第一章 ✲✲✲ 4 ✲✲✲

 その日の営業が終わり、カフェ店内には店長の姿だけがあった。

 飲食店の仕事は、料理を出して会計が済めば終わり、というものではない。

 食器や調理器具の後片付け、次の日の料理の簡単な仕込み、レジの締めなど、他にもやることはたくさんある。一人での経営はそれらすべてをこなすため、どうしても時間がかかってしまうのだ。

 そんな忙しさがあっても、このカフェの営業に文句はなかった。

 カフェに訪れる客の美味しそうに料理を食べる顔、それが見られるのは嬉しい。

 そのためなら多少の苦労は気にならない。

「今日の学生さんたちは、近くの大学の子たちかな」

 夕方に来ていた大学生五人組。

 全員料理を美味しい美味しいと言って、完食してくれた。

「結構ボリュームある料理だったんだけどなぁ。育ち盛りなのかなぁ」

 豪快に食べてくれるのは見ていて気持ちがいい。

 丹精込めて料理を作った甲斐がある。

「またいらしてくださいね、ふふ」

 学生たちの満足そうな顔を思い出して、店長は一人笑った

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る