1-13【お受験戦争 2:~”勝利”の条件~】



ベルチャルシエラ、早く!」


「ううぅ・・・まだ、はやいよ」


 宿屋の正面玄関から出たとき、まだ空は僅かに白んでいる程度だった。

 たしかにルシエラの言うように、早朝発の馬車に乗るためだとしても少し早いか。


 だがいよいよアクリラに着けると興奮しているモニカにとってはそんなことはお構いなしだ。


『走るなよ、まだ暗いんだ』

「うん!」


 街の通りはまだ暗い。

 数十mおきに魔力灯の明かりはあるものの、ほとんど真っ暗と言ってよかった。


 そんなわけなので流石のモニカも足を緩める。

 だがまだ小走りに近い形だった。


 ただこれ以上緩めるのは困難だろう。


 むしろ興奮したモニカから流れてくる感情で、俺まで舞い上がってしまいそうだった。


バサッ、バサッ!!


 その時、遠くの方で鳥が飛び立つような羽音が聞こえてきた。


 突然モニカが真顔でそちらを向いて睨む。


『どうした?』

「・・・・」


 モニカは尚も無言でその方向を睨んでいるが、俺の視界には真っ暗な街が映るだけで何も興味をひかれるようなものはない。


「うん? 何かあるの?」

「キュル?」


 まだ半分寝ぼけた表情のルシエラとロメオが何事かとモニカに尋ねる。


「ううん、たぶん、気のせい」


 だが、モニカはすぐにその”何か”から興味を失ったようで、顔を進行方向へ戻すと、再び期待と不安に満ちた興奮が戻ってきた。



 街は意外にも活気に満ちていた。


 いや、これを活気というのは少し語弊があるか。

 まだ店などは開いておらず、店員と思われる人が困惑気味に通りを眺めている光景がよく見られる。


 それでも朝早くから多くの人が往来し、それぞれが知人を見つけると興奮気味に何かを話している。


『モニカ、何か様子がおかしくないか?』

「そう?」


「うーん、何か困ってる感じ? 業者が来ないとかって言ってるわね」


 周囲の様子をサッと見回したルシエラがそんなことを言った。

 

 一応俺の方でもモニカの聴覚情報と頭やロメオの背中に着けてる簡易感覚器の情報を洗ってみるが、概ねそんな感じの会話がなされていた。


「どうしたんだろうね」

『そもそも、こんな時間から業者って動いてるもんなのか?』


 こんな周囲も真っ暗の中を馬車で往来するのは、あまりよろしくないだろう。


「一応この街も交易都市だから、朝から騒がしいのは不思議じゃないとは思うけれど・・・」


 ルシエラがそう、とりあえずの結論を出し、とりあえずその場を後にする。


 ここは小さな町だし、きっと街の外れの方へ行けば、この活気も治まっていることだろう。



 だがその考えに反して街の外に行くほど人が増え、門の近くに至っては凄まじい人だかりだった。


「何かしら?」


 ルシエラの目が鋭いものに変わる。

 さらにモニカから緊張の意思が流れてきた。


『どうした?』


 この場で何も気づいていないのは俺だけらしい。


「嫌な予感がする・・・」


 モニカが短く俺とルシエラに伝えるようにそう言った。


『・・・それってどれくらい?』

「サイクの待ち伏せにあった時くらい」


『そりゃ、また・・・』


 かなり状況が悪いな。


 俺は気合を入れて、索敵系のスキルの出力を上げた。


 だが街中で、更に人混みの中ということでデータにノイズが酷く混じり、よく分からない。


 やはりこういう場所では、”野生の勘”を持っているモニカの方が何枚も上手か。


 だがそれでもこの列の先が全く動いていないということくらいは分かった。


「門が開けられない!?」


 その時、前の方からそんな声が聞こえてきた。

 そして同時に周囲に緊張が走る。


 前の方を見れば門の前で、憲兵と思われる者と列の前の方に並ぶ人間たちが大声で怒鳴り合っている。


 驚いたのはその憲兵が、本来そこにいるべき”街”の警備隊ではなく、”国”の制服を着ていたことだ。


 そして、その向こうに見えるこの街の門は固く閉ざされ、さらにもう間もなく夜明けだというのに、一向に開門の準備が始まる様子もない。


 そもそも、現在は平時で、交易都市であるこの街は夜中だろうが街の門が閉まるようなことはない筈なのに。


 それなのに門は封鎖され、この街の”警備隊”ではなく”軍”の人間が警備にあたっているという状況はかなり異質だった。


 そして次の瞬間。


 群衆が一気に混乱に陥る事態が目に入ってきた。

 

