第17話 おつかいのはじめて

 母からナツのおつかい先を聞いた後、俺はアリスにスーパーへメモを渡すように頼んだのだが。


「あの、ナツさんどこにもいませんでした……」


 そんな言葉と共にアリスは帰ってきてしまった。

 スーパーにおつかいへ行ったはずなのに、どこにもいない。

 すれ違ったのではとも考えたが、アリスいわくスーパーに向かう道中にもナツの姿はなかったらしい。


 そこから、俺が導き出した答えは……!

 はじめておつかいに出したこどもが、遭遇しうるトラブル『迷子』だった。




「いたか?」

「いえ、スーパーの周辺をずっと探していたのですが、どこにも見当たりませんでした」


 空からアリスに探してもらったが不発に終わる。

 俺自身もなんども家の周りを探していたのだが、家の周辺にもナツはいなかった。


「となると、そもそも方向を間違えた可能性があるな」

「方向を間違えたって……それじゃあ、どこを探せばいいのかわかりませんよぉ」

「……じゃあ、地道に聴き込んで探してみるか。美人で目立つ奴だし、買い物かごをさげてるって特徴もある! うまくいけば、すれ違った人に会えるかもしれない」


 しかし、俺の提案にアリスは「ええぇ」と困ったような声をあげた。


「ま、マスター! 確かに聞き込みしながら探すのは良いと思います。でもそれ、私にはきついですよぉ」

「と、そりゃそうか……」


 事情を知っている母さんならともかく、何も知らない人の前にアリスを見せびらかすのは良くないか……。


「しかたないな。アリス、お前は母さんと一緒に家で待っていてくれ。もしかしたら、戻ってくるかもしれないし」

「じゃあ、マスターはっ?」

「俺は、ひとまずスーパーと反対方向を探してくる! もう夕方だし、こっちには駅があるからナツを見た人がいるかもしれん!」

「わかりました! お気をつけて!」


 細い手を振り、声を張るアリスに送り出されながら、俺は駅へと続く道をひたすらに走った。


 

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