キャラクター紹介 『天拳一派』

 ああ、こんばんは。遅かったじゃないか、なにか別の用事でもあったのかい?

 ……なるほどね。まあいい、かけ給え。時間は有限だ、始めようじゃないか。


 何をしているのかって? この領域も再び活性化し始めたからね、君達魔法少女のデータをまとめようかと思い立った所だったのさ。

 大丈夫、安心するといい。君の勉強ぐらいなら眠りながらだろうが見てあげられるからね。

 ん、違う? ああ、こっちが気になるのか。仕方がない、教えてもいい情報だけ掻い摘んで伝えていってあげるよ。

 ケチとは随分な物言いじゃないか。情報は武器、無料でおいそれと配るのは愚者のやることだよ。

 ほら、さっさとノート開く。それじゃあ早速――――まずは君達の勢力についてからかな。




天拳一派

 佐々木楓、サラ・クレシェンド、シエラ、柳生まなの四人で構成された新興勢力。

 佐々木楓は否定しているものの、実質的なリーダーは彼女である。いや、否定したところで他の三人がそう思ってるんだから関係ないよね。

 命名は本人達ではなく武蒼衆頭領遠藤梓葉によるもの。ちょっと君達無頓着過ぎないかい?


 勢力の目的は、魔法使いの討伐? 魔法少女らしいといえばらしいけど、構成員が中々にクレイジーな連中の集まりだよね。

 保有戦力に関して言えば数は全勢力最低、質は悪くないってところかな。

 そう言えばエンブレムのデザインを依頼されているから、出来次第君達の戦闘装束とかにひっつけておくからね。

 いらない? いやいや、こういうのは大事だよ。名前とエンブレム、統一されたデザインを身につけることによって組織として一体感を生み出す。

 そうやって結束力を強めているのさ、どこの勢力もね。




名前:佐々木楓

年齢:18歳(高校三年生)

髪色:茶色

髪型:セミロング

アイカラー:黒

得意魔法:なし

使い魔:犬


 変身時は黒のセーラー服風の戦闘装束に、手足には包帯。気合を入れる時には髪をポニーテールにしてるみたいだね。

 ある日突然魔法少女になってしまった平凡な高校三年生。しかし肝心の魔法が使えず、存在が魔法少女の概念を揺らがしている。

 そこで話が終われば良いのだが、魔法が使えないならとりあえず殴っとくかという少々危険な思考の持ち主で、この時点でどう考えても平凡から逸脱した人物なのは言うまでもないだろう。

 攻撃手段、殴る。防御手段、殴る。回避手段、殴る。脳筋とかそんな次元ではないが、それでなんとかなるのは一種の才能と言っても良いかもしれない。

 聞けば近所のお姉さんから教わった打撃法を一人で延々と練習し続けていたらしく、そういった事を踏まえても十分に普通ではないと断言しておく。


 得意魔法はなしとしたが、私としては天拳は魔法に分類していいか甚だ疑問だった為あえてそう表記した。

 なにせ魔法を使えなくする魔法、要は魔法を否定する魔法だからね。個人的には魔法とは認めたくはないかな。

 とはいえ魔法の封印を代償とした身体能力の向上は、彼女の思考や戦闘スタイルとは相性が良かったらしい。


 打撃法だけで戦っていける秘密は勿論天拳だけではない。

 通常魔法少女は深界潜行時に魔法少女としての肉体を形成し、基本深界で受けたダメージは本人の肉体にフィードバックしない。

 魔法少女は使い魔が死なない限り、何度だってやり直せる。これが魔法使いに圧倒的に劣る魔法少女の強みの一つなのだが、それすら捨てる愚か者も残念ながらこの領域にはいるわけだ。

 言うまでもなく佐々木楓なんだけれど。彼女と以下数名が用いる輝纏潜行フェイタルダイブは、自分の肉体で深界に潜る代わりに肉体の強度や精密動作性、魔力量などを爆発的に強化することができる。

 代償はダメージのフィードバック、つまりは深界で死ねば本人も死ぬ。命をなんだと思っているんだろうね。

 天拳に加え輝纏潜行の使用、この組み合わせによって佐々木楓は異常なレベルの身体能力と肉体強度を得ていると。


 (以下オフレコ)

