第2話

宵闇に、仄かに灯る青い光粒。

フードを深く被り手を両手を差し出す何者かがいた。小さな掌の上に大小さまざまな光が、波のように寄っては、散っていく。

子どものようだ。少年か少女か、はたまた妖魔か。

ここは浮き世か。

俺は死んで、肉体は地中に。そして魂は此処ここに。

なんだ。

偉そうな祭司どもの言う天国なんてありゃしないじゃないか。

だがそれで、良かった。

俺にとっては此方こちらの方がずっと。あの光は心が安らぐ。

歩むたび、水の輪が紋様のように広がっていく。空気は澄み、星が無数に瞬いている。

子どもが振り返った。

林檎ほっぺの女の子。


「おかえりなさい」


二度瞬きをする。

俺は青い光。

優しくて暖かい、あのともしび

俺は溶け、澄んだ空気になる。無数の星になる。

女の子は帰り支度をしている。

朝を迎え家族と会うために。

おはようを言うために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冬に産まれたきみはいま 星燕 @HOSHI-TSUBAME

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