1-12【南へ! 5:~魔獣狩りの巨刀~】


 モニカが棒状のフロウを構え一歩だけ前に踏み込む。

 するとそれを見たヒドラが胴体を大きくしならせて後に飛び退いた。


『かなり動けるな』


 その動きに俺が素直な感想を述べる。


 サイズがサイズだけあってかなりの速度だ。

 その辺はさすが魔獣といったところか。


 しかし俺達に対しては相変わらず凄い警戒だ。

 こんな小さな子供の何がそんなに怖いのか。


 だが、そんなことを考えていた俺と違って、モニカはその退きを”隙き”と見て一気にヒドラに向かって駆け出す。


 それを見たヒドラが牽制のために口を開けて威嚇するも、そんなものでは本物の”狩人”は止まらない。

 俺が調整した筋力強化によってまるで風のようにモニカが疾走し、ヒドラとの間に空いていた距離を詰める。


 だがヒドラがなんとかそれを食い止めようと、首の幾つかが飛んできた。


『左右から一本ずつ、右のほうが早い』


 俺の情報をもとに、殆ど”勘”だけで姿勢を変えその攻撃をやり過ごす。

 そして俺達の身長の数倍の長さまでフロウを薄く長く伸ばすと、その真っ黒な大剣を突き出された二本の首に向かって振り下ろした。


ガキュ!!


 という何とも言えない音が鳴り、ヒドラの2本の首はあっけなく切断される。


 だが、モニカの表情は険しくなる、今切断したのは首の中でもかなり細いやつだった、なのに想像していたよりも遥かに硬かったのだ。


 これだと太い首には通用しない。


 モニカの顔に冷や汗が滲む。

 どうやら不利を悟ったらしい。


 そしてそれを見逃さなかったヒドラが、猛烈な勢いで噛み付いてくる。


『右、右、左、右、左、上、右・・・』


 俺が必死に索敵機能を全開にしてモニカに警告を送り続ける。

 だが、あまりに首の数が多いせいで、ほとんど何処から飛んでくるかしか伝えられない。

 しかもそれに気を取られるせいで、筋力強化などの調整に手が回らなかった。


 それでも、モニカは俺の情報から適切に判断してヒドラの顎を避けていく。

 更に俺の調整なしでも適切な筋力強化を行い、次第に余裕が出てきたのか、攻撃に合わせて小型の魔法陣を展開して攻撃を行えるまでに持ち直した。


 それでも今のモニカが作れる火や雷程度ではちょっとした牽制にしかならない。


『やっぱり近接では厳しいか』


 いくら筋力強化があるとはいえ、数十倍の体格差はいかんともし難かった。


 ここは距離を取って砲撃に切り替えるべきだろう。

 だが、モニカはまだ諦めてはいないようだ。


「考えはある!」


 そう言って次々と飛んでくる首をフロウの大剣でいなしながら、大きくジャンプする。


『え!? 考えって何!?』


 モニカが何を考えているのか分からなかった俺が思わずそう口走ってしまったが、それでもモニカから飛んでくる思念を受け取って無意識に行動を起こしていた。


 まず今まで持っていたフロウを空中に放り投げ、防御のために体に纏わせていたもう一本分を棒に戻し、それで空中に投げたフロウを掴む。

 

 そして空中で掴まれた方のフロウはその形を大剣から、純粋な”刃”へと変形させる。

 大剣状態では柄に使ったり刃を支えるための”峰”にかなりの体積を使っていたが、今は一本分まるまる刃に使えたおかげで、その大きさは巨大な魔獣を両断可能なものになっていた。


