第十二話 佐々木楓と決戦前夜

「ふむ、どうやら私のアドバイスはしっかりと聞き届けてくれたようだね。もし君があの時の私の言葉を無視していたなら、修行内容に些かの修正を必要としていただろうからね」


修行の時間はサラと少女が戦闘を終えた後暫くして、深界に立ち入るものがいなくなった後に行われる事となった。サラに見られればまず修行の中断は間違いなく、眷属がいればそれもまた妨害の要因となるからである。

 初日となる今日はアイテム屋が活動拠点としている店兼工房とやらに招待され、怪しげな機械や魔法陣、アイテムが並ぶ中でせっせと腕立て伏せをさせられている。


『楓、サラの言うとおりこいつは信用ならねぇ。用心しろよ』


「聞こえているよ駄犬もといアルド君。無駄口は慎み給え。……軽く仕上げてきてくれたとはいえ、もう少し体作りはしないとかな……とはいえ本当に悪くない。もしかして普段からトレーニングをしていたりしたのかな?」


 体力面ではあまり優れているとは言い難かったが、筋肉の付き方が全く運動をしていない人間のそれではない。短時間である程度まともな状態に持っていくことが出来たのは、急場の筋力トレーニングが原因ではないとアイテム屋は見ていた。


「あー、うーん……一日一、二時間ぐらい。昔教えてもらった『最強のぶん殴り方』の練習はしてるけど、それぐらいやなぁ。部屋で素振りするか、前は近所の森で木ぶん殴ってたんやけど」


 ちなみに森での練習は不審者だと間違われたため、それ以降やっていない。


「ああ、あの暴れているだけと思っていたのはそういう意図があったんだね」


『最近は一、二時間じゃ済んでないけどな』


「道理で殴り慣れている訳だ。君の能力に納得がいったところで、腕を動かしながら聞いて貰おう。約束通り君の欲しい情報を、君を鍛えながら渡していこうと思う。さしあたって今日は、あの少女のことについて話していこう」


 どこからか赤縁の眼鏡を取り出すとそれをかけ、これまたどこからか紙の束を取り出す。座り心地の良さそうな椅子に腰を下ろすと、足を組みながら資料に視線を落とした。


「君やサラ・クレシェンドの読み通り、あの少女は他の眷属とは少々違う造りをしている。それが君の期待に沿う答えかどうかは別として、私のような人間からすれば彼女は非常に興味深い存在といえるだろうね」


「…………ええと、それでどう違うんです?」


「ああ申し訳ない、つい話が逸れてしまったね。通常の眷属とあの少女、どう違うのかと言われればはっきり言って何もかもが違う。通常眷属というのは魔法使いが魔力で編み上げた存在、謂わば可視化された実体を持つ魔力の結晶体のようなものだ。ゆえに魔力さえあればいくらでも生産が可能であり、一度構成情報を作成してしまえば同じ個体が量産出来る。それに対してあの少女は、そうだな……単刀直入に言えば、彼女は元々人間だ。どちらかと言えば私達魔法少女に近い存在と言っていいだろう。ただしそう簡単に一緒にするのはあまりに失礼ではあるけれどね」


 高度な魔法によって造られた眷属は感情に似たものすら仕込まれているらしいが、少女のそれは紛い物ではなく本物である。楓が感じていた違和感の正体であり、少女には感情があり意思があるという推測は外れていなかった。


「魔法少女は魔法を常人ですら扱える領域にまで引き下げ、必要な適性を外的要因で補うことにより完成する。だが彼女は違った。彼女は擬似的に魔法使いを生み出そうという実験のもとに造られた個体――――魔法少女なんかと違って、後天的に本物の魔法使いを造りだそうとしたってことさ。口で言うのは簡単だけれど、実際やろうとするならば膨大な知識や魔法技術が必要となる上に、その方法も悍ましいときた。まあはっきり言って、眷属に比べて効率は最悪と言っていいだろうね」


