第三十章

第三十章

六角堂。

床の上に座り込み、ふさぎ込んでいる千鶴子。

床の上には、水穂の布団がそのまま敷かれたままになっている。

千鶴子「水穂さん、あたしは、、、あたしは必ず取り戻しに行くから、、、。」

そう言って彼女は、布団に突っ伏して泣いた。

会議場は、もぬけの殻も同然であった。眞砂子も、狂変した主君に使える気はなかったようで、勝手にすればと言葉を残して千鶴子が知らない間にいなくなっていた。いるとしたら、数人の女中たちだけである。

時に、明美の「ただの女子」という言葉が聞こえてきた。思わず

千鶴子「うるさい!」

と、床を思いっきりたたきつけた。

女中「どうしたんです?」

戸を開けて入ってみると、千鶴子は自らの頭を壁にたたきつけて、うるさいと怒鳴っている。

女中「会長、危険な真似はしないでくださいよ!」

千鶴子「明美に、これ以上私を罵倒するのはやめるように言って!」

女中「とっくに脱退して、私も行方は知りません。だって、脱退者と交流を持ってはいけないと言ったのは、会長でしょう?」

千鶴子「そんなことないわよ!明美でなければ、私の事をただの女子となじることはしないわよ!それに、明美が、いつまでも私のことを、ただの女子と罵って、止めても聞かないのよ!それくらい、耳があれば聞こえてくるでしょうが!」

女中「明美さんはこの部屋にはおりません。」

千鶴子「でも、声がするのだから近くにいるはずよね!」

女中「だから、私も彼の行方は知らないのです!これしか言えません!」

千鶴子「明美!明美!どこにいるの!出てきなさいよ!姿を隠しながら、いつまでも私の事を、なじる何て卑怯よ!」

女中「だから、明美さんは、ここにはおりません。」

千鶴子「でも、声だけは聞こえてくるでしょうが!姿を隠しながら勝手に長歌を唱えるなんて、失礼も極まりないわ!一体何をするつもりなのよ!」

女中「麻黄の飲みすぎですかね。会長が販売させた麻黄を使った子供たちが、皆そういう状態になったそうです!多動を抑えるどころか、、、。」

千鶴子「うるさい!あれがないと、落ち込んだ気持ちを持ち上げることはできないじゃない!」

女中「やっぱりそういう事ですか。」

千鶴子「早く明美を止めて!」

女中「それなら、外から流れてくる音に耳を傾けたらどうです?きれいな笛の音が流れていますよ。」

千鶴子「え、、、?」

と、壁に耳を近づけると、確かに笛の音が聞こえてきた。それに交じって、見事なベルカントでの歌声も聞こえてきた。

千鶴子「何、、、?」

女中は、これを見計らって、ここぞとばかりに部屋を出て行ってしまった。

千鶴子がさらに注意して、外の歌を聞いてみると、次のような歌詞が笛に交じって聞こえてきた。

歌声「天地の、別れしことも

   川の水、流れしことも

   松の木々、植えられしことも

   人間の、なすことにあらず

   われらただ、田畑を打ちて

   布を織り、家家を建て

   物作り、物を食して

   今ここに、生きていること

   奇跡なり、心に誓ひて

   生きること、これより大き、喜びはなし。」

笛により、間奏が入った後、反歌が聞こえてきた。歌詞は次のような物であった。

歌声「大きなる、事業あれども、いとかいなけり

   小さきことぞ、幸せなるべし。」

千鶴子は、怒りに任せて六角堂の外へ飛び出した。

外へ出ると、瓦礫を撤去する作業は中断されている。住民たちは土の上にじかに座って、その歌を聞いているのである。歌っているのは、十数人の旅芸人たちの様で、芸人の中には歩けない者も存在していた。ただ、芸人たちの中に、水穂の姿はなかった。