 「強くなりたい」という願いによって、佐々木楓は交戦を繰り返すごとに異常な速度での成長を実現している。

 恐らくこれは敵が強ければ強いほど効果も高まり、佐々木楓がたった一ヶ月でここまで戦えるようになった一番の原因はこの願いによるものだろう。

 牡羊座の守護眷属シエラとの度重なる戦闘によって、佐々木楓の能力は短い期間で異常な数値を叩き出すまでに至った。

 そして可能性だが、その効果は精神にも影響を及ぼしている。元々彼女のパーソナルは常人の域を出ないような物ばかりだった。

 打撃法の練習も、あくまで尊敬する人物の真似をしたかったという部分が大きかっただけだろう。

 ダメージに一切頓着せず、敵を相手にしても物怖じせず、拳が砕けようが相手を倒しに行く性格は平均的な女子高生のそれではない。

 本人は気にしていないのか、或いは気付いていないのか不明だが、他勢力から危険視されるのも時間の問題だろう。




名前:サラ・クレシェンド

年齢:15歳(高校一年生)

髪色:銀色

髪型:ロング

アイカラー:青

得意魔法:換装アドベント

使い魔:狐


 白を基調としたミリタリージャケットにショートパンツ、動きやすさを重視した戦闘装束を着用している。

 佐々木楓に真っ先に襲撃を仕掛けた魔法少女であり、なし崩しに手を組んでからは一緒に行動しているようだ。

 襲撃理由はどこかと手を組まれても邪魔だから、というもの。かつて牡羊座の支配領域では魔法少女同士での戦闘が激化しており、他の魔法少女は鬱陶しいだけと考えていたのかもしれないね。

 魔法使いを倒すのに邪魔だからとその他全員を奇襲で倒したのは良いけれど、結局一人じゃ突破は難しいと考えていた所に佐々木楓が現れた。彼女としても都合は良かったんじゃないかな。

 最初仲間になるのを渋ったのは、まあそう安々と他人を信用なんて出来ないって意地を張っていたんだろう。彼女は彼女で色々あったようだしね。

 気になる? それは本人から聞き出し給え。


 戦闘能力に関しては、そうだな。あまり他人を手放しに褒めるということはしたくないんだけれど、サラ・クレシェンドの戦闘技術はこの領域にいる魔法少女の中でもずば抜けていると言っていいだろう。

 正しく天賦の才能というやつだ。魔法に頼らない戦闘技術において、彼女の横に出る者はいない。殆ど、とあえて付け加えておくけれどね。

 武器であればなんでも瞬時に使いこなせる、生まれながらにしての達人。恐ろしい才覚だが、魔法少女にならなければ恐らくは使う場所もなかったんだろう。

 そう考えれば魔法少女は彼女にとって一番才能を生かせる場所なのかもしれない。

 これで誰でも煽る性格じゃなければ完璧だったんだけどね。まあそれはそれとして、彼女自身は実は非常に生真面目な性格であることが節々から伺える。

 戦闘技術に関してもそうだ。彼女のそれは才能だけで成し得る領域はとうに突破している。つまりは才能もさることながら、彼女の能力はたゆまぬ鍛錬の賜物ということだ。それを口にするタイプではないけどね。


 サラ・クレシェンドのような純粋な戦闘技術に傾倒する魔法少女の特徴として、基本魔法を信用していない。

 彼女が基本的に使用する魔法も、亜空間に保有する武器を自在に切り替える換装アドベント防御シールドぐらいしか確認出来ていないのがその証拠だろう。

 多くを語りたがらない性格から考えて恐らくまだ他の魔法を隠し持っている筈だけれど、それについては私の方ではまだ調査が出来ていない状況だ。


 彼女の過去については多くを知っているわけではないが、目的があってこの領域に現れたのは間違いないだろう。

 それがなんなのかは、私の口からは語らないよ。君が自分で聞くべき内容だ、他人が面白半分にするような話でもない。

 でも、そうだね。サラ・クレシェンドは君達のことを決して悪くは思っていないだろうけれど、それでも自分のことは殆ど話していない。彼女の中では何も蹴りがついていないってことだ。

 その時、君に何ができるのか。何かができるようにしておくのは、きっと無意味じゃないんじゃないかな。




名前:シエラ

年齢:14歳(実年齢300越え)

髪色:金髪

髪型:ショート

アイカラー:金

得意魔法:砲撃バスター


 黒の外套にゴシック調のドレス。あまり戦闘向けの服装とは思えないが、動きを阻害しないようスリットなどが多用されているようだ。

 牡羊座の守護眷属であり……ってん? 実年齢のところが気になるって?

