新生活はじめてます編

第15話 Re:Start❕❕

「それじゃあ、行ってきます」


 俺の嫁になっていたかもしれない美少女は今、母にナツという名前を与えられ。


「ナツちゃん、ホントに大丈夫? 一人で行ける?」

「大丈夫ですよ、お義母さん!」


 ……一人でおつかいに出かけようとしていた。

 一応、玄関まで見送りに来たのだが。


「あっ」

「ん?」


 彼女は俺に、どこで覚えたのかあっかんべーをしてから玄関を開け、おつかいへと出かけて行った。


「……なんなんだよ」


 そんなナツの行動を見て、母はおもしろそうに笑う。


「そんなに笑うことか?」

「だって、可愛いもんじゃない? あの子、口ではあんたのこと嫌ってるけどさ」

「……ホントは好きなんじゃって?」

「うぬぼれないの。嫌い方がこどもっぽくて微笑ましいって言いたいのよ、私は」


 ……ナツと妖精のアリス、そして生き返った俺がこの家にきて直に一週間。

 母の中では、もう俺はナツに嫌われているという方向で固まったようだ。

 はじめは俺に嫁ができたと喜んでいたのに、今では実の息子よりも実の娘のようにナツをかわいがってる気がする。

 もう、母の中でナツは『息子の嫁』というよりも『自分の娘』という認識が強いのかもしれない。


 思わず、ため息がこぼれてしまう。


「はぁ……」


 と、精神的な疲れを口から吐き出した時、ちいさな紙切れが玄関に落ちているのを見つけた。


「なんだこれ?」


 拾ってみると、どうやらナツが書いたメモのようだった。

 自信はないが……おそらくひらがなで『だいこん』『にんじん』『はむ』『こしよう』と書いてある気がする……。


 こういうメモをみると改めて思い知る。

 まだ、彼女はうまれたばかりの心で生活しているのだと。


「こんな幼いメモ見せられたら、嫌われてもなかなか怒る気になんねぇな」


 うん、もし今彼女に俺が怒ったとしたら、それは大人げないってもんだ……。

 と、ナツの俺に対する態度に大人の余裕を見せてやろうと決めた時。

 俺を、何か違和感が襲った。


「…………あっ!」


 あいつ! これおつかいのメモじゃねぇか!

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