千鶴子「こら!あなたたち!」

住民「なんですか、せっかく歌声を聞かせてもらっているんだから、邪魔しないでくださいよ!」

千鶴子「何をなまけているの!そんな暇があったら、早く瓦礫の片づけをしなさいよ!」

住民「いやあ、またこれからも野分は起こりますから、起こる前の状態にはあえて戻さないほうがいいのではないかと、こちらの方は言っています。」

千鶴子「そんなことを言っているから、いつまでも作業が進まないじゃないの!そういう娯楽的なことは、働くのが終わってから、たっぷりと楽しめばいいわ!」

住民「いや、後ではできません。今のことは今しかできない。だって、私たちの子供たちはそれをしようとしていたのに、命を落とした。」

千鶴子「それは、矯正するほうが先で、そのようなことをする権利はまるでないからよ!権利の主張なんて甘えている証拠よ!」

住民「権利の主張をしなければならなくなったのは、子供たちが居場所を喪失して、怒りを覚えたからだと、教えていただきました。そういう感情さえなければ、権利の主張など、しなくてもよかったのではないですか?」

千鶴子「まあ、それではまるで子供に暴力を許可しているようなものだわ。親も社会も期限付きであり、自分を守ることがすべてであると教え込んでいかなければ、この世界の平和なぞ、実現しませんよ!」

芸人「そうですね。でも、平和ということは、そういう事ではございません。歌詞に書かれたとおり、毎日何もないという事こそ、真実なる平和です。そのためには、若い人達を抑圧してしまうのではなく、彼らの能力を生かしていくのが一番なのです。」

住民「そうだぞ。例えば、麻黄から出したという、あの薬、落ち着きのない子に飲ませると、落ち着きが得られるというので俺たちはそれを使ってみたが、ちっとも使い物にならず、逆にあの世に逝ってしまった。俺たちは、そんなことはこれっぽっちも望んではいなかった。それよりも、うちの子が、落ち着きがないために、いじめられたり変人扱いされるのがかわいそうだったので、それをなくすために薬をあげただけで、あの世に送ってしまうということはしたくなかったぞ!」

慶紀「それは誰が悪いわけでもないですよね。薬が、悪かっただけですよ。そんな危険な成分だったなんて誰も知らないわけですから。商品試験をするとかして、ちゃんと、使い続けてからどうなるか、教えていただいてから、やらせてほしいものですな。」

ひろし「まあ、いずれにしても、この会は、失敗に終わりましたね。」

住民「それに、俺たちはやがて年を取りますが、その時に、手伝ってくれるものがないといのは、本当に不便ですよ。だって、歳をとれば、自動的に体力もなくなるでしょう。それで、仕事を続けるのは、大変になってくるんです。まあ、子供が、それを続けてくれるのを望むというのは、高望みかもしれませんが、少なくとも、この家が続いてくれる希望も持てますねえ。」

住民「私は、子供に教えるという喜びというか、楽しさを亡くしたわ。もしかして、子供を鍛えなおすことだって、ある意味では、楽しいことなのかもしれなかった作業だったのに!」

千鶴子「何を言っているの!その作業のせいで、あなたたちの時間がどれだけ盗られたのか、考えていないの?」

慶紀「いや、楽な方に走ると、かえって変になって、良い結果を産みませんね。」

千鶴子「あなたたち!」

慶紀「はい。」

千鶴子「いったいどこから来たの!私たちの住民をたぶらかして何をするつもり?」

芸人「私たちの、ですか?」

千鶴子「ええ、一応、ここの政権をとったのは、私たちなのだから、、、。」

芸人「違いますね。」

彼の一言に、千鶴子だけではなく、周りの住民たちも一瞬動作を止める。

沈黙の中、彼は住民たちに向かって優しく微笑んだ。そして、着物の袖の中から紐を一本取り出し、自身の赤紫の長いまき毛をポニーテール様に縛った。

住民「あ!この人は、いや、違う。このお方は!」

住民「おい、みんな控えろ、控えろ!そうでもしないと磔台が待っているぞ!」

住民たちはいっせいに彼の方を向いてその場に座り、丁寧に座礼した。

住民「も、申し訳ありません!あんな無礼な口の利き方をしてしまいまして、どうかお許しください!」

住民「俺じゃないな、僕たち、本当に、わからなかったんです!本当にご無礼の数々、お許しくださいませ!」

てん「いいえ、かまいません。無礼だとは、一言も申してはおりません。それよりも、こちらの方が感謝しなければなりませんね。わたくしたちの指示に従ってくれて。」

住民「ようちゃんが、発言してくれなかったら、私たちは、こうして直に言葉を交わすなんてできなかったかもね、って、そんなことも発言してはいけないのね!ああああ、ごめんなさい!」