「なんでそんなことを、わざわざしたんやろ……」


「それは分からない。魔法使いの考えることなんて何処かトンでるものだから、常人が理解しようとしても無駄だろう。実験にかかる手間だって尋常ではないんだ。なにせ数十兆ある細胞一つ一つを造り替える大作業な上に、この工程には想像を絶するほどの苦痛が伴う。ちょっと成長期に入っただけで耐え切れずに痛みを訴える人間の体が、全身造り替えられて耐えられる訳がない。それこそ死ぬなり気が狂うなりしてもおかしくなかっただろう――――それを乗り越え、彼女は魔法使いの守護眷属となった」


 少女が強いのは当然だった。持ち得る戦力的な意味合いは勿論だが、力を手に入れるにあたっての代償があまりに違い過ぎる。覚悟、心構え、そういった部分で既に自分は負けていたのかもしれない。

 アイテム屋の言葉に、思わず息を呑んだ。だが気になる部分は他にもある。


「その、元となった子って」


「当然君と同じ世界の人間だ。更に言うなれば、君と同じ街に住んでいた。もしかしたら街中ですれ違ったりしていたかもね。まあいい、話を戻そう。通常耐えられないような実験に彼女が耐えられた理由は、おそらく彼女の境遇にある。君も知っているだろうが、およそ五年前に君の街で大規模な火災が発生しただろう?」


「ああ、うん……港の方が凄いことになってたやつやね」


 楓自身に直接的な被害はなかったが、当時はニュースでも取り沙汰され、非常に騒がしかったことを覚えている。

 貿易港が焼失し、多くの被害者が出た。家族を失った人や住む場所を失った人が大勢いて、一時期はとにかく治安が悪化していたが――――


「原因は不明、災害という噂もあった当時の大火災。多くを失った人々が暴徒と化し、半スラム状態となったことで街の治安は著しく悪化し、それに便乗した犯罪が多発した――――そんな犯罪の中でも、とりわけ凶悪とされた一家惨殺事件を君は覚えているかな?」


「……ああ、うん。覚えてるわ」


 楓は腕立て伏せを辞め、神妙な表情で頷いた。近所というほど近所ではないが、決して遠くない距離で起きた悲惨な事件。当時は楓の学校でも集団下校が徹底され、下校ルートには見回りをしている大人も多く見られた。

 確か目的は金銭だったか。犯人の男は捕まることなく、現場で何者かによって殺されていたらしい。そしてその家の長女である女の子だけが死体すら見つからず、学校の先生が行方を知っている人は伝えるようにと朝の会で言っていたのをなんとなく覚えている。

 殺人事件が起きてから少しの間はいろいろな噂が飛び交い、軽い都市伝説のようなものになっていたが、事件が風化していくにつれ少女の話題もいずこかに消えていった。


「ほら、誰が腕を止めていいといったかな? さて、その事件の被害者一家の長女は行方不明となって、今も見つかっていない。そしてその女の子が行方不明になった時期と、あの少女の出現時期は殆ど一緒なんだ。彼女はどういう方法を用いたか知らないが魔法使いに目をつけられ、事件の後この世界に引きずり込まれた。おそらく犯人を殺したのもその時だろうね。空いた期間は彼女の再構築と戦闘訓練にでも当てられたのかな。容姿も髪色なんかは違うけれど、よく見れば同一人物であることが判断出来る。ここらへんの事情は容姿から辿ったからまず間違いない」


 家族を亡くし、失意に暮れた末に少女は最後の居場所を手に入れた。耐え難い実験に耐えられたのも、純粋に生きたいという強い思いがあってこそだったのだろう。

 どうして魔法使いなんかに従っているのか分からなかったが、アイテム屋の言葉を全て鵜呑みにするならば少しは納得ができる気がした。魔法使いの真意はともかくとして、少女は魔法使いに命だけは助けられた。帰る場所も大切な家族も失い、残された道は眷属として魔法使いの下で生きていくのみ。楓にとっての敵が少女にとっての恩人であり唯一の居場所であるならば、たとえ元が人間であっても従うしかないだろう。


