私たちは…です!

朱蘭

第1話 幼馴染

私にはイケメンの幼馴染がいる・・・らしい。


いや、幼馴染はいるけど別にイケメンと思ったことはない。


女子達はいつも騒ぎまくっている。

多分あいつは何度も告られていると思う。


いつも無表情のあいつがモテるとは理解に苦しむ。


女子達曰く「クールでかっこいい!」らしい。


そう思っていると廊下が騒がしくなる。

いつも女子達の高い声が私の頭を痛くさせる。

なぜ廊下が騒がしくなったかと言うと。


「美菜ー帰ろー」

無表情で気だるそうに言ってくるのは私の幼馴染天野唱だ。


登下校はいつも一緒に行っている。


いつもこっちのクラスにまで迎えに来るから女子達は騒がしくなる。

いい加減慣れろ!って思うのは私だけか?


「ここはいつもうるさいねー

早く消えてくれればいいのにー」


いつものトーンでその言葉を放つ唱。


女子達これがこいつだ。

付き合うならおすすめはしない。


今考えたら私はこんなやつと16年間も一緒にいるんだな。


誰か私を褒めてくれ。


でも、こいつのことをボロカス言うけど。

私たちには共有の秘密がある。


「あ、そうだ美菜」

そう言ってカバンの中を探り始めた。

私に何かを見せたいようだ。


まぁ私はそれなりに分かっている。

何を見せるかなんてと私の間ではあれしかないのだから。


「新刊買った!一緒にみる?」

笑顔でそれを見せてくる。


「見るにきまってる!何私より先に買ってんのよ!ズルすぎる!」


そうさっきまで笑顔を見せなかった唱が笑い。

さっきまで無口だった私がこんなに喋っている。


そして、さっきから"新刊"となんなのか。


気になった人もいると思う。



「やっぱりこの子は攻めだね、俺の言った通り。」

自慢するように言ってくる。

ムカつく。


「次のページでは受けだし!」

そう対抗心を燃やしながらそう言う。


私たちは顔を見合わせながら。


『どっちもいい!』


この会話を聞いて分かるだろうか。


そう私たちは

腐女子/腐男子である。



学校では無表情の唱は本当は腐男子で。


学校では無口の私が本当は腐女子で。


それがバレないように私たちはキャラを作っている。


「やっぱり美菜と話してる時が1番たのしーよー!」


二カーっと笑う。顔がぐしゃってなるぐらい。

こいつは本当は素直なのに、学校での無表情は疲れないのか少し心配にもなる。


「私もたのしー!」


そう言ってやったら唱は本当に嬉しそうだ。

小学生みたいにスキップをしている。


やっている本人は気づいてないけど、見ているこっちからしたら16歳の長身の男子高校生が何やってるんだとツッコミたくなる。


私はこの日々が大好きだ。


学校では無口でクールで通っている。

それは唱も同じだ。


ここまでキャラを作るっているからストレスも溜まってしまう。だからこのようにして私たちはストレス発散をしているのだ。


「美菜ー早く帰って続きよもー」


うきうきしながら言ってきた。

まぁそれもそうだな!

早く続き見たいし!


「うん!」










こんな日が続いて行くと思った。




続いて欲しかった。





でも、ある日を境にそれは無くなることになる。



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