第24話 別れの儀式

私が帰り支度を始めると

貴方は背中を向けて煙草を吹かし

無言でテレビを付ける

半裸で寒くないのかといつも思うが

背中を見つめるのが好きだから言わない

身支度が整うと貴方の背中にキスをする

次いつ呼んでもらえかわからない

それまで私を忘れないで

そんな意味を込めた私の儀式

キスをしてシャツを羽織らせる

私が靴を履いていると

ボタンも留めずに玄関まで見送ってくれる

外に出る気は無いらしい

背中に気配を感じつつも振り返らない

ずっとこの部屋に居たい

未練を断ち切るために貴方の顔を見ない

立ち上がると必ず


腕を捕まれ


引き寄せられて


腰に手を回し


顎を掴まれ


キスをする



これが貴方の儀式

私は目を伏せ貴方を見ない

じゃあ

一言言い残し部屋を出る

いつでも来い

貴方は毎回そう言うけど

貴方の邪魔はしたくない

貴方がどんな顔で言っているのか

私は知らない

ドアを閉め鍵を掛ける

次に鍵を開けるのは誰なのだろう

貴方の儀式は私には辛い

心を部屋に置去りにして

私の部屋に帰る

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