 夜が明けたのである。


 この街は少し小高い丘の上に出来た街で、ここからでも街の壁の向こうに外の景色を見ることが出来る。

 そして先程まで真っ暗で見えなかった街の外に、見たこともないような謎の軍勢が、まるで包囲するかのようにこの街を囲んでいる様子が見えたのだ。


 俺も事ここに至って、この事態と俺達が無関係だと思うほど能天気ではない。


「・・・ルシエラ、どうする?」


 俺が周囲に声が聞えることも承知でルシエラに問う。

 今は混乱して、四方八方から声が飛び交っているのでモニカの方向から他の声がしたところで問題はない。


 むしろ、できるだけ早く新たな行動の指針を決めねばならなかった。


「一旦、ここから出ましょう」


 ルシエラが短くそう言い、モニカの手を引く。

 だが、モニカの目はまるで何かに吸い寄せられるように、外を包囲する謎の軍勢に集中していた。


『モニカ、行くぞ!!』


 モニカが何に気を取られているのかを悟った俺は、咄嗟に”それ”から集中を逸らすように怒鳴りつけた。

 

 だが、それはわずかに遅かったようだ。


「・・・コルディアーノ?」


 短く問いかけるようにそう呟いたその言葉には、隠せぬ動揺が含まれていた。

 ちくしょう、認識してしまったか・・・


 街の外側からまるでこちらを睨むように並ぶ高さ13mの巨体は、間違いなくコルディアーノと同じものだったのだ。


 間違いない。


 ”あいつら”だ。


 いつの間にかあの軍勢に追いつかれていたのだ。

 いや、あの様子からして待ち伏せされたと見るべきか。


 それと前回の邂逅時には幸運にもモニカがそれを認識することはなかったが、今回はそうはいかなかった。


『モニカ! あれはコルディアーノじゃない!! 同じ形の別のゴーレムだ!!』


 俺が叫ぶようにモニカを叱咤する。

 今は”世の不条理”に動揺している時ではない。


 流石にそれは理解してくれたモニカは、大きく後ろ髪を引かれる気持ちではありながらも、ルシエラに続いて列の外側に向かって進んだ。


 だが、



「あれ、ルシエラじゃない?」


 次の瞬間、列の少し前の方からそんな声がかけられ、そして俺達は愚かにもその言葉に反応し、声のする方を向いてしまった。


 そこにはルシエラと同じくらいの年齢と思われる少女の一団がいた。

 皆、髪や目にハッキリと魔力傾向が出ているので間違いなくアクリラの生徒で、きっと討伐旅行か何かの帰りなのだろう。


 そして、その声の主と思われる少女の表情はルシエラの顔を見て確信に変わる。


「あ! やっぱり、ルシエラじゃない! 昨日、宿のお風呂で見かけてもしかしてと思ってたけど、どうしたのその格好?」


 やはりあの時、知り合いがいたのか・・・


 流石、アクリラの隣町だけあって、当然のように生徒がいる。


 そして最悪なことに。



 ゾクリ・・・



 モニカの中を言葉にできない寒気が駆け抜け、同時に今まで経験がないレベルの”悪意を持った視線”がこちらへ向いたのを肌で感じた・・・・・・


「ひ、人違いだやー!!」


 ルシエラが叫ぶようにそう言い残し、俺達の手を握りしめ、走るように凄まじい勢いで人混みをかき分け、近くの路地へと逃げ込んだ。



「へんなの・・・どうしたんだろ?」


 後に残されたその少女は、友人の奇妙なその行動を訝しがるようにそう呟いた。




 ヴェレスの街の中を、できるだけ地味な路地を選ぶように駆け抜ける、モニカとルシエラ、そしてロメオ。


 2人と1頭は、まるで隠れ潜むように周囲を警戒しながら誰もいないところを選んで走っているが、一向にその視線が消える気配はない。


『くそっ・・・どこから見られてる!?』


 地味で細い路地に入れば流石に視線の数は減るが、それでもわずかながらも誰かに見られているような薄ら寒い感覚があった。


 俺でもここまではっきりと分かるということは、モニカはもっとだろう。


 その証拠にモニカの額から冷や汗が飛び出し、混乱と動揺が全身を駆け回っていた。


「あああ・・しくじったあああ・・・」


 走りながらルシエラが悔しそうにそう叫ぶ。


 今の反応から、ルシエラの名前が相手にバレていることはわかったが、皮肉なことに同時に変装が有効であることも証明された。


 あの時、名前が呼ばれるまで俺達の姿に相手は全く気がついていなかったのだ。


 だが、不運なことに俺達はこの隠匿において最も出会ってはいけない人種に出会ってしまった。


 すなわち俺達の変装を見破れる力量があって、且つルシエラのことを知っている人物だ。



 そして一旦認識されてしまった以上、新たに変装するにしても、まずはこの視線を切ってどこにいるかわからない状態にしなければならない。


 だが、どれだけ人気のない場所に行っても、背中に感じる視線が完全に無くなることはなかった。


「どうするの!?」


 焦るモニカがルシエラに対策を乞う。

 一方のルシエラも焦っているらしく、走りながら顎に手を当てて努めて冷静に思案をするも、その額からはモニカ同様冷や汗が流れ落ち、顔色は悪い。


 そして彼女のそんな姿を見て、俺達の中の不安は更に膨らんでいった。


「イチかバチか・・・・ユリウスで、アクリラに逃げ込むわ」


 ルシエラの提案は、最大の戦力であるユリウスを投入するというもの。


 普通に考えれば、それで問題ないと思われる。

 ユリウスの飛行能力であれば、アクリラまで30分はかからないだろう。


 逃げられればの話だが・・・


 だが無情にも、その案に暗雲を掛けるような物が視界に映り込む。


「ルシエラ! 上!」

「げっ!?」

「マジかよ・・・」


 ”それ”の気配に気がついたモニカが注意を促すようにそう叫び、上を見たルシエラの顔が不快にゆがむ。


 いつの間にかこの街の空に、6機もの”門番ゴーレム”の巨体が浮かんでいたのだ。


 そして、それだけでなく不気味な槍のような装備が追加されているなど、その姿はピスキアで見たものよりも攻撃的で、明らかに戦闘行為を想定しているものだった。


 しかも内3機は上空に待機して、空に逃げる獲物を待ち伏せするかのように布陣する徹底ぶりで、明らかにこちらが飛行能力を持っていることを見越しての準備だ。

 

