Int2.イタミ


「痛いよ」

 誰かが言いました。

 わたしは聞こえないふりをしました。

「イタイ」

 何かが言いました。聞こえないふりをしました。

「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいやだいやだもうやめておねがいですおねがいしますやめてくださいいたいですいやですしにたくない」

 耳を塞ぎました。何も聞こえませんでした。

 凹凸の付き始めた金属の棒を振りかぶっ叩きつけ塞いだ耳をかっぽじって阿鼻叫喚の地獄絵図を演出しながら自己否定に走り出すと現実もおやおやとやってきてそいつもろとも燃やして炭にした結果どうにもならない理想に狂って己の至らなさに反省と後悔と憐憫と嫌悪に包まれながらおえおえ嘔吐瀉物まみれたコンクリートジャングルの一角で何も見えない何も見ないの空想連想ゲームに耽るわたしを殺し引き裂気まぐれに生かしつつ恐怖に怯えて立ちすくむ様子をせせら笑うことを許容する様にやっぱりそれはわたしでした。

「いたいよ」

 わたしは言いました。

 誰も耳を貸しませんでした。

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