第八章

第八章

雪は止むどころかさらに強くなってくる。

かぴばら「は、はい。あれですよ。ぼ、僕が通っていたころの記憶に間違いなければ、あの建物です。」

杉三「よし、入ろうぜ。それにしても寒いなあ。」

てん「でも、どうやって入ったらいいでしょう。」

杉三「新入会したいと言えばいいんじゃないの?」

てん「昨日のこともありましたし、、、。」

またせき込んでしまう。

杉三「気にしてるの?あの新造さんたちのこと。」

てん「ええ。」

杉三「確かに、身分がばれたら、少々憚られるよね。」

かぴばら「ぼ、僕の友達と言えば通じるんじゃないですかね。」

杉三「じゃあ、その手で行こう。称号は、よくとも悪くとも不利になる。」

かぴばら「ぼ、僕が話してきますから、皆さんはここで待っていてください。」

杉三「任したぜ、安禄山。」

かぴばら「は、はい!わ、わかりました!」

かぴばらは荷車を降りて、建物の玄関前に立ち、玄関の戸を叩く。

かぴばら「ご、ごめんください!」

声「はい、何でしょう。」

女性の声がして戸が開く。てんたちの発音とは少し違っている。

かぴばら「す、すみません。ほ、ほんの少しだけお世話になったことのある、吃音のかぴばらです!」

戸の向こう側には女性が二人いる。二人とも、かぴばらよりも身長は高く、身に着けているものも着物ではなく洋装であるので、松野とわかる。

女性「かぴばらさん?」

かぴばら「は、はい。ぼ、僕のことは吃音のかぴばらと言ってくれれば、たぶん、理事長には通じると思います。」

女性「今日はおひとりで見えたんですか?」

かぴばら「ち、違います。ふ、二人の友達と一緒です!」

女性「二人の?」

かぴばら「は、はい。に、荷車に乗っている、この二人。」

杉三もてんも軽く頭を下げる。

女性たちは、杉三たちをしげしげと眺め、

女性「今日は何の用で来たのかしら?」

かぴばら「は、はい。み、皆さんの下でお手伝いできればと。ぼ、僕らは脱藩してきたんです。」

女性「でも、こんな高台、歩いてくるほうが楽だと思うけど?なんでわざわざリャマを連れてきたの?」

かぴばら「は、はい。ふ、二人とも歩けないので、、、。」

女性「歩けないのに、よく脱藩しようと思いましたね。」

女性「歩けないのなら、必ずどこかで捕まるはずじゃなかったかしらね?ここまで来るのに、変な人だと思われて、お役人に引き渡されるのがおちだわ。」

女性「あたしたちがここに来た時は、いかにも正常人と思わせるために、いろいろ演技しなければならなかったわよね。」

かぴばら「そ、そうですけど、事情があって、来たんです!ぼ、僕らも手伝わせてくださいませ!」

女性「ちょっと上の者に聞いてきます。」

女性の一人が部屋の中に戻っていき、もう一人の女性は、玄関先に残る。

女性「でも、綺麗な着物ね。その小さな花柄。どこで買ってきたの?」

かぴばら「あ、ああ。こ、これですか。こ、これはですね、も、もらったんです。」

女性「へえ、誰から?」

かぴばら「は、はい。そ、そこにいる、友人から、、、。」

