第3話 石鹸、砂糖、塩
さて、気合はいれたけれど。
これから一体どうすればいいのか。
大きなベッドに横になって、先人たちの知恵を絞りだす。
石鹸、砂糖、塩。
異世界の小説を沢山読んだ人にはおなじみの、これらを新しく作って領地をウハウハにするやつ。
さぁ、せっかく入れ替わったのだし。
この私の持ってる知識を生かして、この世界にあるものより上等な石鹸、新しい砂糖、塩と思ったけれど。
石鹸ってどう作るのだろうか。
リンスや井戸の水をくみ上げるためのポンプ作ってた人もいたけれど。
うん、一つもワカリマセンヨ。
石鹸はオリーブオイルとかから作ることはなんとなくわかるけれど、他に必要なものがわからない。
リンスもしかり。
砂糖は、てん菜かサトウキビがあればだけれど、てん菜糖もサトウキビからもどうやって作るのか知らない。
絞って煮詰めればできるの?ほんとに?
そもそもその作物はこの世界にあるのだろうか。
塩も、海や塩湖があれば煮詰めてできそうだけど、そもそも領地に塩湖や海がないとできない。
それに、日本では塩は今では高価ではない。
こちらの世界でも、作り方が確立してれば安価だしわざわざ作る必要があるのか問題もでてくる。
あーーーばかばか……。
こんなことなら、石鹸つくるのねって流して読むのではなくて、石鹸をつくには材料はこれを使うのねってこともwikiで調べておけばよかった。
井戸の水をくみ上げるポンプに至っては構造がサッパリわからない。
現代っ子だから、井戸の水をくみ上げるポンプの知識はあっても、実際にくみ上げたことすらないし。
うーん、異世界の知識でチートってのは私にはできないかもしれない。
「お嬢さま、先ほどからいかがなされましたか?」
「ヒッ」
いきなり話しかけられて本当にびっくりした。
「突然すみません、あまりにも表情がコロコロと変わられておりますし、先ほどからは唸っていたようでしたので……」
そこにいたのは年配の女性だった、メイドの格好をしているからここで働いている方だろう。
「いえ、少し考え事に夢中になっておりました」
私はあわてて起き上がる。
「そうでしたか、ベッドの上でそのようにゴロゴロと転がりまわるのは感心しません、以後お気をつけくださいませ」
「はい」
転生の嬉しさでいろいろしていたけれど、この人いつから部屋にいたのだろう。
部屋の中を見回した時はいなかったから、そのあとかしら。
それにしても、現代知識を生かしてに夢中になりすぎてしまった。
一応、いいところのお嬢さまなのだから気をつけなければ。
変に思われてヘタに監視でも付けられてはたまったものではない。
「それでは、来月の藤の花の会の予定をお伝えいたしますね」
「藤の花の会?」
「はい、子供たち同士の社交の場に出る前のお茶会に今度から名前をつけることになりまして。季節にちなんで花をめでるも兼ねることになりまして。このような名前になりました」
「なるほど」
藤ということは、詳しい時期はわからないけれど、とにかく春の終わりごろかな今……。
たしか、中学の校庭に藤の花のアーチがあって、桜の時期はさいてなかったし、部活の借り入部終わったあたりに咲いていたから、今はそれくらいの時期なのだろう。
温かくていい季節だわ。
「以前は6名でしたが、今月はお隣の領からも2名参加されます。2名のうち一人はお嬢さまと歳も同じですし、将来のご学友になれるかもしれませんね」
隣の領……………というと。
脳内で、ゲームのマップを思い出す。
辺境伯の私のいる領地に隣接してたのは悪役令嬢の領地、そして悪役令嬢の領地の反対側には王都がある。
って………、来月のお茶会とやらでは、いきなり悪役令嬢 アイリス!
まさか、まさかのいきなりの主要メンバーの登場。
「いかがなされました?」
「あの、同い年の方はアイリス様といいますか?」
「えぇ、さようでございます。先日のお茶会の際にお聞きになられておられましたか」
あのアイリスで間違いないだろう。
以前のお茶会の参加者はさっぱりとわからないけれど。
きっと私も住んでる領の貴族で社交界デビュー前の小さな子が集められた小さな集いだったのだろう。
それが、今回は2名だけとはいえども、この辺境地に大領地から直系の子がくるのである、これは一大事である。
アイリスの親はこなくても、子供だけよこすわけにもいかないし、ましてや直系となれば保護者もそれなりの方がお目見えになるはずである。
これは、我が領地にとっては一大事ではないだろうか。
「これは、一大事ではありませんか。本当にあのアイリス様がこられるのですか?お茶会は具体的にはいつなのですか?何かおもてなしを考えたほうがいいのでは?」
とにかく粗相があってはいけない。
アイリスの趣味ってなんだっただろう。
何か本を読んでいたような気もする。
本……本………。
本…………………。
石鹸→作り方わかりません。
本→短い物語なら書けるのではないだろうか。
お子様向けのワクワクするような。
本を読むのも教養になるのではないか。
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