 更にその刃の形は、細い首を切った時のデータから予想された最適な形に整えていた。


 細かい連絡なしに、これをほぼ無意識に行えたのだから、今の俺達の連携はかなり強力なものになっているといえるだろう。


 そして、モニカはその”巨刀”を力の限り振りかぶり、ヒドラの一番大きな首に向かって真っ直ぐ叩きつけた。


 ガシュッ!! っという大きな音を立てて刃が巨大ヘビの頭皮に僅かにめり込む。


 だがそれまでだ。


 予想通りというか、当たり前というか、モニカ自身が出せるパワーではどこまで強化しても大型魔獣の分厚い皮膚は突破できない。

 むしろ、刃を大きくした分だけ力が分散してしまっていた。


 その様子を見た蛇が”にやり”と笑う。


 どうやら、モニカが決定的なミスをしたと思ったようだ。


 だが、この攻撃の”本当の姿”はここからだ。


「ロン!!!!」

『おりゃあああああ!!!!』


 俺が全神経を傾けて、魔法を発動させる。

 すると、フロウの巨刀の刀身に沿って真っ黒な魔法陣が一列に発生した。


 続いてそこにモニカが全力で魔力を叩き込む。


 展開した魔法陣の内容は、一定方向に力を発生させるという簡単なもの。

 これ単体で使われることは殆ど無く、ただ魔道具の簡単な仕掛けなどに使われる程度だが、今回はそれを刀身に沿って大量に、それも”安全回路”を外してどこまでも力をかけられるようにして配置した。


 そんなものにモニカが全力で魔力を流せばどうなるか?


 その答えは熱したナイフでバターを切ったかのように魔獣の中を無抵抗に進んでいく刀身だ。

 

 そしてその刃は、ヒドラの最大の首を唐竹割りにしただけでは止まらずに、そのまま胴体を一瞬で真っ二つに切り裂いて地面の中にめり込んだ。


 だがそこでも刀身は止まらず、地面の中を猛スピードで進んでいく。

 そして俺達の制御を離れ、そのまま・・・


『なっ!? あぶね!?』


 慌てて俺が魔法陣を消してフロウの形を変形させて形を崩す。 

 そのおかげで地面の途中で刃は止まったが、もし一瞬でも遅れていたら剣だけできっとグルン!と回転したことだろう。

 そうなれば、もちろん俺達もまっぷたつだ。


「うっ、あぶなかった・・・」


 モニカが冷や汗をぬぐい、思い出したかのように心臓がバクバクと不満を垂れる。


『たしかに、今のはちょっとやばかった、初めてサイカリウス相手にエンジンをぶち撒けたとき並にやばかった・・・』

 

 俺が素直な感想を述べ、モニカが油断なくヒドラの残りの首を睨む。


「はぁ・・はぁ・・・死んだ?」

『この状態で生きてたら流石に引くぞ』


 モニカが恐る恐る、目の前から左右に広がるように横たわるヒドラの死骸の様子を確認する。


 ヒドラの体は、一番大きな首から長い胴体の先まで綺麗に真っ二つになっていた。

 首を数本落とされても平気なヒドラも、流石に共用部分の胴体が真っ二つでは生きてられないようだ。


「どう感じた?」

『遠くから”ロケットキャノン”の方が簡単で安全だった』

「・・・やっぱり」


 モニカが納得顔で頷づく。


 やはり近接のリスクは結構大きい。

 それでも収穫はあった。


『だがこの攻撃なら、ルシエラにも止められないぞ、モニカの得意な近接だし、応用も利く、何より爆音がしない』

 

 俺が今回得た収穫を列挙する。

 こうしてこの攻撃の利点を挙げると、結構いいものを得たような気になるから不思議だ。


「お疲れさま」


 スタッ!っという音を立てながら、ルシエラがモニカの横に着地した。

 肩には依然として気を失った少年が垂れ下がっている。


 そして気のせいかいつもより殺気立っていて、濃密な魔力の残滓が漂っていることから、モニカの状況次第では何時でも瞬殺できる準備をしていたのだろうことが窺えた。


「ルシエラ・・・どうだった?」


 モニカが、少し緊張気味に出来栄えを問う。

 なんというかテストの採点待ちみたいな空気だ。


「お説教と褒めがあるけど、どっちが先がいい?」


 そう言ってニコリと笑うルシエラ。

 その顔は妙な迫力を伴っていて、ちょっと怖かった。


「あ・・・お説教の方を先でお願いします」

「・・・うん、褒めるのは後でいい」


 俺がスピーカーをオンにしてルシエラに意思を伝え、モニカもそれに同意する。


 すると、ルシエラは深く一息ついて、肩に背負っていた少年を地面に下ろし、険しい表情で俺達を睨んだ。


 そして一言。


「死にたくないなら、実戦で魔法陣の安全回路を外すのは二度としないで」


「はい・・・」

「ごめんなさい・・・」


 それは言い訳のしようがない俺達のミスだった。

 もし、あのまま一瞬で止め時を失っていれば、俺達は今頃目の前のヒドラともども真っ二つになって転がっていただろう。


「わかっていると思うけれど、もっと複雑な魔法陣でやったら、真っ二つどころではないわよ、今後のためにも、適切な安全回路が組み込めるまで、あの攻撃は”失敗”として胸に刻みなさい」


