第7話


 気がつくと、私はそこにいる。


「………………」

 その女は何も言わずに、私を見つめてくる。

 足元には無数の死体が転がっている。黒い炭になったもの。あたまから脳みそのお花が咲いているもの。縄の首飾り。肉の傘立て。お腹から伸びる血色のマフラー。バラバラ。ぺしゃんこ。サイコロステーキ。挽き肉。関節の折れ曲がったお人形。

 “私”は私たちの無残な姿を睥睨して、悲しげな顔をする。

「なぜ、そこまでするのですか」

 時間は私の都合で止まってはくれないから、と私は言った。

「どうしようもないのですか」

 どうしようもないんだよ、と私は泣いた。

「かわいそうなひと」

 おまえもな、と私は苦笑した。

「コンテニュー、しますか?」

 いや、もういい。

「もう、終わりにしよう」

 ずいぶん長いこと下らない遊戯に付き合わせたね。

 すまなかった。

 そして、ありがとう。

 そんなことを、私は言った。

 “私”は微笑んで、

 私もまた、微笑んだように思う。

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