てん「今回、わたくしたちは身分を隠してこちらまで来させていただいたので、わたくしたちの方こそ、謝罪をすべきでしょう。皆さんの信頼を得るためには、そうするしかなかったのです。本当にこちらこそごめんなさい。」

千鶴子はキリリと唇を噛み、血が、あごの線を伝って地面にポトリと落ちる。

千鶴子「でも、そもそも、今回私たちがこちらへ進出させていただいた原因である、まんどころに飛び込ませた若者を作ったのは、そちらでしょう!」

住民「何を言うんだ!少なくとも、自分の子供を殺害するようにという指示を出したことはなかったぞ!」

住民「それに、この吹雪や、大嵐で、やっぱりあたしたちは、昔ながらののんびりした生活をするほうが、よっぽどいいってこともよくわかったわよ。」

住民「音楽することだって、楽しいですよ。」

住民「まあ、確かに事件が起きてしまったのはそうなのだが、でも、ちゃんと適切なやり方で、それを再発しないように考えていたのは、やっぱり昔からのやり方をしてくれる人たちだなって、僕は確信しましたけどね。」

てん「どうですか?」

千鶴子「どうって何が!」

てん「負けましたね。会長。」

千鶴子「負ける?私が?」

てん「ええ、たぶんあなたを支持される方は、もうどこにもいないと思います。」

千鶴子「そんなことないわよ!」

てん「ご覧になったら?」

住民「そうだぞ!」

住民「そうだ、目時は出てけ!」

住民「俺たちは、やっぱり橘として生きていくのが一番いいよ!たとえ三部族共存の時代と言われてもな!」

住民「そのほうが、よっぽど楽だし、よっぽど楽しいや!やっぱり、昔ながらの知恵ってのは、こういう災害があれば、役に立つようにできている。俺たちの先祖が、変わらなかったのは、こういう災害から守るためで、それ故に、俺たちは生きていると考えれば、やっぱり伝統というものは素晴らしいな!」

千鶴子「それでも、今の時代には当てはまらないことだって結構あるのではないの?」

住民「ぶっ壊れたら、治せばいいが通じなくなれば、この世は終わり!大昔からある言葉だが、すごい言葉だなあと、今の俺は考えている。」

千鶴子の顔が真っ白になった。

住民「目時の会長さんよ。もう、俺たちの大事な後継者を持ち去って、役に立たないと殺害するのはやめてくれませんか!」

千鶴子は、恐ろしい叫び声をあげて、会議場のほうへ戻ってしまった。それは、女性の声というよりも、ブルドーザーか、高いうなり声をあげて都会を破壊する大怪獣の様にけたたましかった。そして彼女が戻っていった六角堂の方から、まず、水の入ったバケツがひっくり返る音と、何かを投げつけたガチャンという音が。

てん「さあ皆さん逃げましょう!怖いことはありません!」

住民「逃げる?どうして?」

てん「今投げられたものは、ただの酒瓶ではなく、火炎瓶の可能性があるからです!」

住民「で、でもどこへですか!」

てん「まっすぐ北!」

予想は当たったらしい。まもなくバチバチと何かが燃える音がし始めた。

住民「どうせ、この瓦礫のやまだもの。焼かれても同じことだ!大事なものはそれじゃないはずだから、よし、逃げよう!」

住民「はい!」

住民たちは、てんたちがたどってきた道を必死で走っていった。てんは慶紀がせおった。全員、小川を渡って、小高い丘の上に上った。幸いなことに、川の氾濫は終わっており、てんたちは、難なく小川を渡ることができたので、危機一髪、火災に巻き込まれることはなかった。丘の近くにはてんたちを待っていたかのように洞窟があり、水穂はそこに待機していた。


