4「もしもーし、誰かいませんかー?」3/10

お題「魔王・城・最後」

指定→800文字以上・60分

実際→1900文字・62分

タイトル「もしもーし、誰かいませんかー?」


○魔王城・前(夜)

今にも崩れそうな城。

門の前には、勇者ケンタ(18)と賢者アリサ(16)、武闘家イッテツ(25)、僧侶マキ(17)の4人の姿。

 ケンタ「ここが、魔王城……か?」

 マキ「ずいぶんボロいわね」

 アリサ「……ですね」

 イッテツ「(頷きながら)……」

一同、お互いに顔を見合わせる。

 ケンタ「いや、いくらボロくても敵の本拠地であることには変わりない。気合い入れていくぞ」

 ケンタ「(照れ臭そうに)……お前らっていう最高の仲間と、ここまで来れて嬉しかった」

アリサ、感動してすすり泣く。

 マキ「(照れ臭そうに)……何よ、急に。その、あたしもそう思ってるけど」

 アリサ「(涙を拭って)えへへ!皆さん、抜かりなく行きましょう!」

 イッテツ「(力強く頷き)……」

ケンタ、大きく息を吸う。

 ケンタ「いくぞ!」

 マキ「あ、待って」

 ケンタ「どうした!?」

イッテツ、門に書かれているプレートを指差す。

インターホンと「御用の際は、必ずインターホンを鳴らすようにお願いします」の文字。

一同、顔を見合わせる。

 アリサ「こう書いてある以上、鳴らさないのは失礼ですよね?」

 ケンタ「え、でもさ、こういう場合って違わね?」

ケンタ以外、不思議そうにしている。

 ケンタ「俺らはさ、勇者じゃん?で、相手は悪の親玉よ?しかも、これが最後の敵よ?」

 マキ「それが?」

 ケンタ「えぇ……?礼儀とか良くね?」

 マキ「鳴らすのが常識でしょ」

 ケンタ「……」

ケンタ、アリサとイッテツの方を見る。

 ケンタ「まぁ、僧侶が職業柄、道徳とか気にするのは仕方ないよ?でも、君らは違うっしょ?」

 アリサ「鳴らすべきかと」

 ケンタ「えぇ……?だって鳴らさなかったら奇襲とか成功して、戦いが有利になるかもじゃね?」

 アリサ「……」

ケンタ、ため息をつく。

 ケンタ「まぁいいよ。女は結構そういうとこだけ真面目だもんな」

 マキ「何よ、その発言」

ケンタ、マキを無視してイッテツの肩を掴む。

 ケンタ「同じ男なら、非情にならなきゃいけないときもあるって理解してくれるよな?もし違うって思うなら反論してくれ」

 マキ「いや、イッテツは喋れないじゃない」

 アリサ「何がなんでも賛同者が欲しいようですね」

イッテツ、首をプルプルと横に振る

 ケンタ「……うんうん、そうだよな!イッテツは分かってくれるよな」

 アリサ「思いっきり首振ってますけど」

 マキ「往生際が悪いわよ」

ケンタ、大きくため息をつく。

 ケンタ「これで負けたら、お前らのせいだからな!」

 マキ「(ヒソヒソと)精神的に幼いよね」

 アリサ「(ヒソヒソと)まぁ、もう少しの辛抱ですから」

 ケンタ「聞こえてっからな、このくそアマども!」

ケンタ、インターホンを勢いよく蹴りつける。

大きく鳴り響く平凡な呼び出し音。

 マキ「くそアマ!?さっきは「最高の仲間」とか言ってたくせに!」

 アリサ「そうですよ!私の流した涙を返してください!」

 ケンタ「うるせぇ!リップサービスに決まってんだろ!テメェらは妥協した結果でしかねぇよ!」

イッテツ、オロオロしている。

 マキ「はぁ!?アンタ、あたしも妥協だっていうの!?普段は「特別、特別」って言ってくんのに!?」

 アリサ「まぁまぁ、マキさん落ち着いて……」

 ケンタ「勇者はな「お前は特別だ」って言ってれば股のゆるい女とやれるんだよ!お前もその1人だったってだけだよ!」

アリサ、持っていた杖を落とす。

 アリサ「え?……勇者様、あたしも、その「股のゆるい女」だったんですか?」

 ケンタ「そうに決まってんだろ?お前はマキより断然胸がデカイから、そこだけは特別だったけどな!」

マキ、自分の平たい胸を見る。

 マキ「よくも……よくも言ってくれたわね!」

アリサ、自分のお腹をさする。

 アリサ「あたしの、お腹の子は?せめて認知だけでも……」

 ケンタ「はぁ!?お前ガキできてんの?魔法で堕しとけっつったろ」

 アリサ「ひどいっ」

アリサ、顔を両手で覆って泣き出す。

 マキ「サイッテー!」

 ケンタ「気づかないお前らが悪いんだよ!」

マキ、ケンタに掴みかかる。

イッテツ、止めようとするがなかなか近寄れず、オロオロとしている。

インターホンから声が流れる。

 魔王の声「はい、こんな夜中にどのような御用でしょうか?」

イッテツ、魔王の声に戸惑い、代わりに話してれる人を探す。

マキとケンタ、つかみ合いの喧嘩をしている。

アリサ、泣いている。

 イッテツ「……」

イッテツ、荷物を手にし、1人で帰る。

 魔王の声「……?もしもーし、誰かいませんかー?」

(終)

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