第十三章

第十三章

再び山道を移動していく杉三たち一行。

杉三「うう、寒いよ。なんかさっきよりもっとさむくなったような気がする。」

ぴーっと音がして、風が吹いてくる。慶紀が吹いていた、笛より強烈。

ひろし「この風だと、ふぶきますね。」

杉三「吹雪くの?」

てん「そうですよ。冬ですから仕方ありません。それよりも、目時の居地を早く見つけないと。」

そういうてんは、着物の上に、先ほどの茶店の主人にもらった一枚の布を巻いていたが、それでもかなり寒そうだった。

淑子「急ぐのはわかりますけど、てん様はお体が一番大切だと思いますが。」

てん「いえ、これ以上の長居はできませんから。」

慶紀「急がば回れとも言いますし、」

杉三「そんなことより、この中を歩いていくほうが危ないような気がする!」

杉三のいう通り、雪は止まず、それどころか、殴り掛かるように降ってきた。

杉三「おい、どっかで泊まろうぜ。これ以上行くと、立ち往生する!」

てん「いいえ、ここで足止めを食うわけにはいきません。行きましょう。」

慶紀「焦りは、禁物ですよ。本当に立ち往生したら、それこそ、目的を達成できなくなりますよ。」

杉三「本当にね、人間というより、冬将軍のほうが勝っているような気がする。どっかに避難したほうがいいよ。これでは、、、。」

ひろし「誰か来る!」

杉三「へ、どこに?」

吹雪いているせいでほとんど姿は見えないが、確かに前方から人が歩いてくる音がする。

杉三「雪女か?」

かぴばら「ち、違いますよ。げ、現実の世界にそんな者が実在するわけないでしょう。」

杉三「でも、ここまで寒いと、本当にそのように見える、、、。」

てん「違いますね。普通の、人間の女性ですよ。」

杉三「みんな目がいいな。」

と、ため息をつくが、確かに杉三にも、前方からつづらを背負った一人の女性が歩いてくるのが見えた。

てん「皆さん、道を開けてください。この辺りは、わたくしたちを敵視している者のほうが多いのですからね。」

慶紀「はい、了解です。」

と、淑子やとし子たちに、道のわきへ寄るように促したので、彼女たちはその通りにし、

道は人が通れるようになった。女性は、かなり急いでいるようで、杉三たちが道を開けて、すぐに近づいてきた。

と、あまりにも急ぎすぎたのか、転倒してしまった。その拍子に背負っていたつづらの蓋が開いてしまい、中身が全部出てしまう。

女性「ご、ごめんなさい!すぐに拾いますから!」

急いで雪の上に落ちた中身を拾い集め、手早くつづらの中にしまい込んだ。中身は、小さなガラス瓶で、何か薬酒のようなものが詰まっていた。大事なものであるのか、彼女は大急ぎで、その数を勘定し始めた。

女性「ひいふうみい、、、あれ、一つ足りない、、、。」

一生懸命探しているが、雪の中であり、どうしても見つからない。

女性「ああ、どうしよう。主人に、叱られてしまうかもしれないのに。」

慶紀「これではありませんか?」

と、足元に落ちていた瓶を拾い上げて、彼女に手渡す。

女性「あ、ありがとうございます!本当に助かりました!」

手早くつづらの中にしまい込み、ふたを閉めて背に背負う。

杉三「足りないと、何かなっちゃうの?」

女性「ええ、お仕えしている主人のものです。」

杉三「誰のものかじゃなくて、それが足りないとどうなるのかを聞いているんだ。」

女性「どうなるかって、旅の方々にそれを言っても意味はないでしょうに。」

杉三「いや、どうなるの?何か重大なことでもあるのかな?」

女性「教えてもどうなるものではありません。急いでいるので、通してください。」

杉三「君のご主人は本当に厳しい人なんだな。こんな寒い中、そんな重たいものを背負わせてさ!」

女性「しょうがないじゃないですか。主人は動けませんし、使えている女中も私ひとりですから。だから、私が取りに行かないでどうします?」

杉三「取りに行くの?何を?」

女性「あ、、、。」

てん「お通ししましょう。きっと、大変な主君をもって、苦労されているのでしょう。」

女性「も、申し訳ありません!ふ、不謹慎な発言をしてしまって。」

てん「いいえ、かまいません。わたくしたちへの考慮は必要ありませんので、お使えの主君のところへお戻りなさい。」

女性「ありがとうございます。でも、一つだけ、訂正させてください。確かに苦労しているように見えるかもしれませんけど、私は、使えてきて、不満を持ったことは一度もございません。よく、世間からも、遠いところまでこうして買い出しに行かせるようでは、本当におかしな人だと同情をもらうこともありますが、それはきっと、この地域は目時の力が強いから、皆、目時にたぶらかされてそういっているのだと、勝手に解釈しています。」

杉三「何、目時だって!」

女性「はい。目時の支部が近くにあり、そこがこの地域を押さえているので、皆さん、目時に従ってしまっております。でも、主人は目時に従わず、ずっと抵抗していたので、遂には、使えていた侍女も、私一人になってしまいましたけど。」

杉三「なるほど、つまり抵抗勢力があったわけね!」

女性「抵抗勢力と言っても、主人と仕えている、私だけの組織になってしまいましたが。」

ひろし「やっぱり、大きな組織になってしまうと、反対者も出てくるんですね。」

てん「詳しくお話をお聞かせ願えますか?もし、可能でしたら、主君と直接お会いしてお話してみたいですね。」

かぴばら「で、でも、こんな大勢で、ご迷惑になるのでは?」

杉三「いや、そうさせてもらいたい!こんな寒さの中では、もう僕らは氷の人形になってしまうぞ!」

女性「大丈夫ですよ。主人の屋敷には、空き部屋もありますので、使っていただければ。」

杉三「じゃあ頼む頼む!もう、本当に、この寒さの中では全然だめだ!」

女性「わかりました。ここからは近くですから、いらしてください。」

かぴばら「ぼ、僕、もっていきますよ。せ、背中に背負っている荷物、重たそうだから。」

女性「ありがとうございます。」

かぴばらは、彼女の背負っていたつづらを受け取って、背に背負うが、

かぴばら「お、重いなあ、、、。い、一体何が入っているんでしょうね。」

とも子「私たちより、大変なのかもしれませんよ。かぴばらさん。」

杉三「とにかく、止まってないで、暖かいところへ連れて行ってもらおう。」

女性「こちらにいらして下さい。」

全員、方向転換して歩き始める。一度は逆戻りしたように見えるが、すぐに、南方へ進む別の道を歩く。

しばらく行くと、雪は小降りになり、風も収まってくる。

女性「こちらです。」

と、一つの屋敷の前で止まる。

杉三「なんだ、女中さんだけだと言っていたから、もっと小さなものかと思ってたけど、結構広いな。」

女性「ええ、亡くなられた、主人のご家族の部屋などがそのまま残っているものですから。本当は取り壊さなければならないのかもしれませんが、主人が倒れて、取り壊しを依頼することができなかったもので。」

秀子「かなりの有力者だったのでしょうか?」

淑子「もしかしたら、ここの統治者だったとか、、、?」

とし子「きっとそうだと思う。なんか、偉い人の家だよ。これ。」

杉三「とにかく入らしてくれ。寒いんだから!」

女性「ええ、わかりました。」

と、正門を開ける。表札も何もついていなかったが、確かに一般的な民衆の家屋とは少し違っていた。このときは慶紀がてんを抱きかかえて中に入り、杉三は、淑子に背負ってもらって、中に入った。

玄関の戸を開けると、何も段差がなく、すんなりと中に入ることができるようになっていることから、この屋敷の主も、同じく歩行不能であることがなんとなくわかった。

女性「こちらです。一番奥の部屋におります。」

このセリフから、この屋敷には複数の部屋があることが分かった。

全員、廊下を移動したが、廊下はあるくたびに、きゅきゅと音を鳴らした。

杉三「鴬張りだ。」

ひろし「それがあるということは、かなり地位の高い方の屋敷ですね。鴬張りは、高度な技術が要りますから、高級な身分の家の方でないと作れませんよ。」

てん「ええ、わたくしが、以前住んでいたところもそうでした。今は、爆撃で壊されてしまいましたが。」

廊下はかなり長かった。

杉三「こんなところに歩けない主人一人で住んでいるとは、なんだかもったいないくらい広いな。」

とし子「きっと、ご家族もいて、使えている女中さんもたくさんいたんじゃない?何か謀反を起こして没落したか、あるいは、お家騒動があって没落したとか、、、。きっと、由緒正しい家系のはず。」