一方。

杉三「おい、すごい火災だぜ!」

みわ「どこが?」

かぴばら「あ、も、もしかして、会議場があったところですかね、、、。」

杉三たちは、十数人の桜の男たちを引き連れて、北方へ戻ろうとしていたところであった。

むら「つまりどういうことですか。会議場が、燃えていると?」

かぴばら「そ、そういうことになりますね、、、。」

杉三「何があったかは知らないが、とにかく目時帝国は滅んだんだね!焼き払われたということはそういう事だろう!やったぜ!」

かぴばら「ぼ、ぼくらは、運が強いですな。」

みわ「でも、住民や、私たちの仲間が、、、。」

杉三「気にするな、なんでもいい急ごう!」

と、そこへザーッと雨が降ってくる。

杉三「わあ、二度目の野分か?」

みわ「急に暖かくなったから、野分がおこりやすいのかもしれないですね。」

かぴばら「と、い、いう事は、鉄砲水がまた起こるんでしょうかね。」

むら「いや、今回はそこまではいかないでしょう。雨は確かに強いですが、風が全く吹いておりませんからね。」

杉三「それなら、早く、北方へ行ってしまおうぜ!」

むら「ここで待った方がいいですよ。雨の中を歩くのは危険すぎます。そこの桜の木の下で、待機していましょう。」

むらの指示に従って、全員桜の木の下に座った。日本ではありえないほどの大木で、桜というより、聖なる木と言ったほうが正解かもしれないほど、立派な木だった。

杉三「おい。むらさん。」

そっと、枝に手をやった。

杉三「つぼみが出ているよ。」

確かに桜の木は多数の枝につぼみが見えていた。大木になっていたから、杉三の手にも届くほどのところまで枝が垂れ下がっていたのである。

杉三「こんな時代でも、桜の木は一生懸命花を咲かせてくれるんだな。ありがたいこった。だから、僕らも、早く争い事はやめないと、この木に怒られてしまうような気がする。」

むら「そうですね。でないと、桜の木が花を咲かせても、何も意味がなさなくなってしまう。そう解釈することもできますが、この花が咲こうとしているとは、悪い時代は、もう間もなく、終わりを告げようとしているのかもしれないですね。おそらく、この桜の木は、何百年も昔から、ここに立っていたと思いますから。」

雨はさらに長くふったが、むらの言った通り、風は吹かなかったので、横殴りにはならなかったし、鉄砲水が発生する様子も見られなかった。しかし、雨が降った時間は、前回よりも長く、杉三たちは、桜の木の下で、一夜を過ごすことを強いられてしまった。


どこかで鳥の声が聞こえだした。周りが少しづつ明るくなってくる。やがて自分たちの足元が、肉眼で確認できる明るさになってくると、杉三たちは、むらの指示で、再び北方へ向かって、出発した。


同じころ、洞窟の中では、とても深刻な問題が勃発していた。

淑子「で、どうなんでしょうか。」

慶紀「そうですね。あそこまで熱があると、動かすのは無理があると思います。」

淑子「あおい様の下へ、もう一度戻りましょうか?」

慶紀「いや、それはやめたほうがいいでしょう。先ほども言いましたが、どちらの方向へ動かすとしても危険だと思われます。」

淑子「そうですか。先が見えていると発言したのは、そういう意味だったんですか。」

秀子「しかし、そうなったら、だれが指導者として私たちを動かせばいいのですか。私では、誰かを引っ張る能力など到底ありませんよ。」

慶紀「それは、誰でもそうですよ。ある意味、権力の力は、本当に大きなものですから。」

秀子「じゃあどうしたら!」

淑子「秀子ちゃん、泣いたって駄目よ。解決方法を考えなきゃ。」

慶紀「いえいえ、秀子さん、こういうときですから、建前はいけません。建前で行動するときも必要だけど、時には素直に涙を見せてもいいのです。」

淑子「みんな同じ気持ちなんだから、それを表現されたら、余計に迷惑になるのと違いますか?」

慶紀「いえ、どうしてもできない人は結構います。」

淑子「すみません。それより、昨日の雨で、また鉄砲水が発生しないといいのですが。」

秀子「淑子ちゃん、そのようなことがおこりそうな音はしなかったわ。」

淑子「音には過敏なのね。」

秀子「そうよ!」

淑子「すごい開き直り。」

慶紀「まあ、言い争いはやめましょう。とにかくてん様は、あのような状態では、しばらくというか、もしかしたら永久に動けない可能性もある。だから、現状を伝えるべく、目印を何か用意して、誰かに、こちらへ来てもらうようにお願いするしかないでしょうね。そこでこうしたらどうでしょう。誰かが持っているものを川へ流すのです。そうすれば、上流に人がいるとわかってくださるでしょう。」

