ごく当たり前な日常w 5

 市川市 某高校前


 苺谷いちごたに小萌こもえは走っていた。


 その重たい胸を抱えながら。


――間に合え! 間に合え!


 苺谷は先程、通りの角を曲がる直前、謎の男との衝突で、サイズが合っていなかったブラジャーが衝撃で壊れてしまっていた。


――も〜この前買い変えたばっかりだったのに。


 制御を失った苺谷の胸は、容赦なく上下にブルンブルンと揺れていた。


 苺谷は気づいていた。


 道行く人々の視線を。


――みんやジロジロ見すぎ〜でも仕方ないか、私って、巨乳なんだもん☆


 だが、苺谷には自分の大きな胸のことなど気にしてる余裕は無い。


 一刻も早く高校に着く為に顔を真っ赤にして、苺谷は目的地に向かって走り続ける。


 そうこうしていると、苺谷の視界に高校が見えて来る。


 自分の左腕に装着していた腕時計を確認する。


 予定通りの時間に着き、苺谷はホットした。


――何とか間に合った。


 予定時間内に到着して安心した苺谷走るのを止て、残り短い距離を歩くことにした。


「仏子! おはよ!」


 突如背後から声が掛けられ、後ろを振り向くと、そこには同じクラスメイトである長谷川はせがわ由美子ゆみこが走って来ていた。


「由美ちゃん、おはよ」


「おはよ! てかっ、どうしたの!?  汗まみれじゃん!」


「あ〜寝坊しちゃってね、家から走ってきちゃった」


「そうなんだ〜仏子代謝いいもんね〜」


「あはは……あ、それどうしたの?」


 苺谷は長谷川が首に下げている物が気になり尋ねると、長谷川は自慢気に説明し始める。


「あ、コレ?  ママが買ってくれたんだよ!」


「そうなんだ、由美子今日誕生日だもんね」


「そうなの、本当は今日の夜にケーキと一緒に出す予定だったみたいなんだけど、一日早く届いたからもう昨日貰っちゃったの!」


「お母さんネットで買ったんだね、由美子に似合ってるよ! その赤いヘッドホン」


「ありがとう! 私赤色が好きだから超お気に入りなの!」


「そうなんだね、取り敢えず朝の日直の仕事早く終わらせちゃお」


「うん!」


彼女らはまだ知らない、この後起こることなど。


苺谷小萌を中心に、人々はこれから、予期もしない事件に巻き込まれて行くのである。

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