かぴばら「な、なんでしょうね。か、改易でもあったとか、そういう家だったのかなあ。」

声「いいえ、改易は致しておりません。謀反を起こしたわけでもございませんし、後継者争いがあって、没落したわけでもないのです。」

侍女がふすまを開けるとすぐに発せられた。力こそないが、特にへりくだった様子もなく、

悪びれた様子もない。

かぴばら「あ、ご、ごめんなさい!し、失礼なことを言いました!ど、どうか許してくださいませ!」

侍女「あの、背負っているものをここにおいてくださいませ。」

かぴばら「は、はい!す、すみません!」

急いでつづらを廊下の上におろした。その時に、鴬張りと混じって、ものすごく大きな音が鳴った。

杉三「割れたりしないだろうね。」

かぴばら「あ、ああ、ごめんなさい!な、中身を確認して、、、。」

と蓋を開けて、中身を全部出してみると、先ほどの瓶が十と、ダイコンや、ごぼうと言った比較的腐りにくい食品、二、三枚の陶器製の食器、さらに男性ものの着物なども入っていた。柄は庶民的な物であったけれども、工場で大量生産された安物ではなく、やっぱり身分の高い人物が使用するものという印象があった。

杉三「こんな、高級品を大量に入れて、あんな寒い中を歩いて持ってこさせるとは、なんというおかしな主君なんだろうね。よっぽど、頭の偏った人だったんだろうか。」

てん「いいえ、違いますね。偏ってはおりません。」

杉三「どういうこと?天井守りばかりして、、、。」

と、言いかけたが黙った。その狭い部屋で布団に横になっていた人物は、決して天井守りでも、怠け者でもなさそうで、杉三たちのほうを見て涙を流していたからである。

杉三「あ、ごめん。僕、馬鹿なことを言ってしまった。」

てん「慶紀様、おろしていただけないでしょうか。わたくしは、この方と直に話してみたいので。」

慶紀は言われた通りてんを畳の上におろした。てんは、手で這って、この人物のそばへ移動していき、枕元へ正座の姿勢で座った。

てん「わたくしが、こちらへ来訪するのがもう少し早かったら、そのようなお体にはならずに済んだのかもしれません。本当に、申し訳ありませんでした。」

主人「いいえ、そのようなことは申しておりません。このような世の中を敵に回した私が、間違いだったのだと思っております。」

杉三「なんだ、しゃべれるじゃないか!とにかく理由を教えてくれ。こんなべらぼうに広い屋敷に住めるほど、身分の高いはずなのに、どうして女中さんと、二人だけで暮らしていて、どうして天井守り役に回ったんだよ!」

主人「皆さんはどうしてここをお知りになったのですかな?」

杉三「だから、道路で偶然出会って、女中さんに連れてきてもらった。だってあまりにも寒いからさ。女中さん、いろんなものを背中に背負わさせて大変そうだったから、なんていう横暴な主君なのだろうと考えていたが、まさか天井守りとはね!一体どういう経緯で天井守りに回ったのか、聞いてみたいもんだ!」

主人「かいつまんでいってしまえば、世の中に疑問をもって、敵に回したからですよ。」

てん「どうか、敵に回ったとは、発言しないでもらえますか。わたくしにたいして、謀反を起こしたわけではないのですから。それに、わたくしは、お二人を敵視したとは、一言もお伝えしてはおりません。」

杉三「道中、この女中さんに聞いてみたけど、目時に対して、唯一の抵抗勢力だったわけでしょう。僕たちから言ってしまえば、天井守りをしている暇があったら、抵抗勢力として、いろいろ教えてもらいたい!」

