この物語には、本編に当たる「シュガードロップ・ブレイクアウト」というノベルゲームがあります。ずいぶん以前にそちらをプレイしていたのですが、「シュガードロップ・ブレイクアウト」の前日譚にあたるこちらの作品には、どうも食指が動きませんでした。
ですが今回、読了して思うのは、もし「シュガードロップ・ブレイクアウト」をご存じで、私と同じように今作に手が延びない方がいらしたら、その方にこそ、この物語をお勧めしたい!ということです。
登場人物が罪や責任を一人で抱え込もうとするスタイルは、あまり私の好みではありません。ですが今作の主人公リゼットは、利用され翻弄されているようでいて、むしろ潔く己の意思を通したように思えます。己の心を行為を己や他の言葉で決めつけるより、未来へ投げ上げているように感じられます。都合よく役割を果たすだけの存在とされたのだとしても、そこにはリゼットの矜持が見える気がしてなりません。
今作を呼んで、私はここに描かれている世界をより好きになれました。もし今作を読んだ後に「シュガードロップ・ブレイクアウト」をプレイしていたら、それぞれの登場人物を見る目がまた変わっていたかも知れません。逆に「シュガードロップ・ブレイクアウト」をプレイしていらっしゃらない方がいらしたら、今作とともに、是非本編にも目を通されることをお勧めします。