12 『因果応報』 3/19

お題『チョコ・バレンタイン・結果』


タイトル「因果応報」


1300文字・59分


○相谷高校・校門前

 校門のプレートに「相谷高校」の文字。


○同・教室・前

 教室のドアに取り付けられた表札に「1−3」の文字。


○同・同・中

 黒板には2/14の日付。

 相谷高校の制服を着た女子生徒、阿佐ヶ谷撫子(17)が1人俯いている。

 手には可愛らしい紙に包装された四角い箱。

阿佐ヶ谷「!」 

 ゆっくりとドアが横にスライドし女子生徒、浅井悠子(16)が、おずおずと入ってくる。

浅井「(阿佐ヶ谷の方を見つめながら)……」

 浅井、警戒しながら阿佐ヶ谷の方へ近づいていく。

阿佐ヶ谷「お、おぅ……ありがとな。一応、来てくれてさ」

 阿佐ヶ谷、俯いたまま口調だけ明るく呟く。耳が赤くなっている。

浅井「……」

 浅井、阿佐ヶ谷のすぐ近くまで来るが、警戒は解かない。

阿佐ヶ谷「……」

 阿佐ヶ谷、浅井の顔を見ようとするが、すぐに俯いてしまう。

 浅井、突然右手を振り上げ、阿佐ヶ谷の頬を叩く。

阿佐ヶ谷「!」

 阿佐ヶ谷、自身の右手で頬を抑え、呆然と立ち尽くす。

 浅井、その様子を目にしたことで、強張っていた表情に一瞬、後悔の念が現れる。

浅井「あ、あなたがっ!」

 浅井、再び表情が怒りに歪む。

 阿佐ヶ谷、その様子をずっと茫然自失で見つめている。

浅井「あなたが、私の杉本くんに……その、変なことを吹き込んだせいでっ!」

 浅井、時々言葉を詰まらせながらヒステリックに叫ぶ。

浅井「あ、あなたのせいで……あたしっ……」

 浅井、次第にしゃくりあげ始め、顔を覆う。

 阿佐ヶ谷、浅井のその様子を見て駆け寄ろうとする。

浅井「来ないで!」

 浅井、顔を覆ったまま阿佐ヶ谷に叫ぶ。

 阿佐ヶ谷、その声で歩みを止める。

浅井「う、うぅ……」

 浅井、顔を覆ったまま泣き続ける。

 阿佐ヶ谷、その様子を泣きそうな顔で見つめている。

浅井「今日、あたしを……呼びつけたのは、なぜですか」

阿佐ヶ谷「それは……」

 阿佐ヶ谷、後ろ手に持っていた包みを握りしめる。

阿佐ヶ谷「……」

浅井「……答えられないんですね」

 浅井、涙で腫れた顔を露わにし、阿佐ヶ谷を睨みつける。

阿佐ヶ谷「こ、告白を!……しようと思って」

 阿佐ヶ谷、耳を真っ赤にしながら悲しそうに呟く。

浅井「……」

 浅井、阿佐ヶ谷を睨み続けている。

阿佐ヶ谷「自分でも変だと思ってるし……そのために杉本くんと……浅井さんに悪いことを━━━」

浅井「何が言いたいんですか」

 浅井、阿佐ヶ谷の言葉を遮るように強い口調で冷酷に告げる。

阿佐ヶ谷「だから、浅井さんの事を好きになったから……」

浅井「だから、杉本くんに、有る事無い事言いふらしたんですか?別れさせるために?」

阿佐ヶ谷「……」

 阿佐ヶ谷、泣きそうな顔で俯く。

阿佐ヶ谷「わ、悪いとは思った……ごめんなさい」

浅井「(冷たい目で阿佐ヶ谷を見つめ)……同性愛のことを悪く言うつもりはありません」

浅井「……私は、純粋に貴方の人間性に反吐がでるんです」

 浅井、吐き捨てるように呟いた後、教室から去っていく。

阿佐ヶ谷「……当然だよな」

 阿佐ヶ谷、悲しそうに笑う。

阿佐ヶ谷「自分が完全に悪いと、泣くことすらできないんだな……」

 阿佐ヶ谷の独り言が教室に響き渡る。

 (終)

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