第三章 ✲✲✲ 5 ✲✲✲

「あの写真だったら、もう消すように言っといたわ」

 翌日の昼、亜弥に、裕子のスマートフォンに保存されている料理の写真を消すように促してもらう為の理由を考えながら、その話を持ち出した。

 和哉がカフェに通っている事実を隠しつつどう上手く言おうか悩んでいたが、それを言う前に、亜弥の方から先に裕子に写真を消すよう言った旨を聞かされた。

「……えっ? そうなのか?」

「うん。昨日あんたと話した後考えたんだけどさ、やっぱマズいかなぁと思って。裕子に行っといたわ。消したほうがいい、って」

「あー…、そう。ならいいや」

 結構あっさりと終わってしまった。手間が省けて何よりだが、何かしらの文句を聞かされると思っていたから、少し拍子抜けだった。

 とにかく、結果的には目標達成だ。本当に写真を消したかどうか、などの確認まですることはないだろう。そこまでするほどのことじゃない。

 和哉は早々に、この話を切り上げた。

「あ、淳平。心理学の課題、終わったか?」

「………えッ⁉ あ、いや……」

 自分に話が向くとは思っていなかったであろう淳平が、やはりしどろもどろに言った。

「まだか……」

「…………すまん、もうちょい…」

 この様子では、心理学のノートが返ってくるのはもう少し先になりそうだ。

 まだ今のところは淳平の手元にノートがあっても構わないが、あまり長すぎても困る。

「期末課題までには、返せよ……」

「や、そんな先には、ならないと思う……多分…」

「……………………」


 全くもって、信用ならない。

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