「はい・・・」

「すいません・・・」


 ルシエラの顔は物凄く真摯で、俺達のことを心配しているのが伝わってきた。

 それくらい危険な行為だったのだろう。


 今後のためにも、できるだけ早く安全回路を組み込んでも機能できるように改造しなければ・・・


「まあ、お説教はそれだけよ」


 その瞬間、ルシエラの表情が柔らかいものに変わる。

 どうやら問題はそれだけだったようだ。


 と、なると次は”お褒めの言葉”の時間だ。


「モニカは魔力操作とタイミングがかなり改善されていたわ、それとロンもちゃんと魔法が発動できていたじゃない、二人ともよくやったわ」


 よくやった。


 その言葉を聞いた瞬間、モニカの顔がニヘラっと緩む。

 実際、今回のモニカの動きはかなり良かった。

 俺の手が回らなかったときも、きっちり自分で調整してのけたので、俺も魔法を放つ準備ができた。


 そして、俺も課題だった自発的な魔法発動を実戦でクリアできるまでになっていた。


 それはこの”試験勉強”で俺達が確実に成長していることの証だった。



「ところで、これからどうする?」


 反省とご褒美が終わったところで、俺は目下の状況についての相談を提起する。


 すると、モニカとルシエラが揃って周囲を見渡した。


 平原に横たわる巨大なヒドラの死骸。

 そして未だ気を失ったままの少年。


 それに何より・・・


「やっぱりこの蛇、変だったよね」


 モニカが、ヒドラの死骸を足で突っつきながらそう言った。

 いつもなら、肉の品定めを開始する段階だが、いくらモニカでもこんな奇妙な生き物の肉には興味がない感じだ。


「なんで、モニカをあれだけ意識してたんだ?」


 もちろんモニカを警戒する生き物自体は珍しくはない。

 だがこのヒドラのそれは明らかに異常だった。


 頭のいい”グルド”ですら、他のアントラムを倒すまでは警戒していなかったのに、それより強大で頭の悪そうなこいつが、最初からかなり警戒していたのはちょっと説明がつかない。


「たしかに変な反応だったわね、まるで以前にモニカかそれに似た存在から、怖い思いをしたみたいに・・・」


 ルシエラはそう言うと、何かに気づいたかのように周囲を見渡す。

 あの巨大な怪物が恐怖するような存在、そんなものはそれほど多くはない。


 そしてその中で、モニカに関連するようなものとなると、それこそ・・・


あいつら・・・・か?」

あいつら・・・・? って、ひょっとしてこの前見た?」


 どうやら、モニカもそれに気づいたらしい。

 だが、まだその根拠には思い至らないようだが。


「だが、”あいつら”とモニカに類似性なんかあるのか?」


 確かにどちらも”カシウスの作品”ではあるが、その中身は全くの別物のはずだ。

 さらにカシウスの魔力をベースに動く”あいつら”と、フランチェスカの魔力をモデルに動くモニカでは魔力的にも、物質的にも類似性を見出すのは無理があった。


「分からないわ、だけど”類似性”がないと判断するのは早計よ」


 だがルシエラは何かが引っかかるようだった。

 その様子を見て俺も冷静に考える。


 俺のモニカに関する情報はカミル由来であるが、肝心の彼はモニカについて完璧に知っているわけではない。

 彼が知っているのは、あくまで”失敗”したモニカの姉達のことであることに注意しなければならない。


 もし、彼の知らない”何か”が”あいつら”と何らかの類似性を持たせていて、その”何か”をこのヒドラは感じ取った可能性だって十分に考えられるのだ。


 だがそう考えると、”あいつら”はかなり近いところにいることになる・・・・


「急いだほうがいいかもね」


 ルシエラがそう言うと、地面に横たわっていた少年の肩を叩く。


「どうするの?」


 モニカが何事かと聞くと、ルシエラがこちらを向いた。


「モニカ、このヒドラの報奨金ほしい?」


「でも時間かかるでしょ?」


 モニカが疑問を問いかけ、それに俺が補足する。


「そもそも、どのヒドラかもわからないしな、懸賞金が付いてない可能性だってある、まあ、それでも持っていけば何らかのメリットは有るだろうが、時間がかかるのは間違いないだろうし、それに何より絶対目につく」

