第5話
私は目の前のそれをロープで縛り上げ、焼却炉に放り込む。
私は耳を塞いで何も聞こえないふりをした。
なにも聞こえない。
なにも聞かない。
けれど、あの匂いがいつまでも忘れられない。
焦げる匂い。
溶ける匂い。
死の匂い。
私は瞼を閉じることができなかった。
見えていた。
焦げる様が。
溶ける様が。
死にゆく様が。
私はなにも聞こえなかった。
わたしは、なにも聞こえないふりをした。
それは無機物であったかもしれないし、あるいは有機物であったかもしれない。
それは何かの記憶媒体であったかもしれないし、人間であったかもしれない。
それは私だったのかもしれないし、“私”だったのかもしれない。
今となっては、わからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます