【IF YOU SAY"LOVE IS FOREVER" I KNOW I'LL NEVER LET YOU GO】

後から考えると、意外なことだけどこの街が、彩の見ている夢の中の世界だと知っても、そう驚きはしなかった。まあ、ショック受けていても仕様がないしさ。だって、今までもこれからも、僕達がこの街で生活している以上、この街は僕達にとって現実以外の何物でもない。

いつもの配達帰り、自転車で坂を上っていると、パン屋の軒先、彩が手を振っている。

「すみません、おばさん。また彩が商売の邪魔しちゃって」

「まぁ頼哉ちゃんったら、すっかりお兄さん気取りだね」

膨れっ面の彩と、僕の顔を交互に見比べ、おばさん、噴き出している。

「あたしも、毎朝彩ちゃんが遊びに来てくれるのが楽しみなのよ」

おばさんはそう言って、店のシャッターを上げた。店内一杯に朝の光が差し込む。

「彩ちゃんのおかげで今日もこの街は輝いてるんだね」

おばさんの一言に、彩はうれしそうにうなずいた。

・・・彩、幸せになろうね。この街の住人としてきみは今、幸せをその手で作り出す権利を手にした。僕の魔法の力を超え、朝日の中、そうして輝く笑顔が証拠。

そんな思いを込めて、僕は言った。

「おはよう、彩」

彩は、恥ずかしそうにほほ笑んで、顔を上げた。

「おはよう、頼哉さん」

《fin》


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AYA~色彩都市より、愛を込めて~ 琥珀 燦(こはく あき) @kohaku3753

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