「じゃあ、いらない」


 リスクを示すとモニカはあっさりと権利を放棄した。

 そしてそれを確認したルシエラの少年を叩く手が強くなる。

 それと同時に治療用と覆われる魔法陣を展開してそれを押し当てる。


「どうするの?」

「あの馬車が何処かに着けば、このヒドラの目撃情報も私達が残ったこともすぐに知られるわ、この死骸も隠せないし、だからこの手柄、全部この子におっ被せましょう」


「え!?」

「そりゃいくらなんでも・・・」


 それにおっ被せられるこの少年本人をどうやって説得するんだ?


「う・・・うん?」


 少年の目が僅かに開き、意識が戻ってきたようだ。


「おねえ・・・さん・・・大丈夫?」


 気がついてから開口一番、気を失う前に庇ったルシエラの安全を確認したのは見上げたものだと俺は思った。


「ありがとう、君のおかげで助かったわ!」

「・・・え!?」


 突然のルシエラのその言葉に少年が目を丸くして驚いた。

 一方の俺達も、ルシエラのそのわざとらしい演技に言葉を失う。


 なんでも少年はルシエラをかばって吹き飛ばされた後、人が変わったかのように豹変し、いろいろあって突然謎の力を発し、更にいろいろあって、持っていた剣から凄まじいエネルギーを出しながらヒドラを真っ二つにしてしまったらしい。


 そしてその直後、ヒドラの息の根が止まっていることを確認すると、倒れ込むように気を失ったんだと。


 どうやったら、こんな嘘っぱち信じられるのか。

 だが・・・


「僕が・・・そんな・・・」


『あれ? この少年、信じかけちゃってるぞ?』

「・・・ええ・・・」


 俺達が心の中で引いている中、憐れな少年は手に持った剣と、真っ二つの死骸を交互に眺めていた。

 荒唐無稽な話であるが、実際に真っ二つの死骸を見せられてはどうしようもないのだろう。


「ねえ、あなたは命の恩人よ! ぜひ名前を教えて!」


 ルシエラの三文芝居はなおも続く。


「え・・・僕の名前?」

「そう!」


「ええ・・・っと、僕は・・・エリク・・」


「エリクね、一生忘れないわ!」


 本当に一生忘れないのだろうか?

 明日の朝には怪しそうだ。


 そして少年がまたヒドラの死骸に向き直ったところで、モニカが少し心配そうにルシエラの袖を引っ張り耳打ちする。


「・・・ねえ、いいの?」

 

 さすがに話を盛りすぎだ、このままでは彼の人生に大きな影響が出るだろうと感じたモニカが心配したのだ。

 するとルシエラからとんでもない答えが。


「・・・私を突き飛ばした、ちょっとした仕返しよ、少しの間、ありもしない力に踊ってもらうわ」


 その答えに、モニカが苦笑する。


『うわー、ひでー、突き飛ばされたこと完全に根に持ってやがる・・・』


 モニカから同意の感情が流れてきた。


 きっと彼は暫くの間、過ぎた栄光と幻の力に振り回されるに違いない。

 

 ひどい話だとも思うが、C ランク魔獣の報奨金で我慢してくれというほかないだろう。


 そして、どこか俺達の知らない所で頑張ってくれ。


 俺は何とも言えない表情で手の中の剣を見つめる彼に心の中でそう呟いた。




 ・・・・この”エリク”という少年が、後に俺達の人生に大きく関わってくるとも知らずに。





 それから俺達は暫く道なりに進み、別の本街道に合流したところで、そこを走っていた別の高速馬車に拾われた。


 かなり時間をロスしてしまったが、これでなんとか次の街には辿り着けそうだ。


 ちなみにあの少年は、馬車の中で死んだように眠っている。

 よほど怖かったのだろう、その顔には言葉では表現できない安堵が浮かんでいた。

 


