第2話転校生

朝目が覚める。

今日もいい朝だ・・・なんてことはなかった。


昨日唱とずっとあの新刊についての話をしていた。夜遅くまで話しすぎた。盛り上がるともっと話したくて止まらなくなる。


でも、さしぶりにストレス発散ができて良かった。


そんなことを思いながら重い体を起こしリビングに足を向ける。


リビングには母が用意した朝食が並べられている。私の胃はそれを早く流し込みたいと思いにかられ早く席に着きいただきますをする。


味噌汁をすすりご飯を口に運ぶ。美味しい。


朝食を食べたあと私は学校に行く用意をし髪を整える。


鏡に映る私に一言こういう。


「がんばれ、自分。」


私はいつもこんな風に気合い入れをしないとやっていけない。


それから唱が待っている外に向かう。


「美菜ー、おはよぉー」


目を擦りあくびをしながらこっちをみてそう言う。

唱はいつも朝はだらしない。


髪の毛には寝癖が付いているし。

ほんとなんでこれでモテるのか。


「寝癖ついてる」

私は唱の髪に触れる。

寝癖がついている割に髪がさらさらしている。

触っていて気持ちいい。

調子にのってずっと触っていたら眠たそうにする唱。

ほんとに犬か。


私は息を限界まで吸い込み。大声で。


「しょーーー!まだ学校もはじまってないんだぞ!!おきろーーー!」


唱はハッとして眠気を飛ばすかのように頭をぶんぶん降る。


朝はいつもこんな感じだ。



私たちは学校に向かう。


学校についたら唱とはクラスが違うので階段を上がってさよならをする。


私はこの時なんとも言えない気持に。

いつも一緒に居るのに…。


私は教室に向かい自分の席に座る。

窓の外をずっとみていた。何を考えるわけでもなくただひたすら見ていただけだ。


「みーちゃん!浮かない顔をしない!」


そう言ってきたのは私の唯一の女ともだちである愛(いと)だった。


愛は私が無口で喋らなくてみんなから距離を置かれていたって言うのにそれを気にせず向日葵のような笑顔で話しかけてくれたたたった1人の大事な友達だ。


私たちは性格もあまり似ていないけど、一緒にいて楽しいと思うのだからとても不思議だ。


「みーちゃん今日唱くんのクラスに転校生くるんだって!知ってた?」


唱そんなこと言ってたけ?

あ、唱は言わないか。


「全然知らなかった。唱もそんなこと言わないし。」


そう答えた。


キーンコーンカーンコーン


とHRを告げるチャイムがなる。


HRは先生の諸連絡だ。

いつも左耳から右耳へと聞き流している。


先生の諸連絡が終わり授業の用意をしようと思ったら廊下からすごい歓声みたいなのが聞こえる。

教室のみんなはそれにつられ廊下に人が群がる。私も少しだけ気になって廊下をみると……。


何故かは知らないけど。

唱が知らない女の子に抱きしめられている。


頭が回らない。

というかその女の子今すぐ唱から離れた方がいい!

いや、これは嫉妬でも何でもない。


そいつは毒舌馬鹿だ!

早く離れた方がいい!


唱も怒ってる。

ここはちょっと行かなきゃまずいかな。

あの可愛らしい女の子を救うために。


私は唱の所まで歩き唱を見たら、酷いこと言う5秒前。


やばいやばい!早くなんとかしないと!


あぁー!こうなったらみんなの前だけどやるしかない。


「唱、落ち着け」


私は朝やったみたいに頭を撫でる。

だいぶ落ち着いてきたのかさっきの怒った表情はなくなり穏やかな表情になっていた。


無表情ではないがこいつだったら大丈夫だろ。どんな唱でも女の子はきゃーきゃー言うはずだ。

今もまさに女子達がもだえている。


唱は眠そうだ。

でも、この女の子は離れようとしない。

このままくっつかれたら唱もやばいな。


「みーちゃん!」


そこに現れたのは愛だった。


そうだ愛にこの子を剥がしてもらえないかな。


「愛、この子なんとか出来る?」


そう聞くと愛は任せなさいと言わんばかりの笑みを浮かべその子を離そうと色んな手を使って離してくれた。


「唱様!」


えぇ?!唱様?!?!???

様付けされるほどこいつは賢くないぞ!


そう思ったのは心の中にしまっておきもう寝かけの唱を保健室まで連れていく。


こんなにもでかいのになんでこんなに軽いのか。身長と体重が比例してないぞ。本当にごはん食べてるのかも心配になる。


保健室に着き先生に唱を寝かせて貰えるか聞こうと思ったけど何故かいない。


私は半分寝ている唱をベットに寝かす。

本当に眠たかったんだな。

頭を撫でたからってここまで眠くなることはないから、やっぱり昨日語りすぎたな。


「唱、ごめん。昨日夜遅くまで付き合わせて」


寝ている唱の頭に触ってそう言う。


「いいよ、俺もはしゃぎ過ぎたし」


手を掴んで眠そうな声でそう言ってきた。

いや、起きてたんかい。

謝ったの普通に恥ずかしい。


それより、手を掴んできた唱の手は綺麗かったけど、同時に壊れてしまいそうだった。


腕も細いし。本当に食べてるのか。

唱は何も言わないからな。

私が言ってあげないと。


「唱あんたちゃんとご飯食べてるの?」


唱は人差し指で首を掻きながら"食べてるよ"と言った。

こいつ自分の癖に気づいてないな。


「嘘でしょ。ちゃんといいなさい。」


私はまっすぐ唱の目を見ながら言った。

それに負けたのか急に目をそらして口を開く。


「本当は両親が仕事で遠くに行っててちゃんとしたご飯は食べてない」


やっぱり本当に他人に迷惑をかけまいと必死なんだから。

唱は毒舌で馬鹿だけどそういうところはちゃんしてるからな。



「唱、私の家に来なさい。迷惑とか思わないでいいから。幼馴染なんだから、迷惑ぐらいかけなさい。」


とても嬉しそうに"ありがとう"と言ってきた。全くとそういうところはちょっと可愛いなとか思う。


なんか色々外れているけど、本当に1番聞きたいのはあの女の子だよ。


一体何者なんだろう?

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