「……うち、どうすればいいんやろ」


 言ってしまえば、楓は別に魔法使いに勝てなかろうが困りはしない。所詮はアルドの手助けがしたいと始めたことで、今も別に何かを賭けているわけではない。

 だが彼女は存在全てをこの世界、そして戦いに賭けている。居場所、価値、そして生命に至るまでの全てを――――覚悟があまりに違い過ぎる。

 彼女が人間であるならば、助けたいと思う。けれど彼女を倒さなければ魔法使いへの道は拓かれず、魔法少女の役目は魔法使いを倒すことだ。アルドとの約束を反故するつもりもない。


「勝つしかないだろう。その為に君はここにいる。君が何のために魔法少女になったのか、それを考えれば答えに悩む余地なんてありはしない」


「それはそうやけど、でも……理不尽に全部奪われて、残された最後の居場所と命まで奪われるなんて――――」


 泣き言を言う楓に、アイテム屋は冷たい視線を向けた。まるでひっくり返ってのたうち回る虫でも見るかのような、おおよそ人に向けるべきではない目で楓を見つめ、ため息をつく。


「なにを馬鹿な事を言ってるんだ――――助けたいなら助けるしかないだろう。私は正直どちらでもいい、だが彼女と戦うのは君だ。君がどのような方法を選ぼうが私は止めはしないよ、それが可能か不可能か、或いはその結末に辿り着くためにはどのような手段を用いるのが最適なのか、そういったところを判断し助言はするけれどね」


 つまりは好きな方法を選んでいいし、それについてはアドバイスをするから、自分のやりたいようにやれと――――つい手を止めて、アイテム屋の顔を見つめてしまった。

 そのようなことをいう人物だと思っていたかったからか、はっきり言って楓は驚いていた。


「てっきりそんなのどうでもいいからあの子殺して、魔法使いを効率的に殺害しろとか言われるかと思った……」


「君、私をなんだと思っているんだ? ……まあいい。よくないけど。魔法っていうのはね、実は精神状態に大きく左右されるものなんだ。信じていなければ使えない。常人ですら扱える域にまでレベルを落とした魔法を使えるのが魔法少女だが、そんな魔法少女に必要な適正があるとすれば〝それ〟だ――――信じなければ、戦えないんだよ」


「でもうち、魔法使えないし……」


「それでもだ。ここを夢の中みたいだと思わなかったかい? それはあながち間違いじゃあない。現実から乖離した不安定な世界だからこそ、この世界はより魔法が使いやすくなっている。信じることが存在をより強く固定するんだ――――迷いがあれば揺らぐ。揺らげば存在すらも脆くなる。だから君に迷う余地はないんだ。そのために、君は君がやりたいようにやる必要がある」


 それに、とアイテム屋は呆れたような口振りで。


「彼女は強い。勝つだけでもはっきり言って難しい。今のままでは当然無理だ。というかいくら修行しようが魔法適正では万に一つの勝ち目もない。言っておくけれど、殺して解決するのと殺さずに解決するのでは、後者のほうが圧倒的に難しいんだ。方法はある、けれどただ勝つだけでは足りないというのならば要求されるものも必然的に多くなる――――ここで問うけれど、今の君にうだうだ言っている時間が残されていると思うかい?」


「……ない、です」


「よろしい。心配しなくていい、だからこその私であり君なのさ。私が君の欲しい結末を与えよう。だが無駄にしていい時間なんて一秒たりともありはしないのは分かっただろう? 余計な悩み事を抱えて修行の質を落とされると、私としてもプランの修正が必要となり非常に手間なんだ」