 門番ゴーレムはカシウス製でないことがせめてもの救いか。


「だ、大丈夫か?」

「・・・流石に一対一で止められることはないけれど、あの数じゃ厳しいわ・・・」


 厳しいか・・・これは戦闘はダメだな・・・


 さらに、これで相手は俺達を本気で消しに来たことが明らかになった。

 一応、情報はこの街で止める気はあるみたいだが、ある程度の情報流出は覚悟の上なのだろう。


 おそらく一緒にルシエラがいることで、アクリラに逃げ込むことを悟ったのだ。


「モニカ、ロン、走りながら作戦を説明するわ!」


 ルシエラが覚悟を決めたような表情でそう言い、俺達も無言で頷く。


「まず、他がどうなろうと、あなた達がアクリラの行政区の境界線を越えれば、それで勝ちよ!」

「うん」

「了解」


 俺がピスキアで作った脳内マップを引っ張り出す。

 重要なのはアクリラ市街ではなく行政区の境界線だ。

 そこから先はアクリラの自治区域で、治外法権、相手がそこを越えて追ってくるには相当な政治的リスクが伴うと予想される。


「だが、相手がそこで止まってくれる保証は?」

「本気で世界に戦争ふっかける気でもなければそこは越えられないわ」


 なるほど世界と戦争したくないから俺達を消したいのに、それで世界と喧嘩するようでは本末転倒ということか。


「だが、ちょっとライン越えたくらいだと、こっそり攻撃されるんじゃないのか?」

「安心して、絶対に・・・・そのラインは越えられないから!」


 なんだか分からないが、ルシエラのその言葉には相当な自信を感じた。

 そして俺達も今はその言葉に縋るしか無い。


 幸運にも”それ”は意外と近かった。


 アクリラの街までは100km近くあるが、行政区の境界線までなら30kmほど南下するだけで到達する。


 問題は、この30kmをどうやって越えるかだ。


「で、どうやってそこまで行くんだ!?」


 俺が作戦の肝心の部分を聞く。


「まず、どこか広いところでユリウスを召喚するわ」

「「うん」」


「それに乗って、3人で・・・・行けるところまで行く」

「「うん」」


「それで、ユリウスが門番ゴーレムに追いつかれたら・・・」

「「うん」」


 そこでルシエラが走りながら凄い表情でこちらを睨んだ。


私達・・・が出来るだけ時間を稼ぐから、その間にあなた達・・・・だけで境界線まで飛びなさい!」

「「え?」」


「安心して、あなた達の【飛行スキル】なら、あいつらから一人で逃げ切るくらいならどうにかなるわ、その間の隙は私とユリウスが作る」

「でも、それじゃ!?」


 モニカが懇願するようにルシエラを見る。

 

