは混血なんですよ。人型になれて一定以上の知恵と理性を持つ魔物を魔族と呼び、魔族は別の種類の魔族でも子を成せるのです。ですから亜人と呼んではいますが、呼び方が違うだけで亜人も魔族と全く同じ存在なのです」
「ただ、魔族と呼ぶ存在というのは、一般的に魔王に属するものという認識が強い。魔王至上主義な魔王配下は、魔族と呼ばれることに誇りを持っているから亜人と一緒にされると不機嫌になるんだ」
「逆に亜人の方も魔王の配下と区別してもらいたいので、自分たちのことを亜人と呼ぶようになったのですよ」
今、サラッとすごいこと聞いたぞ? 魔王、ですと? いるんだ……魔王ってくらいだし、やっぱり脅威的な存在だったりするのかな? そう思って魔王? と子どもらしく聞いてみた。
「魔族の中で、圧倒的な力を持つ者が魔王だ。と言っても、今はただの一国の王に過ぎないけどな」
「今は……?」
「そうですよ。まだそうなってからの歴史は短いのですけどね。約200年前は、魔王がその他の人類を侵略したりと、脅威的な存在だったんですよ」
歴史が短いって……200年で? きっとこれは人間の価値観だろうけどさ。
「侵略したのにもちゃんと理由がありはしたんだけどな。でも侵略される側はそんな事、いい迷惑でしかない」
そりゃそうだ。立場によって正義っていうのは形を変えるものだし。誰の立場でも納得のいく正義なんて存在しないもんね。
「とにかく荒れに荒れていた激動の時代でしたね……あの頃はその日食べるものを確保するので精一杯というのが常でしたし」
「だが、そんな時代を変えた人物がいる」
まるで戦争だ。ううん、まさに戦争だったのかな。平和ボケした私には想像すら出来ないや。口ぶりからすると、シュリエさんやギルさんは、その時代でも生きていたのだろう。……想像がつかな過ぎて、何を言っても浅薄な言葉になりそうだ。
でもそんなすごい時代を変えた人物がいる。どの世界にも偉人と呼ばれる人がいるものなんだよね、きっと。時代の節目に、キーとなる人物か……どんなすごい人なんだろ。
「その人の名はユージン。このギルドの創始者であり、我らの
うええええ!? かなり身近な存在だった!! しかも何やら今も存命! う、うわぁ、すごいとこにきちゃったんじゃないの、私!!
「……いい反応だな」
「本当に。目をキラキラさせて、可愛らしいったらないですね」
誰だってこんな話初めて聞いたらこうなるって! 私だけじゃないからね……? たぶん。
「
「そうだろうな。それにメグはまだ幼いのに賢い」
「そうですね。私たちの話を大体理解していますし。ですから年は恐らく20か30くらいではないかと思いますよ。それなりに大人の話を理解出来る年齢です。……それを抜きにしてもメグは賢すぎる神童と呼べますけど」
うぉう。ひょんなところで私の評価を聞いてしまったよ。年齢が大体合ってるのが微妙な心境だけど。
でも確かに私の理解力は子どもらしくなかったかもしれない。もっと純粋な子どもを演じるべきだったかな?
けどね、私って昔から嘘がすぐバレるタイプなんだよね。嘘をついて怪しまれるくらいなら、自然体でいようと思う。嘘はつかない、でも全てを話さない。そんなスタイルで行こう。
とても気の良い人たちだけど、私が異世界から来たなんて、それも中身だけなんてそんな話……いくら魔術が普通にある世界だとしても怪しすぎる内容だと思うし。
せっかく信用出来そうな人たちと巡り会えたんだもん。……それを失うのは怖いんだよ。
少しだけ気持ちが落ち込みそうになっていると、軽いノックの音と元気なサウラさんの声が聞こえてきた。……お仕置き、終わったのかな? 清々しい笑顔で入室してくる。
サウラさんの明るい声と笑顔に気持ちが沈まずに済んだ。サウラさんありがとう、と心の中でお礼を言う。
でもどうしてそんなに達成感溢れる笑顔をしてるんでしょ? 姿の見えないジュマくんのことや、ご機嫌の理由……ちょっと気にはなるけど、聞くのはやめておこうと思うよ!
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