第12話 せつなさは飴玉に似ている

 自分の遺影が飾られている仏壇というのは見ていておかしな気分になった。

 だが。


「お母さま! これ、すっごく美味しいです!」


 一粒の枝豆をおにぎりのように持ち、満足そうに頬を膨らませる妖精や。


「助かります。あいつ……じゃない、ユキヒト? はこっちに戻って来た時お金も何ももってなかったので」


 ようやくの食事にありつけ気持ちが解れたのか、どこか表情がやわらかくなったツンデレ美少女のおかげで――いや、もっとおかしな状況にあるおかげで、嫌な現実ばかりに目を向けなくて済んだ。

 それは、案外母も同じなのかもしれない。


「いいのよ。大したお構いもできないけど。遠慮しないでね!」


 あの後、泣き崩れてしまった母だったが、俺達が何も食べていないことを知るとせっせと食事の用意をしてくれた。

 死んだはずの息子が返って来た。

 普通なら、それだけで頭がこんがらがりそうなものだが……その息子が美少女と妖精をつれて歩くというファンタジックな状況に、どこかこれを現実だと思っていないのかもしれない。



 実際――。



「……あれ? あれ、夢じゃなかったんだ」


 翌朝、寝室で寝ている俺を見て、母はそんなことを呟いた。

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