「それじゃ・・・まるでルシエラを囮にするってことになるぞ!?」


 驚いた俺が確認するように問いただす。

 だが、そう聞き返されたルシエラは悪そうにニコリと口元を歪めた。


「”まるで”じゃないわ、私が囮よ」


 そう言い切った彼女の笑顔は、とても清々しいものだった。


「でもそれじゃルシエラは!?」


 普通に考えれば、俺達の情報を闇の中に放りたい連中が、”俺達”という秘密情報を持ったルシエラを残しておく理由はないだろう。

 消せる時にそれを思い留まったりはしないはずだ。


 だが、


「何を勘違いしているの? 囮になるとは言ったけど、命まではあげないわよ? あなた達が逃げ切れば、相手も”取引”に応じざるを得なくなるわ」

「・・・とりひき?」


「”バラされたくないならルシエラを返せ” これに相手も応じるための材料が必要になるわ、つまりあなた達が”逃げ切れ”ば私も安全なのよ」


 そう言い切った彼女の表情は得意げなものだったが、顔色は青かった。


 そしてそれによって、モニカの中にさらなる不安が渦巻くのを感じた。

 だが、今はそれに従うしかない。


『モニカ・・・覚悟を決めろ』

「・・・ロン?」


 俺が短くモニカにそう言う。


『俺達の”明日”は、”今日”逃げ切れるかにかかっている、門番ゴーレムは速度だけならユリウスより速い、ルシエラを気にして逃げ切れる相手じゃないぞ!』

「・・・でも」


 モニカが、まだ何かを迷うように前を走るルシエラを睨む。

 その瞬間、ルシエラの中で何かの魔力が渦巻くのを俺とモニカが検知する。


 そしてそれは、ユリウスを召喚するための準備であることも知っていた。


『それに、彼女を心配できるほどまだ・・・強くはないだろう』

「・・・・うん」


 モニカから不本意ながらも了承の感情が流れてくる。


 ”今”ルシエラの心配をするのは分不相応だ。


 そしてこれは、”いつか” 彼女を心配できるくらい強くなるために必要な”逃亡”だった。


 それに納得こそできないが、それでも俺達はそう腹に決め、次の行動を逃すまいとルシエラの魔力の動きに集中する。


 そして、俺達がユリウスの召喚が可能なほど開けた広場に飛び出すと、すぐにルシエラが準備していた魔法陣を一気に発動させた。



 凄まじい勢いでその大きさを広げる魔法陣。


 俺達の目に高エネルギーの青い光のラインが丸い形を取っていく様子が飛び込んできた。


 そしてその魔法陣が完成し、その中から巨大な竜が飛び出す・・・・・



 ・・・・・まさにその瞬間・・・・



「「「!?」」」


 耳をつんざくような轟音が周囲に響き渡り、ルシエラの魔法陣が強烈に光ってその形を崩した。


 さらにそれだけでなく、壊れた魔法陣を伝って魔法を発動させていた術者ルシエラにその猛烈な反動が降りかかる。



「うぐっ!?」


 その力を一身に受けたルシエラがまるで弾き飛ばされるように宙を舞い、空中で痛みに呻く。


 その直後、広場の石畳の上にドサリと打ち付けられ、まるで人形のように地面を転がった。


「ルシエラ!!」


 その光景に気がついたモニカが慌てて駆け寄る。


「・・・うぅっ・・・」


 地面でうずくまり、痛みに呻くルシエラから、肉が焦げたような異臭が立ち昇り、さらに口から僅かに血が漏れる。


