幕間劇その一 楓一味の作戦会議
佐々木楓……最近食べる量が増えてきて不安を募らせる高校三年生
サラ・クレシェンド……なんとなく衝動買いしたルービックキューブをずっと弄ってる高校一年生
シエラ……早くも佐々木家の洋食屋の看板娘の肩書を奪いつつある女の子
ファミレス……日々作戦会議が展開される楓達の活動拠点。期間限定春スイーツ販売中。
「最近どう?」
「うちその会話の切り出し方どうかとおもうんやけど」
「えー、なんでー?」
「話題がないからって相手に話題提供ぶん投げてるだけやん?」
「いやまあそうだけどさー……いろいろあるじゃん、ね?」
「下手か! まあそうやなー……」
「……私、メニュー全部覚えた」
「そうそう、シエラがうちのお店の手伝いしてるって話はしたやん?」
「居候する代わりにーってやつだっけー?」
「それや。なんかうちが手伝ってたときよりもお客さん増えてる気ぃするんやけど気の所為かな?」
「…………」
「せめて一言でもフォローが欲しかったわ」
「ママさんとパパさん、すごく良い人」
「濁し方が尋常じゃなく雑な上にうちのフォローじゃない」
「へぇ、どんな人なのー?」
「ママさんは強くて、パパさんは……大変そう」
「あーそういう感じねー……アンタの居候説得する時も楓センパイ土下座したっつってたっけー?」
「え、その話するん?」
「子犬感覚で人間拾ってくるなって顔面にストレート食らってた」
「打撃の強さは母親譲りかー……しかもド正論過ぎて返す言葉もないよねーそれ」
「鋭い一撃を人中に的確に入れてて思わず感心した」
「人体の急所に躊躇いなく攻撃出来るのも母親譲りかー」
「楓もすごい泣いてたけど……ちょっとあの間に入るのは無理……」
「拳砕けても泣かないのに母親に殴られたら一発で泣くんだねー」
「お願いだからもうやめて」
「いやいや、あたしは感心してるんですよー? 楓センパイも人の子だったんだなーって」
「どういう意味やそれ」
「痛いけど我慢すればいいだけやん! みたいな精神でガンガン突っ込まれると、こいつ恐怖心ねえのかよってなるよねー?」
「…………死にかけの状態で前に出られると、こっちが怖くなる」
「でもまあ母親に殴られたら一発で泣くらしいし、今度からやばくなったらお母さん連れてこよっかー?」
「母親魔法少女デビューとか高三で魔法少女はギリギリやんっていううちの悩みが消し飛ぶやろ」
「でもママさんなら戦えると思う」
「…………それは否定せんけど」
「否定しないんかーい」
「だって、なぁ?」
「……だって、ねぇ」
「事情も分からない居候を土下座だけで許してくれる辺り、ほんと剛の者って感じするねー」
「実際間違ってな――――いや、うん。あんまり外でこういう話すると家帰ったら大変なことになるからもうやめとこ」
「……ちょっと興味湧いてきたし今度お邪魔していーい?」
「もちろん。うちの店の料理ごちそうするわ」
「食べ過ぎて太りそうなのが怖い」
「おーそんなにかー……その割に楓センパイは普通に体型維持してるよねー?」
「食べるのは好きやけど、漫画かなんかのキャラみたいにアホみたいに食べられるわけやないからなー」
「……でも楓は着痩せするタイプ」
「マジか」
「あーもうやめやめ、うちを辱める方向の話禁止!」
「辱めてはいない。基本褒めてる」
「母親にぶん殴られて大泣きした話のどこが褒めてるか言ってみぃ?」
「…………」
「ところで楓センパイが着痩せするタイプって話だけど」
「おい」
「一緒にお風呂入ったときに」
「見たのか」
「見た」
「ていうか一緒にお風呂入ってるのか」
「楓優しいからゴリ押しすればいける」
「マジか」
「その語彙力いきなり減るのなんなん」
「布団にも入れてくれる」
「マジか。楓センパーイ」
「よくこの流れで行こうと思ったなぁ」
「ていうか普通に甘やかしじゃないですかー?」
「……なんていうか、妹欲しかったみたいな?」
「こりゃ今後も甘やかすな、絶対……」
「代わりにサラに厳しくしていく方向でいくわ」
「えっなんで」
「サラが蒸し返さなかったらどの話題もすぐ終わってたからや」
「それそもそもそいつが話し始めたからじゃ……」
「…………」
「おい、なにニヤニヤしてんだよー。あたしは今からおっぱじめてもいいんだぜー?」
「いいけれど。勝つのは私」
「はっ、魔力がなけりゃろくに戦えないポンコツ魔法使いがあたしに勝てるとでもー?」
「魔法使いなんだから魔法を使うのは当然。魔法を使わずに戦う魔法少女のほうがおかしい」
「その話題はうちに効く」
「防御やら武器の切り替えに使ってんのー。魔法が使えない魔法少女なんているわけないでしょー」
「流れ弾で心臓ぶちぬくの流行ってるん?」
「確かにそれはもう魔法少女じゃない……」
「じゃあうちは一体何者なんや」
「……拳を極めし者?」
「もうちょい可愛く」
「ゆるふわぷりてぃ☆殲滅者ー」
「前後のギャップがひどい上に血生臭さが全く拭いきれてない」
「
「分かった、この話やめよ」
「せっかく盛り上がってきたのにー?」
「盛り上がってるのはうちの怒りだけや」
「もう少し楓でいじ……あそびた……褒めたかった」
「うちに恨みがあるなら今のうちに聞いとくけど」
「本当に恨みがあったら背中からサクッといくから大丈夫でーす」
「なにも大丈夫じゃないわ。……はぁ。飲み物取ってくるけど、なんかいる?」
「カフェオレー」
「……メロンソーダ」
「ほーい。まったくもう……」
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