9日目3/3

 私は我が目を疑う光景に、何も言葉が出なかった。

「姉さん……。一体、裕司くんに何をしたの……?」

「見てわからないかしら? 戦いに巻き込んではいけないから、私が安全な所に隔離したの」

「勝手なことをしないでよ……!」

「貴女こそ、裕司くんをこんなことに巻き込むの?」

「ッ……!」

 確かに。

 こうなった原因の責任は、半ば私にある。

 けど、だとしたら、姉さんはなんで……? なんで、私を止めようとするの……?

「動揺している余裕があるの?」

「!」

 姉さんに言われて、向き直る。

 そうだ、今は姉さんを……その前に、裕司くんを何とかしなくちゃ……!


「夢より覚め、戦禍せんかより逃れよ!」


「ッ! メイ……その呪文は!」

 姉さんが慌てふためくが、それでいい。

 泡の中に包まれていた裕司くんは、この場ゆめより覚めた。

「メイ……!」

「恨めしげね、姉さん。あまり妹をなめてかからないでね……!」

 私の意識が急速に遠のく。けど、これでいい。

 裕司くんさえ無事であるならば。


     *


 あれ、どうなったんだ?

 メアさんが何かを喋ってから、記憶が無いや……。

 ぼくは弾かれたように時計を見る。午前五時五十九分。

 いつもの起床時刻の一分前だった。


 けど、このわけのわからない感覚は、一体なんだろう……?


 疑問を抱えつつも、ぼくは朝ご飯の為に体を無理やり起こした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る