僕は検証してみた

アライさんの夢を見ていると、どうしてももう少しレベルの高い夢を見たくなる。そうすると、単なるイマジネーションだけでは気持ちが飽き足らなくなる。


アニメの世界で見せたアライさんのセリフ、行動、それらが一連の流れとなって、「アライさん」らしさを形成していく。でも、それは、かばんちゃんとサーバルの冒険談にまつわる、部分でしかない。


いったい、アライさんは、「危機的なもの」が何もない状況や、「帽子泥棒を捕まえる」という目的がないとき、パークでどんな生き方をしてきたのだろう。


フェネックと、散策をしていたのだろうか。フェネック以外のフレンズとも何らかのやりとりをしていたのだろうか。

そもそも、フレンズは家族を持つわけではなさそうだ。図書館や、ロッヂの様子などを見ると、「なわばり」の範囲で生きている、つまり、「居場所」を持っているらしいってことはわかる。


けど、アライさんからは、「なわばり」の匂いがしない。


おそらく、旧アプリ版のストーリーに、ヒントがあったのだろうが、僕の頭の中には、その知識体系がインプットされていないのだ。


フレンズが「けものの習性」を持つとしたら、野生のアライグマの生態がヒントになる。


でも、その瞬間、アライさんが僕のとなりで笑ってくれるリアルな姿は、かき消されてしまう。


やはり、何らかの「同化」によって、アライさんらしさを身につけた、現実の女の子がこの世に現れる。というのが、ごくごく僅かだけれでも、現実味を帯びるのだろう。


スカーレットの制服の学校。高校でも短大でもなんでもいい。

ショートカットで、髪はシルバーを基調としているけど、顔の周辺を黒~グレイで染めている。耳は、けものの耳がアニメのように大きく出ているわけじゃなくて、普通の人間の耳だけど、やや顔に比して大きめで、目立つ。


そんな容姿であれば。


声と口調はあのまんまでいいだろう。


何らかの形で、アライさんの思考形態や、知識基盤が、その女の子のニューロンシステムに組み込まれ、本来の人間として形成された元となる思考、振る舞いなどと馴染む。


ジャパリパークの危機というストーリーも経験として組み込まれていてよい。


ただ、どうしても、普段のパークでの生活で、どのように生きてきたか、というデータが欠損していると、現実世界にそのアライさんが同化した女の子が、どう振る舞うのか、どんな考えをもって、もし僕の隣に来たとして、どういう事柄に興味をもって、どんな言葉を投げかけるのか。


想像が一気に終息する。


僕が願うままに振る舞わせればいい。

僕の日々の夢の中に、現実世界のアライさんを棲まわせて。

息遣いとともに、僕の幸せは満たされていく。


わけじゃない。


僕は、夢を検証する。

その夢がどんなに現実と乖離しようが。


僕は、アライさんに、ここに、いてほしいのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る