第10話祖母
まだ離婚前の話、母が1人になってしまった父方の祖母を「可哀想だから」と引き取った。祖母は内向的で、たまに仏壇の花を買いに散歩へでるくらいだった。既に認知も多少入っていたので花屋へ行くと迷子になった。何度かそういうことがあったので1人での散歩は禁止になったが、それすら忘れて出かけてしまう。午前中に出たのに夕方になっても帰ってこず、自転車であちこち捜した。見つかるときもあったが、夜遅くになって警察から1人で座ってるお婆さんがいるからと連絡がかかってくることが多かった。
父と母が離婚し、暫くして父の元へ戻った私が祖母の世話を任された。当時16歳。寝る時間もなかった。寝てる間に祖母は出掛けてしまう。常に監視していなければならなかった。学校へ行くことはできなかった。今ほど介護だのヘルパーだのがなかったし、貧乏だったので老人ホームヘ入れるという選択肢もなかった。私は学校を辞めざるを得なかった。私は祖母が嫌いだった。何を喋っているかも分からず、話しかけても応答がほとんどない。学もない。会話にならない。でもおむつを変えなければならないし、お風呂にしてしまった便の処理もしなければならないし、世話をしなければならない。
当時付き合っていた彼が数時間見てくれることになった日があった。外の空気が変わっていた。お天気がよくて、近くのファミレスでゆっくり食事をしただけなのにすごい幸せだった。なんて楽しいんだろ。なんて自由なんだろ。本当に短い幸せなときは終わり、再び家の中で祖母と籠もる生活が始まる。
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