8 「関東一の荒くれ者、泣く子も黙る鬼の赤助たぁ、俺のことよ!」 3/15

お題『山道・女・1人』

タイトル「関東一の荒くれ者、泣く子も黙る鬼の赤助たぁ、俺のことよ!」

1240文字・58分


○山道(深夜)

 夜道を、馬が駆け抜ける

 その背に乗るのは、1人の女。市女笠を深くかぶっており、表情は見えない。

赤助「おいおいおいおい、そこの人ォ!こんな夜中にどうしたの!」

 前方に、小汚い身なりの少年たち、赤助(17)、青助(12)、黄助(10)が現れる。

 女が急いで手綱を引き、馬を止める。

青助「こりゃあ驚いたぜ、兄貴!(女を指差し)獲物はなんと女でさぁ」

黄助「(青助に続いて)女でさぁ!」

赤助「そいつは仰天、驚いた!」

黄助「驚いたぁ!」

赤助「女に暴力、男の恥!……だけど、腹の虫には勝てやしねぇ。紳士も時には鬼となる!大人しく、食べ物その他を出しやがれ!」

青助・黄助「出しやがれぇ!」

 3人、腰から木の棒を抜き、構える。

女「……やれやれ。子供が山賊の真似事たぁ、世も末ってもんだ」

 女、市女笠を取る。

赤助・青助・黄助「!」

 視線の先に端正な顔つきの少女、お妙(15)の姿。

お妙「ちょっとお灸を据えてやる。こっちは急いでんだ、 3人まとめてかかって来な」

 青助、黄助、一斉に赤助の方へ顔を向ける。

黄助「(ヒソヒソと)どうする、兄貴。思ってたより若いよ?」

青助「(ヒソヒソと)しかも、妙にやる気だよ。どうするの、兄貴?」

赤助「(黙って目を瞑り)……」

 赤助、突然目を見開き、お妙を指差して。

赤助「おい、そこの女ァ!」

お妙「女って呼ぶんじゃねぇよ!アタイには「お妙」って名前があんだ!」

赤助「その勝気、ますます気に入った!お前、俺の女になれ!」

 お妙、呆気にとられ、口を開けている。

赤助「おっと、自己紹介がまだだったな!関東一の荒くれ者、泣く子も黙る鬼の赤助たぁ、俺のことよ!」

青助「よっ!」

黄助「兄貴、カッコいい!」

お妙「……悪いが、茶番に付き合ってる暇はねぇ。さっさと通らせてもらうぜ」

赤助「おっと、そうは問屋が卸さねぇ!お前は今日から俺の女だ。一緒に来てもらうぜ」

お妙「言っても聞かねぇとは、太ぇ野郎だ。……嫌だと言ったら?」

 赤助、手に持った棒を肩に乗せ、不敵な笑みを浮かべる。

赤助「紳士が鬼に変わっちまう」

お妙「(ニヤリと笑って)上等じゃねぇか。おい!」

 お妙、黄助に向かって叫ぶ。

黄助「(自身を指差して)???」

お妙「その棒を貸しな。あんたの兄貴と一騎打ちすんだ」

 黄助、木の棒をお妙によこす。

 お妙、受け取って、馬から降りる。

青助、黄助「あ、兄貴!頑張って!」

 赤助、2人の声援を手で制す。

赤助「やれやれ、女に暴力は振るいたくねぇんだが」

お妙「降参すんなら今のうちだぜ?」

 2人、木の棒を正面に構える。

2人「いざ、尋常に━━━勝負!」

 2人が一斉に間合いを詰めていく。

 青助と黄助、歓声をあげる。


○同・同

 馬に乗り去っていくお妙。

 赤助、青あざを身体中に作って地面に延びている。

青助、黄助「あ、兄貴ぃ!」

 2人の声が夜空に響いた。

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