 要は黙って従えという事だろう。他に方法を知らないため彼女に縋る他なく、事情を知ってしまった以上放っておくなんて絶対にできない。

 勝てるかな、ではない。勝つためにここにいる。とにかく今は彼女を信じ、従うしかない。それで駄目ならその時はその時だ。


 そうしてその日は終始筋力トレーニングで終わり、現実に戻ってもトレーニングを行うようにとメニューまで指示された。

 それどころか期限の一週間のうち半分以上が過ぎても、依然として行われるのは筋力トレーニングばかり――――不満はないが、不安は残る。

 せっせとスクワットをこなしながら、楓は思わず訪ねてしまった。


「アイテム屋さん、魔法の練習とかはしないん?」


 そんな楓の問いかけに、アイテム屋は読んでいた小説から視線を外し顔を上げた。楓を見る表情は何言ってるんだこの馬鹿はと言いたげで、アイテム屋とのやり取りに若干慣れてきていた楓ですら「えぇ……」と言ってしまうほど。


「私との会話を忘れてしまったのかな? あの少女は強い。規格外だ。どう足掻こうが魔法適正じゃ勝てないって。君が虫も殺せないような付け焼き刃の魔法で彼女と戦いたいと言うのならば私は止めはしないけれど、少しでも判断を下せる理性が残っているのであれば答えは分かるだろう?」


「……はい、すみませんでした」


 短所を伸ばし能力を平均化するのではなく、長所を更に伸ばすことで能力を特化させる。確かに少女と渡り合うのであれば、後者のほうが希望は持てるだろう。一週間で魔法を覚えたところでたかが知れているというのもあり、楓の最大の武器である拳撃をより高い領域に引き上げるほうが勝率は確かに上がるかもしれない。

 それだけで勝てるとも思えないが――――とにかく今は言うことを聞こう。いろいろと思うことはあるが、楓はそれをそっと胸の内に仕舞い再びスクワットを開始する。

 もし一切の成果がでなければ一回はアイテム屋をぶん殴ろう、そう心に決めて。


 そして一週間目。結局最後までトレーニング漬けの毎日だった。人生でここまで運動したことがなかった楓は全身もれなく筋肉痛に苛まれ、母親からは少し痩せたかと心配までされる始末。

 アルドの散歩のおかげかなーなんて誤魔化したが、これで良かったのかと思いながら与えられたメニューをなんとかこなし終える。汗をタオルで拭っていると、アイテム屋がさてと椅子から立ち上がった。よく考えれば、トレーニング開始以降立ち上がったのを初めて見たかもしれない。


「お疲れ様。まあなんとか合格ラインには到達出来たかな……かなり怪しくはあるけれど。まあいい、あとは気合でなんとかするしかないだろう。話が見えてこないって? そりゃそうだろうね、情報は小出しにしないと意味がない。だから今日までわざわざ話さず隠していたんだから」


「筋トレが目的じゃなくて、あくまで手段だったってこと?」


「その通り。ある程度の身体の強度がなければ耐えられないからね。そのための体作りだったということさ――――さて、それじゃあ約束通りお話しよう。どうしてサラ・クレシェンドが魔法少女として受けたダメージを現実の肉体に引き継いでいたのか。そして君が抱える悩み、相手が命懸けなのに対して自分だけ命も賭けず簡単にやり直せてしまうという不平等の解決法を」


 そういうとアイテム屋は怪しげな笑みを浮かべながら、手に小さな魔法陣を出現させる。


「本来深界潜行時に、魔法少女は魔法少女としての身体を形成する。原理としては眷属の作成と同じだね。だから何度でもやり直せるし、ある程度の傷なら簡単に修復が可能だ。しかし夢にいるかのような浮遊感は消えず、所詮は自分の肉体ではなく偽物でしかない。違和感は消えないし精度も甘くなる」


 本来。つまりは例外があるということであり――――。


「『輝纏潜行』――――これから君の端末に登録する魔法の名前だ。読んで字の如く、深界潜行時に肉体を形成せず、そのまま自分の肉体を使えるようになる魔法だよ。デメリットとしてはダメージのフィードバック、致命傷を受けた際そのまま死に至る危険性を常に抱えることになる。代わりにメリットとして肉体の精度の上昇、肉体そのものの性能が跳ね上がり、保有する魔力量も含め全てが爆発的に向上する。君の身近にもこれの使用者がいるってことは、もう分かっているだろう?」


