第6話


 私はスイカ割りの要領で、目を閉じたまま両手を振り下ろす。

 私は瞼を下ろして何も見えないふりをした。

 なにも見えない。

 なにも見ない。


 けれど、あの感触がいつまでも忘れられない。

 割れ

 壊れ。

 潰れ。

 砕け。

 そして、死んでいく、あの感触が。

 飛び散った体液の生ぬるさが。

 いつまでたっても、忘れられない。

 耳に瞼は付いていない。

 だから、聞こえていた。

 加虐と。

 喪失と。

 悲哀と。

 絶望と。

 すべてが死にたくなるほど明らかで。

 すべてがぷるぷる震える脳みそに烙印の如く刻まれていく。

 そして私は死に。

 幾度となく、繰り返し、刃を身体に突き立てる。

 私は笑っている。

 “私”が、見つめている。

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