第14話 名前なんて慣れです、雰囲気です

 彼女達の言い分はこうだった。


 自分達は(不本意だけど)あんたの嫁になるために生まれてきたので、そもぞも自分自身という蓄積がゼロなのだと。


 つまり、身体はアダルト心はロリティックなのだ。


「でも、名前がないと不便でしょ?」


 おっとりした声で困ったわねぇという母の顔はどこか楽しげである。


「そりゃ、不便というか……って、お――お義母さん? なにニヤニヤしてるんですか?」

「ねぇ、二人の名前、私がつけてもいいかしら?」

「へ? そりゃ……」


 ツンデレ美少女は一瞬、迷うような間を置いたが。

 ジロリっと俺を睨んだ後、喜々として「ぜひ! お義母さんにつけてもらいたいです!」!と答えた。


 よほど、俺につけられるかもしれないという選択肢を消したかったらしい。


 「やったー」と黄色い声をあげて喜ぶ母をよそに、俺は妖精さんの方に声をかけた。


「君は、どうだ? うちの母さんにつけてもらってもいいか?」


 すると、妖精は気恥ずかしそうに顔を逸らし。


「あの……ご迷惑でなければ、私はマスターにつけていただきたいのですが」


 彼女は、聞き逃してしまいそうな声で告げる。

 俺としては、このままこの子の名前も母に任せてしまおうと考えていたのだが。


「……そんな顔で言われちゃ、断れないな」


 母のつまらなそうな「えー」という声を聴き流しつつ、何かいい名前を考えようと決めた。

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