ごく当たり前な日常w 4

 市川市 某一軒家


「~♪」


 彼女には好きなことが二つある。


 一つは、歌を歌うこと。


 室内では、彼女の独特なオリジナルソングが響いていた。


 今日はあまり慣れてない朝早くからの仕事。しかし彼女にとって、時間帯はさほど影響しない。


 彼女は自分の仕事が好きだった。何故なぜならこれは、彼女の『趣味』である延長線。


 彼女はしみじみ思う。自分の好きなことをしてお金が入る。こんな幸せなことがあるだろうかと。


 そんな幸福にひたりながら、彼女は『作業』を続ける。己の欲求を満たすために。


 彼女が作業を続けている中、何やら上の階でドタバタと物音がするが、彼女の耳には入らない。


 キッチンではIHコンロが付けっぱで、フライパンで焼かれていた目玉焼きは焦げでおり、その隣の鍋は沸騰し、鍋の中の味噌汁が溢れていた。だが彼女は見向きもしない。


 リビングではテレビが付けっぱで、ニュースが流されていた。ちなみに現在流されているのは、市川市で連続殺人が起きており、殺害された者は惨い姿で発見されたという内容。なお、犯人の姿を確認しているものの、警察はまだ犯人を捕まえていない。しかし彼女は、ニュースには興味を示さず、只管ひたすらに作業を続ける。


 彼女は作業を続けている最中、相当な集中力を発揮する。無論、上の階からドタドタと急いで階段を降りる音も、聞こえることはない。


「ママー! ごめん今日急いでるからご飯要らな~い!」


ヘッドホンを付けて制服を着た少女は急いで靴を履くと、勢いよく扉を開けて走って行った。


 彼女は少女の言動に気づいていない。


 彼女が聞こえて見えているのは、骨を削る金属音のような鈍い音と、しゅ色に染まった床に転がった、女性のむごしかばねだった。


 彼女のもう一つ好きなこと、それは『人体』である。


 骨格、筋肉、神経など、人間の形態と構造に異常な関心をもっていた。


『ブーブブ』


 彼女のポケットに入っていたスマートフォンが振動し、一旦作業を中断する。


 真っ赤に染まった手でポケットからスマートフォンを取り出し、着信を確認する。


 確認すると、そこには一通のメールが届いていた。


 彼女はメールの内容を確認すると、すぐさまに身支度を始める。


 目の前に転がった人体を放置し、血なまぐさい部屋から姿を消した。


 彼女はまた歌い始める。新たな人体を求めて。


 彼女の人体に対する思いは、誰にも邪魔じゃまされることは許されなかった。


「~♬」

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