3「単位と卒業と四八手」3/9

お題『レポート・驚愕・内容』

タイトル「単位と卒業と四八手」

指定→800字以上・60分

実際→1750字・60分


○京葉大学・前

 真新しい校門には「京葉大学」の文字と落書きされた形跡。

 その周囲はカラフルな頭の生徒たちでごった返している。


○同・京葉タワー・前

 キャンパス中央にそびえ立つ17階建ての塔。

 自動ドアの横には「京葉タワー」の文字。


○同・同・甲斐田教授の部屋・前

 「502 甲斐田」のプレート。


○同・同・同・中

 山住みにされた本の山と散乱したからのペットボトルが目立つ部屋。

 眉間に皺を寄せ、紙の束を手にした甲斐田幸久(35)と、棒付きキャンディーを手にした新谷由紀(22)がそれぞれ椅子に座っている。

甲斐田「確かに、どんなものでも単位をやるように務めるとは言った」

由紀「言ってたね〜」

甲斐田「……だが、いくらなんでもこれはないだろう!?」

 甲斐田、手に持っていた由紀のレポートを机に叩きつける。

甲斐田「ほとんど全ての項目が「楽しかった」だとか「つまんなかった」で終わるレポート?」

甲斐田「君は小学生か!?構成もクソもないじゃないか!今まで見た中で一番酷い内容だぞ!?」

 由紀、甲斐田の怒声を気にせずに飴を舐め続ける。

由紀「だって、書き方なんてわかんないんだもん。由紀、自分の興味があることしかやりたくないし」

甲斐田「ゼミで書き方を教えた!熱心に、丁寧に、何度も!」

由紀「ごめ、由紀、多分その時寝てたわ。ぜんっぜん記憶にないもん」

 甲斐田、うなだれる。

 由紀、立ち上がって手を合わせ。

由紀「ダンダン、由紀さ、内定もらっちゃったから卒業しないとなんだよね〜」

甲斐田「……ダンダン?」

由紀「あっ、甲斐田先生のあだ名ね。パンダみたいで可愛いっしょ?」

 甲斐田、ため息をつく。

由紀「もちろん、タダとは言わないよ?」

 由紀、甲斐田の手を自分の胸に当てる。

甲斐田「なっ……!」

由紀「あっ、ダンダン照れてる〜!かわいい〜!」

 甲斐田、急いで手を離す。

由紀「1回やらせてあげるからさ〜!あ、もちろんゴムありで!」

甲斐田「(呆れながら)……」

 由紀、甲斐田の前にしゃがみこみ、上目遣いで見つめる。

由紀「……ね、いいでしょ?」

甲斐田「バカなことを!」

 由紀、甲斐田の勢いに驚く。

甲斐田「単位が取れないから身体で支払う?ゴムあり1回で交渉?……ふざけるな!」

由紀「待って!わかったよダンダン!ごめんってば!」

 由紀、残念そうに目を瞑る。

 甲斐田、由紀の様子を見て動きを止める

由紀「……わかった、ホテル代は由紀が負担するよ」

甲斐田「全然わかってない!それと、ダンダン呼びやめろ!」

由紀「あ、ゴムなし派?」

 甲斐田、深いため息をつき、室内をウロウロと歩き回る。

由紀「(気にせずに)由紀ね、すっごいんだよ?超絶名器って評判なの!」

甲斐田「頼むから黙ってくれ……。こっちはどうやってお前を卒業させるか考えてんだよ」

 由紀、甲斐田の言葉を無視して話を続ける。

由紀「四八手も全部マスターしてんの!メジャーはもちろん、マイナーまでオテノモノよ!」

 甲斐田、由紀の言葉を聞いて動きを止める。

甲斐田「それだ」

 甲斐田、由紀の肩を掴む。

 由紀、甲斐田の行動に驚き、ビクッと反応する。

由紀「え、なに?セクハラ?」

甲斐田「さっきまでのお前の発言の方がセクハラだ!……じゃなくて」

甲斐田「四八手だ!」

 由紀、不思議そうにしている。

甲斐田「四八手について軽く纏めたレポートを卒業判定を出す2週間後までに提出しろ。これなら一応学術的研究になるし、お前の興味あることだろ」

由紀「マジ?でも、書き方わかんないし……」

甲斐田「安心しろ!2週間、みっちり教えてやる」

由紀「四八手を?……セクハラ?」

甲斐田「書き方に決まってんだろ!」

由紀「それもそっか。ダンダン童貞っぽいし」

甲斐田「(慌てて由紀の肩から手を離し)どっ、童貞ちゃうわ」

 由紀、ケラケラと笑う。

由紀「いいよ、由紀頑張ってみる!絶対卒業させてよね!」

甲斐田「……それは、お前の頑張り次第だ」

由紀「(笑って)無事に卒業できたら、童貞卒業させてあげてもいいよ?」

 由紀、左手で作った輪に右手人差し指を通す。

甲斐田「上手くねぇからな!」

 (終)

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