女性は、てんと杉三のほうを見る。

女性「ずいぶん変わってるわね。男性さんとしては珍しい。一人の方はくもの巣とわかるけど、もう一人の方のは、金魚みたいな着物。」

杉三「くもの巣じゃないよ。これは、麻の葉という、縁起のいい柄なんだ。それに、金魚ではなく、青海波というんだ。海の波をイメージしているんだよ。」

女性「そうですか?どう見ても、金魚のうろこしか見えないけど、、、。」

てん「まあ確かに、今の方には、金魚に見えてしまうかもしれないですね。この柄が、どのような意味があるかもほとんど知らないでしょうね。」

再び、せき込んでしまう。

と、そこへ、先ほどの女性が血相を変えて飛び込んできた。そして、てんと杉三の前に裸足のまま飛び出して、その場へ手をついて座り、

女性「も、申し訳ありません!本当に不謹慎な発言をしてしまい、どうかお許しくださいませ!」

杉三「あーあ、またばれちゃったか。」

女性「どうしたの?淑子ちゃん。」

女性「ついに取り潰しがきたのよ!そこへぼったってないで、秀子ちゃんも手を着きない!もしかしたら、あなた、お二人に失礼な発言でもしたんじゃないでしょうね!あの、彼女、秀子が、もし気に障るような発言したら、私が代わりに謝ります!彼女は、少しばかり頭の足りないところがあるから、失礼とも思われる発言を平気でしてしまうんです!」

杉三「発達障害か?まあ、僕も似たような名前を持ったことがあったけど、頭が足りないと自覚したことはないな。」

秀子「淑子ちゃん、どういうこと?ただ、この人が、金魚みたいな着物を着ていて、そのことを言っただけよ。」

淑子「金魚だなんて、そんな失礼なこと言っちゃダメ!そんなこと言ったら、無礼者として、捕縛されるかもしれないわよ!この方は、捕縛するお役人よりもさらに上の、お役人さんたちを動かしていらっしゃる方で、お役人さんたちも、手を着かなければいけないのよ!」

秀子「捕縛、、、。そ、そうなの?わああ、ごめんなさい!」

彼女も裸足のまま外へ飛び出し、手を着いて座る。

淑子「ほ、本当にすみませんでした!無礼をしてしまって!」

秀子「あたしたちのことは、磔にしても、斬首にしてもなんでもかまわないですから!」

てんは、みたびせき込んで口を手拭いで拭く。手ぬぐいには赤い血が付いている。

てん「いえ、捕縛はいたしませんし、取り潰しでもございません。」

杉三「てんは無理してしゃべるなよ。とにかくね、僕らを中に入れて!さもないと、凍え死んじゃう!」

淑子「わかりました!あたしたちで背負っていきますから!」

杉三「頼む!すぐにおろしてくれ!」

秀子「は、はい!」

てんは淑子に、杉三は秀子に、それぞれ背負ってもらいながら、建物に入らせてもらうことができた。

かぴばら「あ、あの、理事長、いますか?」

淑子「ええ、奥の間におります。」

かぴばら「わ、わかりました。ぼ、僕が話をつけてきますから、とにかく、布団でも貸していただけないでしょうか。ご、ご挨拶したいところですか、このような、状態では、難しいと思いますので。」