主人「失礼ですが、皆さんはどうしてこの地を訪れたのです?」

てん「ええ、まんどころ大瀧で集団自決があとを絶たないので、」

てんも、涙を流してしまった。

杉三「てんが泣いたらダメだろう。とにかくね、その集団自決を促したのは目時会なんだよ!それを何とかして止めるために、てんも僕らもこうして悩んでるわけ!対策を出したって止められないから、僕らは脱藩してこっちに来させてもらった。こんなおかしな事件を引き起こして、何とかして犯人捕まえなきゃいけないの!そのためには、抵抗勢力の協力ってのはどうしても必要になるよ!僕らはそれを求めてやってきた!それの何が悪いんだ、そのくらい、身分の高い人であればわかってくれると思ったんだけどな!」

てん「もしかしたら、わたくしたちが、行動を起こすのが、遅すぎたのかもしれませんね。わたくしは、あまりにも愚鈍すぎたのです。きっと、わたくしたちが、気が付く前に、あなたは、すでに、何か動いていて、何かしらの被害を被ったのでは?」

侍女「お話してもよいのではないですか。妹様も、やっと、お喜びになりますよ。ここへきてくださって、お話を聞いてくださるだけでも。」

主人「わかりました。お話いたしましょう。私は、もともとはこの地域の統制を任されていたあおいと言います。私たちは、目時がこの地域に進出してくるまでは、ここで通常通り暮らしておりました。原因こそわからないのですが、この地域は他と比べると、気になるというか、少しばかり他と違う子供の多かった地域ではありました。」

杉三「つまり、僕らの言葉で言えば、発達障害とかそういう者が、多かったというわけね。」

あおい「名称はどうであろうと、極度に運動能力が低いとか、やたらに落ち着きがないなどの子供が多く、辺境ですから、彼らを育てている親御さんたちを、どのようにして援助したらよいのかという情報も入らず、統治者としては非常に困っていたのですが、、、。その答えを出したのは目時の人たちでした。ですから、私たちは、目時がここに支部を建てると申し入れてきたときに許可を出してしまいました。今思えばそれが間違いだったと思うのですが。」

杉三「なるほど、で、目時は、慶紀さんと似たような活動をしていたのだろうか。」

あおい「ええ、目時は、もともとは、そのような障害を持つ親御さんたちを救済する目的で、設置された会なので、はじめは、親御さんたちが、目時の幹部を講師に招いて、そのような子供たちとうまく付き合う方法などを伝授してもらう程度だったようです。しかし、そのうちに、今度はそのような子供だけではなく、思春期に問題行動を起こした若者を持つ親御さんたちが参加するようになっていきますと、だんだんに変わっていって、今度は問題を起こしたものを矯正する事業に手を出していって、、、。」

とし子「私たちもそこは聞いたことある!なんか、すごい洗脳教育をして、おかしくさせると。」

あおい「そうなんです。それは、親御さんたちを救済させるためにやっているそうなのです。親が期限付きであることを、体罰を通してわからせるのが目時の主張であったので、目時の矯正所の中では、日常茶飯事に殴るけるの暴行があったと聞きました。しかし、親に対して反抗している者たちを矯正させるには、力で押さえつけるしかない、痛みでわからせれば、二度と凶暴化することはないのだと主張し、子供の暴力に悩む人たちが、大変な支持を出していたので、私たちは、黙認するしかできませんでした。」

杉三「それこそ、恐るべき人権侵害だな!」

あおい「二年ほど前、目時の支部から、少しばかり離れたゴミ捨て場から、遂に男性の遺体が見つかりました。首から、ひもで絞められたような跡がありましたので、単なる殺人だと思われていたのですが、彼が、目時が主宰している支援施設に通っていたことから、私たちは目時の仕業ではないのかと疑いをかけて、目時に突入を計画したのですが、しかし、頓挫してしまいました、、、。」