淑子「目印になるものなんて、何も持ってないわ。」

秀子「よし!これを使いましょう!」

秀子は、髪についていた花簪をとった。

淑子「秀子ちゃん、それ、お母様が、誕生日にくれた花簪だといつも自慢していたじゃない。そんな大事なものを犠牲にしていいの?」

秀子「いいのよ!いつもトラブルメーカーだった私が、こういうときだったら、バッチリ代表になれるんだ!それを考えれば、お母ちゃんだって喜ぶわ!」

その間に、慶紀も、自らの長じゅばんに着けていた半襟をほどいていた。

淑子「何をするんです?」

慶紀は指を噛んで血を出し、それでほどいた半襟に「れんらくこう」と平仮名で丁寧に描いた。秀子は、それに自分の花簪をさした。そして、近くに生えていた、比較的小さな里芋の葉を引っ張ってとり、それの上に「目印」を乗せた。

秀子「頼むわ、私の分身!」

秀子は小川のほうへ歩いていき、それを川の水の上に置いた。川は、まるでわかったよと返答したように、穏やかにそれを流していった。


杉三たちの方は、会議場近くに到着していた。もうしばらく歩いていくと、会議場があるはずだった。そのあたりに到着すると、煙の匂いがした。

杉三「かなりひどい火事だったみたいだな。」

みわ「本当ね。」

かぴばら「か、会議場も、影も形もない、、、。」

その通り、会議場も六角堂もなく、ただの焼け野原に変わっていた。風がヒューイと吹いて、

会議場の残骸である灰が、ものすごいいきおいで舞い上がった。

杉三「これ、、、。」

杉三の近くにころころ、と何やら金色の物体が転がってきた。

むら「ただの、金の塊ですかね。」

杉三がそれを拾い上げた。

杉三「いや、違うよ。如意輪観音様だ。でも、会議場の周りにお寺なんてあっただろうか?」

みわ「杉ちゃんたちが脱藩した間に、目時の会長が、会議場近くに移築した建物があって、そこに置いていたみたい。」

杉三「会長、今頃、骨になったのかな。」

みわ「たぶんそうでしょう。会長は。何十人もの住民を苦しめてきたんだし。いい気味だわ。」

むら「その仏頭も、目時のものでしょう。私たちが、再び溶かして、手錠にでもしてしまいましょう。」

杉三「いや、これは祀ってあげたほうがいいよ。こういう物を粗末にすると、跳ね返りが来るかもしれないじゃないか。それに、この観音様のお顔を見て、きっと、目時もはじめは悪い組織ではなかったとすぐにわかった。本当に悪い人であれば、ここまで優しい顔の観音像は作らせなかったはずだ。そんなのを、手錠にしてしまうのは、ちょっとかわいそうなきがするな。」

みわ「杉ちゃんは、信心深い一面もある人なのね。」

杉三「うん、仏法、習ったことがあるから。」

むら「そうですね。負の遺産として残すという手もありますよね。」

かぴばら「ね、ねえみんな!か、川の中からこんなものが流れてきました。さ、里芋の葉です。そ、それに、こんなものが付いていました!」

杉三「何か書いてある。けど読めない。それに、女性用のかんざし、、、。」

むら「そうですね。あいにくですが、私たち桜も、文字を読む習慣はありませんので。」

みわ「れんらくこう、と書いてあったわ。」

杉三「なあ、安禄山、これ、どこにあったんだ?」

かぴばら「こ、この近くにある、小川から流れてきました。」

みわ「でも、このかんざしは、女性ものとしてはかなり高級な物よ。それを、こうしてよこすことは、かなり深刻なのではないかしら。きっと、上流の方で、だれか人がいるという事なのよ!」

むら「もしかしたら、持ち主がいるかもしれないから、この川をさかのぼってみましょうか。」

杉三「よし、そうしよう!」

全員「はい!」

川に沿って歩く、杉三たち一行。


一方、川の上流にある洞窟では、てんが住民の一人から拝借した長じゅばんにくるまって、地面の上にじかに寝ていた。とも子が、布で時折額を冷やしてやった。

ひろし「あれ、なんだか音がしますね。」

秀子「音?」

慶紀「ええ、人が歩いてくる音ですね。」

とし子「もしかして目時の残骸!」

慶紀「私が見てきます。もし、戻ってこなかったらそう思って下さい。」

と、立ち上がって外へ出て行った。

すると、

声「あれ、あそこにいるの、慶紀さんでは?着ている物が違うけど、、、。」

突然、熱にうなされていたてんがはっと目を開けて、

てん「すぎちゃん!」

と叫んだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る