秀子「言われなくてもそうしますから。とにかく、あたしたちが無礼をしてしまったことは、本当にごめんなさい。」

かぴばら「そ、そればっかり拘泥しなくてもいいですよ。」

淑子「じゃあ、理事長の隣の部屋に。」

秀子「わかったわ。あたしたちが、橘のお偉い方を背負うなんて、前代未聞のことだから、」

淑子「また余分なことを言う!」

秀子「ごめんなさい。」

杉三「秀子さんの、お姉さんみたいだね。」

淑子「いいえ、本当に兄弟というわけではないのですが、ここにきて、なぜかそうなってしまいました。ちょっと狭いかもしれませんけど、お部屋へどうぞ。」

と、ふすまを開ける。八畳くらいの畳の部屋。

杉三「なんだ、何も狭くなんかないよ。じゃあ、もうおろしてくれ。」

秀子が杉三を畳の上におろし、押し入れを開けて、布団を出す。秀子たちを対象にして作ってあるらしく、てんが使うとなると、大きすぎるくらいのものである。

杉三「まるで、二人用を一人で使っているみたいだな。」

てん「ええ。わたくしたちは、橘の者ですから、狭いとは全く感じませんね。」

淑子「どうぞ、横になってくださいませ。」

と、てんを布団の上にそっとおろしてやる。てんは同時に軽くせき込んで、口元が血で汚れる。

淑子「私、皆さんにお茶もって来ます。秀子ちゃんは、顔を拭いて差し上げて。」

杉三「いらないよ、そんなもの。」

てん「そのくらいできますので。」

言いながらもせき込んでしまう。

秀子「いいえ、あたしやります!何かお詫びをしなきゃいけないと思いますので。」

淑子「じゃあ、よろしくね。あたし、お茶もって来るから!」

かぴばら「ぼ、僕は、お茶を飲む前に、理事長にお会いして、事情をはなしてきたいのですが、ダメでしょうか?」

淑子「わかりました。私がご案内いたします。こちらにいらしてください。」

かぴばら「は、はい。お、お願いします。」

淑子「じゃあ、一緒に来てくれます?」

かぴばら「はい。」

淑子に連れだって、部屋を出ていくかぴばら。

秀子「ちょっと待っててくださいね。」

と、近くにあった引き出しから手拭いを取り出すが、その間にも、てんはせき込み、口に当てた手が、赤く染まってしまうほどである。

杉三「困ったな。てんも水穂さんみたいになっちゃったか。」

手で這って、てんの後ろへ回り、彼の背を叩いて出すべきものを出しやすくしてやる。

杉三「ほんとに、君という人は!」

てん「いいえ、わたくしは、この程度の事ではひるみませんよ。」

秀子「あたし、お顔を拭いて差し上げます。」

てん「ありがとう。」

秀子は、そっと、口元を拭いてやり、血で汚れた手も丁寧に拭いた。

秀子「本当は、こんなことを言っていいのか悪いのか、わからないですけど、あたし、頭の中にとどめておくことがどうしてもできないので、口に出させていただきたいのですが、松野のあたしが、こんなことをして、本当によろしいものでしょうか。あたし、初めてお会いした時は、てん様とはわからなかったから、あんな変な発言してしまったんですけど、本当は、いつここも取り潰しになるか、不安でたまらなかったんです。ここがあって、あたしは本当に救われたようなものでしたけど、、、。でも、まさかてん様がここにきて、あたしが介抱してあげるとは、正直に言えば、驚いていて、信じられないです。」

てん「あなたは、松野の方ですよね。正直、松野がこのような組織に参加しているのは、わたくしも信じられないですよ。」

そう言って、布団に座りなおそうとするが、

杉三「てん、それはよせ!」

てん「でも、座らなければ、目を合わせられないので、」

杉三「そんなことにこだわってる場合じゃないよ。今は、横になってるべきじゃないのか。」

てん「ごめんなさい。わたくしも、ご覧の通り、体が思わしくないので、横になったまま、お話を聞くという、なんとも無礼な態度を取っていますが、お許しくださいね。」

秀子「いいえ、大丈夫です!あたしたちのほうが、お詫びしなければいけない事はいっぱいあります。だって、てん様にとって、あたしたちは、憎むべき相手でしょう。だって、先代のぬるはち様も、てん様のお父様であるまつぞう様も、あたしが殺したも同然なんですから!それに、こうして、直にお顔を拝見することも、一生できるはずはないと思ってましたし。もし、お会いできたら、あたしは何回でも謝りたいと、心から思っていましたから!」

てん「いいえ、父も先代も、爆撃で亡くなったのであって、あなたが直接手をかけたというわけではないのですから。しかし、父が亡くなったのは、わたくしが元服する直前の事であって、もう、18年も経っております。その当時、あなたは、お顔から判断すると、まだ生まれていなかったのではないですか?それなのになぜ、あなたは、昨日の事のように謝るのですか?」

