2「ゾウとライオン」3/8

お題『動物・最強・ランキング』

指定 800字以上・60分

実際1137文字・59分


タイトル「ゾウとライオン」


○病院・前

 真新しい7階建ての病棟。

 入り口には『台東区中央病院』の文字。


○同・小児科・前

 受付の机に「小児科」と書かれたプレートが置かれている。

 その奥のピンク色の壁には、ゾウやライオンの絵。


○同・同・中

人もまばらな診察室前。

小椋翔太(5)、座席でつまらなそうにゲームをしている。

小椋麻美(22)、その横で眠っている。

翔太「なんか飽きちゃった。先生遅いねー」

麻美「……」

翔太「あ、お母さん!寝てるよ!起きて!」

麻美、翔太の声に飛び起きる。

翔太「ふふ、おはよ」

麻美「呼ばれた!?」

翔太「まだだよー」

麻美「……ごめん翔太、お母さん昨日遅かったからもう少し寝てたいの」

麻美「先生に呼ばれたら起こしてくれない?」

翔太「えー、飽きちゃったからお母さんと話してたいよー」

 麻美、顔を歪ませる。

麻美「(小声で)……ワガママばっかり言わないでよ」


○回想・病院診察室・中

 狭い個室に、医師と麻美が座っている。

医師「翔太くんの心臓に悪性の腫瘍が見つかりました」

麻美「そんな……」

医師「もし手術が成功したとしても、6歳まで生きられるかは分かりません」

麻美「……小学校に行けないかもしれないってことですか」

医師「……残念ながら」

 麻美、うなだれる。

医師「……更に、小椋さんの場合、保険に加入していないので手術は非常に高額になります」

 麻美、ハッとする。

麻美「(ブツブツと呟き)今のパートに、深夜のアルバイトを掛け持ちすれば……。それでも足りなかったら……」

医師「……くれぐれも無理はなさらないように」

 麻美、その言葉に立ち上がる。

麻美「子供のために無理をしない親なんて!」

麻美「翔太にはお父さんがいないんだもん……これ以上、あたしのせいで翔太に苦しい思いをさせるなんて……」


○回想終了

翔太「……お母さん?」

 麻美、翔太の顔を見て我に帰る。

麻美「……ごめんね、なんの話しよっか?」

翔太「じゃあ、動物の強さランキング!お母さんは動物の中で何が一番強いと思う?」

 麻美、考えるそぶりを見せる。

麻美「うーん、ライオンかなぁ。翔太は何が一番強いと思うの?」

翔太「僕はね、ゾウさんが一番強いと思う!」

 麻美、首をかしげる。

麻美「ゾウさん?どうして?」

翔太「前ね、テレビで見たんだ。ゾウのお母さんが、ライオンから子供を守ってたの!」

麻美「……」

翔太「だから、僕はゾウさんが一番強いと思う!」

 麻美、涙ぐみながら翔太を抱き寄せる。

翔太「……お母さん?」

麻美「翔太!がんばろ!絶対に小学生になろ!」

翔太「……うん、がんばるよ」

 (終)

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