 どうみても無事ではない。


『何が起こった!?』


 俺が慌てて今の一連の出来事を、視覚記録から取り出して精査する。

 それを見る限り、ルシエラの魔法は最後の瞬間まできっちり問題のないものだった。


 だが、それが発動される刹那、なぜかそれが失敗した。

 明らかにミスではない。


 むしろ魔法が完成する瞬間を狙って、何者かが横槍を入れたかのように見えた。


 一体誰が? なんて思ったりはしない。


 

「!?」


 モニカがルシエラを抱きかかえたまま、首を動かして周囲を見渡す。


 いつの間にか俺達の周りに、明らかに・・・・堅気ではない風貌の、2mほどの大きさの人影が並んでいた。


 それは身を隠すようにフード付きのコートで全身を覆っていたが、奇妙なくらい全員の体格が同じだ。


 そして、彼等の包囲が完全に完成すると、まるでこれから行う戦闘の邪魔であるかのようにコートを脱ぎ捨て、

 そのコートの下から現れた盾と剣を構え姿の騎士達に、モニカが一瞬目を見開き、すぐに細められる。


 モニカの中に渦巻いた感情は、最初は驚愕と僅かな納得の感情、そしてそれは次第に否定と決意、そして怒りに置き換えられていった。


「クーディ・・・・」

『・・・モニカ?』


 小さく発せられたその言葉に込められた膨大な量の感情に、俺が圧倒される。


 そして周囲を囲む者達が一斉剣を抜き放ちこちらへと向けた。


「・・・・じゃない」


 怒りの込められたその言葉を、まるで周囲の全てに宣言するかのようにモニカが呟く。


 その目は、モニカの大切な存在クーディと同じ顔を持つ、騎士の姿のゴーレム達へ向けられていた。


 そして、一瞬にして身に纏っていたフロウを棒状に戻すと、全身から無駄な力をすべて抜き去ってまっすぐ前へと構える。


 その表情は”本気の狩人”のものだった。





ↈ₭ ⊠ヒット!! ⍋⍌■⏂▒⍧魔力妨害システム作動!」

∰≝⌖↸⌂₼⅁⋣⍝システムは正常に動作!! ⌧␥‡∇⎆ℰ↻⋒鮭は沈黙しました


 ”現場”から1kmほど離れた場所に建つ、背の高い建物の屋上に設けられた”指揮所”に最新のデータが集められ、即座に末端に向かって次々と指示が飛ばされる。


 さらにその中の一体が、重要な指示を仰ぐために指揮所の端に立ち”現場”を単眼鏡で眺める”人間”へ声をかけた。


∀ↅアルファ⊿⎅⇎☴≽⊀包囲は完了!、♖▙⎈♹⍋⌽いつでも攻撃できます


 すると、声をかけられた女である”黒舌のジーン”は、単眼鏡から目を外し、指揮官ゴーレムたちを見つめた。


「姉御・・・」


 それを見守っていた、彼女の仲間から思い留まるように願う視線が飛ぶ。

 それに対して彼女ジーンが僅かに逡巡の表情を見せたのは、彼女の中にまだ迷いがあるからなのか・・・


 だが既に状況は動き出してしまった。


 ジーンは一瞬だけ目を閉じて再び”本職暗殺者”の表情を作る。


 そして言い間違えないように、静かに、そしてハッキリとその命令を下した。


⎈♹⍋⇄∰攻撃開始


 ジーンが短くそう言うと、それを聞いた指揮官ゴーレムたちが即座にその言葉を通信機に向かって叫んだ。

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