秀子「ええ、私は、学校で習いました。先生が、橘を爆撃したと自慢そうに話していました。」

てん「ああ、確かに、松野は早くから義務教育がありましたからね。そういう歴史的なことも、すぐに習わせるでしょうね。」

秀子「それに、私は違和感があったのです。私も、生まれてすぐに父を亡くしてしまって、母が女手で育ててくれましたが、私は、父がいないことで、さんざん馬鹿にされて、それで松野の世界にいるのが嫌で仕方なかったんです。それに、松野といいますのは、歴史的に言えば、王朝がころころ変わる種族でしょ。それなのに、橘の皆さんは、初代から、十代までずっと同じ家が続いたわけですから、私、すごいと思いましたよ。それに、鉄や文字と言った便利な道具には頼らないで、十代も続いてきたことにすごく憧れがありました。お父様の、まつぞう様が、橘の皆さんに、慕われているのが、いろんな書物に書いてあったけど、本当にすごい君主だな、あたしたちにも、こういう君主がいてくれたらいいのになあと、何度も思いましたよ。だって、松野の政治家なんて、国民に慕われる人なんて、はっきり言って一人もいませんもの!寧々様だって、確かに奇麗だし、着飾っていたかもしれないけど、そのために何が必要だったか、それは誰が出していたのかなんて、ほとんど知らなかったでしょう!でも、そういう事を言うと、松野のみんなは妄想と言って、私を顛狂院に送ってしまおうとするんですよね。私、二年ほど、顛狂院に閉じ込められたことがあるけれど、そこにいた人たちのほうが、真剣に世の中を考えているんじゃないかしら!」

杉三「へえ!この世界も、顛狂院ってあったんだねえ!日本にはよくあるけど、ここにはないと思ってたよ。」

てん「松野のいう顛狂院は、普通政治犯を閉じ込めておくところだと聞いたことはありましたが、まさか一般の方まで閉じ込めるとは、思いませんでした。でも、顛狂院というところは、財力がないと入れないとも聞きましたが、どうなんです?」

秀子「いいえ、私が生まれたころは、誰でも入れるようになってしまっていました。理由は、それだけ、発狂した者が増えてしまって、家族の中に置いておくことが難しくなったからです。顛狂院の中には、収容者を殺害しても平気な顔をしているところだって、あるんですよ。私も、二年間顛狂院に収容されて、恐ろしいところだと思いました。でも、私は、戻ってきても、家族には疎ましがられるばかりで、数か月後にまた顛狂院に送られそうになったので、」

杉三「なるほど。それでここへ逃げ込んできたわけね。確かに、顛狂院に入ったら、余計におかしくなるよ。どんなに馬鹿でも、外で暮らすのが、一番だからね。」

てん「恐ろしいと自覚できれば、あなたはまだ異常ではありません。完全にその環境のほうが良いと解釈してしまうほうが危ないのです。」

杉三「うん。確かに。しかし、松野にも、順応できなかった人がいたとはびっくりだ。」

秀子「ええ。でも、橘の頂点に立っているてん様に、こんな話をしても、私たちは、長年の大敵であったわけですから、信じてもらえるどころか、無礼をしたことによって、磔にでもなるのでしょうね。もし、てん様が、そう命を出すのであれば、あたしは喜んでそうなりますよ。だって、あたしが、橘の皆さんに憧れる気持ちも、まつぞう様に憧れる気持ちも、嘘はないですから!」

てん「正直に告白してくれてありがとう。わたくしは、磔にかけろと命を出すことはしませんよ。そこは安心してくださいね。それより、わたくしたちは、あなたのような適応できなかった人物を何とかしてやれなかったわけですから、それでは重大な職務怠業になるでしょう。なぜなら、わたくしたちは、すべての住民が、幸福を感じられるように働きかけることが、本来の職務であり、戦争を仕掛けることではないのですから。」

杉三「それはそうなんだけど、僕はてんがむりをしすぎないようにしてほしい。とりあえず、今日は一日、横になったほうがいいよ。」

ふすまが開いて、淑子がお盆を持って入ってくる。

淑子「お茶が入りました。」

杉三「お、ありがとう。」

淑子「秀子ちゃん、また余分なことを言ってないでしょうね。」

秀子「やっぱりまずかったかしら。」

てん「いえ、むしろ貴重なご意見で参考になりました。わたくしも、今までの職務怠業を指摘していただいたようなものです。」

秀子「職務怠業なんて、あたしたちはもともと、敵同士だったんですし、あたしが勝手に憧れていただけですから。」

淑子「もう!また身の程知らずな話をしたのね。あなたって人は、平民の身分に生まれてくるべきではなかったんじゃないかしら。だから、顛狂院に行くことになっちゃうのよ。平民の人は、政治なんかの話に興味を持つ人なんてほとんどないわよ。自分の事で精いっぱいで!」