「サラ……」


「そう、彼女も輝纏潜行使用者だ。あの強さも納得だろう? なにせ彼女は命を賭けてるからね。ああ、登録はしたけれど使うかどうかは任せるよ。なにせ使えば元には戻せない――――一度使ったら最後、常時フェイタルダイブ状態になるからさ。私も死ねとは言わないからね」

 

 輝纏潜行。確かにこれを使えば少女と対等の条件になり、戦力の差もある程度は埋められるかもしれない。

 使用の強制はしないとアイテム屋は言ったが、彼女は既に楓の答えも見通しているのだろう。命を賭ける危険性とは裏腹に、楓はやっと重荷を下ろした気がした。


「うん、ありがたく使わせて――――」


『駄目だ!!』


 躊躇いなく使用を決める楓に対し、異議を唱えたのはアルドだった。今まで楓のやることを基本的に否定してこなかっただけに、楓は咄嗟に口を噤んでしまう。


『ざけんじゃねえ、そんなことが許せるか!! 強くなれるならと黙ってみてたけどよ、やっぱ裏がありやがった……死ぬ危険なんて背負う必要ねえよ!! だってそうだろう、時間はまだある。何度だってやり直せばいい、お前なら勝てるまで何度でも立ち上がれるはずだろうが!!」


 やり直せるという魔法少女のアドバンテージを捨てることがどれだけ危険か、アルドからすれば楓の選ぼうとしている道は自殺にしか見えなかった。

 サラの戦闘能力は天性の才能と数え切れない戦闘経験から成るものであって、あくまでフェイタルダイブはそれを押し上げているだけに過ぎない。命を賭ければ勝てるわけじゃないのだから、見込みが薄ければ止めるのは当然だった。

 そんなアルドの言葉を聞いて、楓は胸に手を当てる。アルドが心配してくれているのは嫌というほどに伝わってくるが、だからこそ――――


「うん。でもあの子との差を埋めるなら、命を賭ける程度じゃ足りないよ。だからせめてうちはうちの全てを賭けたい――――アルド、うちを信じて」


 時間があったとしても、何度やり直せたとしても、きっとあの少女との差は埋まらない。


『でも…………ッ』


 それでも許容出来ないと吼える使い魔を前に、彼女は――――アイテム屋はその姿が酷く滑稽だと言わんばかりに嗤った。


「いいさ、使わなくても。さっき言ったとおりどうするかは自由だよ。けれどいいのかな? 仮にも君の身体は佐々木楓の中に取り込まれている状態、当然君の精神状態も楓君の全てを左右する。ましてや意見が食い違った状態、同じ方向を見ていないなんて論外だ。きっと肉体の出力は目に見えて落ちるだろうね。下手したら動かすことさえままならないかもしれない――――もしそうなればどんな結果になるのか、それはそれで見ものだけれど」


『テメェ……ッ!!』


「君の顔は見えないけれど、君がどんな顔をしているのか手に取るように分かるよ。悪くない気分だ――――けどね、これは本当にこれ以上ないぐらいサービスしてるんだ。なにせ輝纏潜行は魔法使いを倒した魔法少女にのみ使用出来る裏技みたいなものだからね。使えるものは使うべきだよ、アルド君」


 アルドの抵抗など想定済み、それでも戻れないところにまで進めてから真実を教える。使わなくていいなんて言ってはいるが、楓の性格上使わないなんてことはありえない。

 アイテム屋と手を組むと決めた時点で、こうなることは必然だった。今更抵抗したところで楓の意思は変わらず、従わなければより状況が悪くなるだけだ。

 頷くしかないと分かっていても、それでもとアルドは楓の中からアイテム屋を睨みつける。


「では約束通り条件は整えた。精々頑張り給え、後は君達次第だよ」

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