第6話 自由度が高すぎてダメみたいなアレ
「つっかえない! ホントにホントにつっかえない!」
「いだっ! 痛っ! わかった! 悪かったから叩くのやめてくれ!」
涙目になりながら美少女は俺を両腕でぽかぽかと殴る。
「だって! 許せないじゃない! あんたが無能力なせいであたし達までとばっちりを!」
妖精は取り乱す美少女の様子を見ながら、先に進めない状況を嘆いているようだった。
「あの……そろそろ話を先に進めてもいいですか?」
「なによ! しれっとしちゃって! あんただって能力なしの役立たずなのよ! こいつの! 運のなさという! とばっちりで!」
ぐるんぐるんと俺の首根っこを掴んで嘆く美少女。
俺はなす術もなく彼女のなすがままになっていたのだが……。
「ぐすん……あたしのプライドが……もうずったずただわ」
彼女は10分もしない内にだらりとうなだれ、離れた場所で横たわってた。
「話、進めとくぞー?」
一応ことわってみたのだが。
「……もう、おかまいなく」
そんな細い声を捻り出した後、彼女は黙り込んでしまう。
「とりあえず、進めよっか」
「そうですね」
とはいえ、次の職業ガチャ。
これの結果はもういいのか悪いのかがさっぱりわからなかった。
「……自由選択って、なんだと思う?」
「……何にでもなれる可能性、ってことですかね?」
妖精の声から出た前向きな言葉に思わず「おぉ」と声が漏れた。
しかし。
「何が可能性よ……ようはただの無職じゃない」
美少女の心無い言葉に前向きになった気持ちはなえてしまう。
「なぁ、そんな離れたとこから刺すくらいならこっちに来て参加しろよ」
「……いいの、ここでいいの。おかまいなく」
向けられた美少女の丸くなった背中を見つめ……「はぁ」と溜息をこぼしてから俺は妖精に向き直った。
すると。
「あ! でも、待ってください!」
妖精は明るい声色で手に持つ紙の一部を指差す。
「やっぱり職業の自由選択ってレア枠かもしれません。ほらここ! レアリティNのところに『無職』があります!」
「ホントかっ?」
俺は妖精が指さす先を見つめる。
そこには確かに『無職 N』と書かれた部分があった。
「つまり、自由選択は外れじゃなかったんだ!」
「むしろ、ここ日本じゃ結構あたりの部類かもしれませんね」
あごに指をあてて頷きながら口にした妖精に「どういうこと?」と尋ねる。
すると、彼女はSSRの一覧を指差しながら答えた。
「ほら、ここを見てください。SSRの職業の中に『勇者』とあります! 魔王も魔物もいない現代日本でもしこの職業を引いていたらどうなっていたことか……」
わなわなと小さな肩を震わせる妖精と見つめ合い……俺は、職業選択の自由のすばらしさを思い知った。
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