Int8.雨


 家に傘を忘れたので、待ちぼうけを食らった。

 まぁ、濡れ鼠になって帰ってもいいんだけど。

 気分は悪そうなので、やめた。

 他の生徒が自前の傘をさして去っていくのを、下駄箱でぼんやり眺めていた。

 あんまり面白くなかったので、教室に戻って時間を潰すことにする。

 部活には入っていなかった。

 かといって、他にやりたいことがあるでもなし。

 退屈しのぎに、暇を持て余す。

 がらがらっと引き戸を開ける。

 こういう時に限って、誰もいない。

 実に面白くない。

 面白くないので、誰のだか知らない窓際の席を拝借してやった。

 消極的に何もやりたくない感じだ。

 そして寝た。

 起きたら下校時刻ギリギリであった。

 慌てて椅子から飛び上がり、窓の外に目もくれず走り去る。

 下駄箱。

 まだ雨降ってんじゃん。

 みたまんまの感想をぼけーっとしながら漏らしてみる。

 傘を貸してくれる人はいなそうだった。

 どいつもこいつも薄情である。

 そして私は寝坊助である。

 ぼけーっ。

 雨に対して特に感慨は湧かない。

 詩的表現など期待するんじゃない。

 イマドキ女子に風流なんて求めるな。

 そんなわけで、自分は濡れ鼠だと暗示をかけた。

 翌日、風邪をひいた。

 全部、雨のせいにしておいた。

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