秀子「そうか。だったら、知らぬが仏とでもいうのかしら。あたし、学校で真剣に勉強したいと思っていただけだったのに。」

杉三「なるほど。興味を持つ視点が違うんだね。」

淑子「そうなんです。この人、そういうところがあって。ほかの人が興味を持たない変なところへ興味をもって、それを周りの人と共有したがるので、私たちは、本当に困り果てているところなんです。何とかして矯正させようとしましたが、何をやっても治らないから、結局顛狂院に送るという方法しか、彼女の家族は思いつかなかったんです。」

杉三「家族は、お母さんだけ?」

秀子「ええ。先ほども言いましたが、父はあたしが生まれてすぐに亡くなったので、母だけです。あたしが、学校へ行くために、母は、工事現場で働いてました。」

杉三「なるほど。よかった、遊郭へ身を売ったわけではなくてさ。」

秀子「学校では、さんざん馬鹿にされたことも確かですが、歴史の勉強とか、言葉の勉強とかできるから、楽しいところでもあったんですよ。あたしたちが、どうやって成立してきて、どうやって今生かされているのかを知るのは、とても面白かったんです。だから、そうやって獲得したことを、他の人と話して何が悪いのだと思っていたんですけど、、、。でも、母をはじめとしてみんな、うるさいとか、今忙しいからと言って、誰も聞いてはくれませんでした、、、。」

杉三「うん、その気持ちわかる。日本でもそういう子は気になる子として、顛狂院にいってしまう。そして、真剣に生きていない子が勝利する。」

秀子「だから、橘の皆さんには、そういうところがないから、あたしはあこがれだったんですよ!」

と、涙を流してしまう秀子。

てん「そうですね。橘が憧れているような種族でなくなりつつあるのに、責任を感じてしまいますが、、、。」

淑子「ほら、また変なことを言う!」

秀子「だって、素顔同盟なんだから、何でも口に出していいと、理事長が言ってたわ。」

淑子「でも、言っていいことと悪いことがあるのよ。それくらい、区別ができるようにならないと。」

杉三「やっぱり、発達障害かなあ。」

てん「質問をかえましょう。この建物には、どのような人が居住しているのでしょう。」

秀子「ああ、松野であるあたしと、淑子ちゃんと、サンの方である、とも子ちゃん、とし子ちゃん、そして、橘のひろし君とが今の会員です。」

杉三「へえ、女性ばかりじゃないんだね。それに、橘もいるんだね。あ、理事長もそうなの?橘なの?」

秀子「それが、理事長は教えてくれないんです。」

杉三「少なくとも、五尺を越しているの?」

秀子「あ、どうかな。四尺と、七、八寸、、、。」

淑子「ほら、すぐに何でもしゃべっちゃだめよ。理事長が、自分のことは一切他言するなって、言ってたでしょ。」

杉三「へえ、僕も挨拶してみたいなあ。」

淑子「かぴばらさんと、話が就いたらにしてくれと。」

杉三「そうなの?そういえば、馬鹿に話が時間かかってるよね。大丈夫かなあ。」

淑子「吃音の方は、誰でもそうですよ。少し大目に見てあげてください。」

杉三「あ、そうか。僕たちみたいにきちんと話せるわけじゃないもんね。まあいい。せっかくお茶を持ってきてくれたから、お茶をいただきますか。」

と、置かれた湯呑を取ってお茶を飲む。

秀子「てん様も飲みますか?」

てん「いいえ、しばらくはこのままで、、、。」

杉三「そうか。あの歓楽街といい、雪道走ったときと言い、かなり体力使ったと思うから、ゆっくり休めや!」

てん「ええ、そうさせてください。」

秀子「まだ、雪、降ってますね。」

淑子「今日は一日こんな感じですよ。」

確かに、ふぶいてはいないものの、雪は積もっていくばかりであった。


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