 そりゃそうだろう、彼女はこの世界に籠もっていた。深界は時間の流れが現実よりも遅いのは知っているだろう。

 とはいえ実際の体感はそんなに長くなかっただろうけどね。肉体にも現実以外では歳を取るのが極端に遅くなるよう弄られていたし、ちょっと年上ぐらいに考えておけばいいと思うよ。

 それに魔法使い以外の人と触れ合うことも殆どなかったんだ。彼女の成長は君達と出会うまで止まっていたと言ってもいいだろう。


 さて、話を戻すよ。彼女は牡羊座の守護眷属であり、擬似的に魔法使いを生み出そうとした特殊な存在だ。

 他の眷属と違うところは素材に人間が使われていること、本来眷属が持ちえない心を持っている所だろう。

 こんな面倒な眷属の作り方をしたのは牡羊座の魔法使いだけだろうね。冗談じゃないってぐらい手間がかかっているのが、ひと目見て分かる程だ。

 超がつくほど高度な改造、細胞単位での再構築は対象にも途方もない激痛が伴う。耐えられる存在は稀であり、こと耐えるという一点に関して言えば彼女は正真正銘の化物だ。


 怖い目で睨むなよ、本当のことなんだから。まあそんな甲斐あって、彼女のスペックは魔法少女を遥かに凌駕している。

 魔力量は断トツでトップ、使える魔法も防御シールドは当然として、砲撃バスター結界バウンド治癒ヒール強化ライズと多岐に渡る。

 中でも強力なのは牡羊座の固有魔法 『第一煌装』と『第二煌装』の『黄金の衣』だろう。

 とはいえ固有魔法は本来牡羊座本人のみが使用できるように構築された魔法、他の者が使用できるというだけでもかなり異常な事態なのは間違いない。

 身体に掛かる負担もかなり強力だろうから、そうそう出せるわけではないってことだね。


 また近接戦、主に格闘に関しては手ほどきを受けたらしくそれなりに使えるようだ。

 元々身体能力がかなり高いのもあって、それなりだろうが大抵の敵は魔法なしでも制圧できるだろう。


 最近は佐々木家で洋食屋の手伝いをしながら居候しているようだね。看板娘としての地位も奪いつつあるとか。

 まあ、幸せそうでなによりだよ。




名前:柳生まな

年齢:14歳(中学三年生)

髪色:黒

髪型:ツーサイドアップ

アイカラー:赤みがかった茶

得意魔法:転移テレポート


 最後に彼女、柳生まなだ。黒いブレザー風の戦闘衣装に、腰にはサラから借りたナイフを差している。

 牡牛座襲撃数日前に魔法少女になり、楓に助けられて以来ともに行動しているようだ。

 性格その他諸々普通。彼女を見れば普通を騙る佐々木楓がどれだけ異質か分かるだろう。

 正直普通過ぎて君はここにいて大丈夫かとも思うが、暫くは泳がせてもいいかな。


 使用魔法は転移テレポート。これが実にレアな魔法で、融通も効くし中々に使い勝手がいい。

 牡牛座の搾取とは相性が悪かったから目立った活躍はなかったけれど、戦闘にもそれ以外にも役立つ魔法だから今後はもっと出番も増えていく筈だ。

 あとは本人が使いこなせるかどうかにかかっているね。武蒼衆戦を見ている限りでは、他の三人に並べるぐらいの才覚は感じられたけれど……。




 君達はこんな所か。いや、魔法少女なんてのは癖のあるやつしかいないけれど、君達も大概だね。

 悪口じゃあないよ、この人数で他の勢力と対等なんだから大したものさ。これからはどうなるか分からないけどね。

 次は武蒼衆を――――ああ、ごめん、すっかり夢中になってしまった。勉強ね、ちゃんと見るとも。

 やれやれ、手間が掛かるお客様だ。

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