杉三「なんでまた、そこで断念したんだ?本来ならそこで、取り潰しをするはずなんだけどな。」

あおい「ええ、世論が許さなかったのです。」

杉三「なんでだ!もしかして贈賄でもあったの?」

あおい「いいえ、そのようなことは一切ございません。ただ、ここの住人にとっては、目時会というのは、まるで天からの使者です。子供の暴力に悩む親御さんたちにとっては、唯一救いの手を出してくれたのは目時だったのでしょう。逆に、私たちのほうが統治者としての能力のなさから、退陣を迫られて、私たちは住民の要望に応えて退陣すると、宣言しなければならなかったんですよ。」

てん「その気持ち、わからないでもないですよ。わたくしも、住民たちからそのような言葉が出れば、自身の無力さから、退陣せざるを得ないでしょう。」

杉三「つまり、この地域は今、目時に取られてしまったと?」

あおい「ええ、そういうことですね。事実上、私が統治者ということになっていますが、実質的に、ここを統治しているのは目時です。」

杉三「よし、ここの仕組みはわかったよ。じゃあ、君が天井守りになった理由をおしえてくれ!」

あおい「ええ、妹も、少しばかりおかしいなと思われる箇所があったのは事実です。本人もそれはよく知っていて、私たちにも妹は統治者としてはふさわしくないと思われたので、彼女を学生とし、哲学を学ばせたりしました。しかし、その会合で、目時の利用者と恋仲になったようで、、、。彼女は、その人物に自分は不要品としてもう必要ないのだと打ち明けていたようです。半年以上前ですが、彼女は買い物に行ったきり行方が分からなくなり、私は、彼女が通っていた会合に乗り込んで、その人物を特定し、彼に、妹を連れ戻して来いと命を出したのですが、彼の連れ出した場所は、ごみ焼き場で、妹は、すでにごみとして出され、遺体すら、、、帰っては来ませんでした。」

杉三「お、おそろしい、殺害だ!」

あおい「ええ。私は、目時を直ちに摘発するように命じましたけれども、命を出した翌日、女中の一人が持ってきた茶を飲んでからは、急に胸が苦しくなり、それ以降わからなくなってしまって、、、。何とか、持ち直すことはできたけど、立って数歩歩いても苦しくなり、このような生活になりましたね。これが、理由ですよ。天井守りの。」

ひろし「附子ですかね。」

杉三「なんだいそれ。」

慶紀「ああ、鳥兜ですね。鳥兜の根を乾かして粉にしたもので、薬品として使いますが、大量に使うと、死亡する例もある。」

杉三「鳥兜、、、。あ、あの毒草!」

ひろし「附子を混ぜた液体を飲んでしまうと、そうなるんですよ。一見すると、心臓と区別がつかないから、殺人とはわからなくなるんです。僕も、自殺をしようとしたときに、いろんな種類の毒草を調べてしまって。」

杉三「鳥兜事件もあったよ。そういえば。それにしても、目時というところは本当に恐ろしい組織だな!」

あおい「ええ、しかし、ほとんどの住民は知らないでしょうね。それに目時には世論という武器もある。もし、附子を出したのが目時の仕業であれば、この地域を乗っ取るつもりだったかもしれません。そうなれば、私たちの統治も消え、目時帝国に変貌してしまう可能性もありますね。」

てん「お話はわかりました。どうか、わたくしたちが、目時を壊滅させるためにも、手をかしていただけないでしょうか、、、。」

あおい「いいえ、この体ではかえって足手まといになるだけです。私たちは手を引くべきでしょう。私たちでは、あの組織に抵抗はもはやできないでしょう。誰のせいと特定の人に責任を押し付けることはできませんし、私たちは、目時が標的にしやすい条件を作ってしまったと言わざるを得ません。こうなれば、私たちが住民を動かすことはもはや不可能なのです。」

秀子「あおいさんのそういうところ、すごい男らしい。松野の男性には、絶対ありえない言動だわ。私、かっこいいと思う。」

淑子が秀子の袖を引っ張った。

あおい「皆さんには、妹や、他の使用人が使っていた部屋を使ってくれて結構ですよ。どうか、皆さんの村が、目時帝国に代わってしまわないよう、お祈りしていますので、、、。」

てん「ええ、わかりました。必ず止めて見せます。」

と、きっぱりと言った。

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