「あれがヴェレス?」


 地平線の先に見えてきた街の姿に、モニカが窓に顔を付けて食い入るように見いっていた。


 それはこの近辺ではどこにでもあるような中規模の街だったが、ちょうど夕日が重なる時間と位置関係のようで、オレンジ色に浮かぶ街の建物の影はとても幻想的だった。


「あー、やっぱり間に合わなかったか・・」


 ルシエラが残念そうにそう零した。


「馬車、乗れなかったね」


 もう遅い時間なので、アクリラへ向かう高速馬車はもう出ていない。


「仕方ない、今日はあそこで泊まりましょう」


 そう言ったルシエラの顔には少々不安が滲んでいる。

 ”あいつら”が近くにいるかもしれない状況で、足止めを食らいたくはないのだろう。



 そしてそんな心配を抱えたまま、俺達を乗せた馬車はヴェレスの街の馬着き場へと滑り込んだ。





・・・・・・・・・


・・・


・・











・・


・・・


・・・・





 そこから数十kmほど西の空を、銀色・・・の鳥が飛んでいた。


 だが鳥といっても、鳴きもしないし、群れたりもしない。


 全身が機械で出来たその鳥は、たった1羽で空を飛びながら、ひたすら与えられた任務のために6つの目で周囲の様子を見ながら、内部に搭載された”観測機”を正常に稼働させるため高い高度を維持し続けていた。


 この観測機は非常に感度が高く低空ではまともに使えない、さらにその鳥に搭載された魔力回路をほぼ全て切って、魔力の影響を極限まで減らさなければならない。


 だが、それでも僅かではあるが目的の”反応”は検知できていた。


 それはあまりにも僅かな反応で、それだけではほとんど何も読み取れない。

 それでも沢山の仲間と連携することでそれまで見えなかった物が見えたりもするのだ。

 

 そしてその時、”鳥”が検知していた反応に僅かな変化が観測された。


 すぐに搭載されたシステムが緊急性を見い出し、定時報告ポイントにたどり着くと、即座に観測を打ち切って通信用の回線を開け”仲間内”にしか使えない言葉で報告を試みる。




Pプローブ23119よりCセンター3へ、応答願います》


 ・・・・雑音・・・


《C3よりP23119、回線を固定した、報告を》

《こちら、P23119、現在命令番号14−12の空域α32から33へ飛行中、対象反応にノイズを観測、”魚”は人口密集地に侵入した模様》

《了解P23119、ノイズが混じった時間を報告せよ》

《ノイズが混じったのは、MMT-2:18時47分26秒322、観測ポイントは飛行計画α32.51付近》

《了解P23119、データベースに送信した、追って指示を待て》

《P23119了解、もうすぐα33ポイントに到達するが飛行計画はαのままでいいか?》


・・・・雑音が混じる・・・


《すまないP23119、うまく聞こえなかった、もう一度頼む》

《まもなくα33を通過するが、そのままα34へ向かってもいいか?》

《質問は理解した、P23119、貴機はそのままα34へ向かえ、その後は予定通り飛行計画αを完遂した後、補給のために戻れ、帰投地点はその時に指示する》


・・・再び雑音が混じる・・・・


《こちらP23119、飛行計画αを続行し、予定通りα90に到達後、指示を仰ぐ》

《こちらC3、P23119、緊急命令、その場で指示を待て、飛行計画αは破棄》

《了解、α33付近にて旋回を開始する》

《続報、他機のデータでもノイズが観測された、観測時間のズレから現在目標ポイントを算出中とのこと》

《P23119了解、どうやら”魚”は”網”にかかったようだな》


・・・大きな雑音、それと同時にアラームが鳴る・・・・


《緊急指令:こちらC0よりプローブ全機へ通達、現状の偵察任務を全て中断し、人口密集地名”ヴェレス”へ向かえ、予想通り”魚”は”鮭”に連れられて”アクリラ”へ向かう模様、繰り返す、攻撃部隊支援のために全ての偵察プローブは至急”ヴェレス”へ向かえ、追ってそれぞれの司令から対象区域の割当が届く》


・・・雑音、同時に回線が切断されるブツッという大きな音が鳴る・・・


《こちらC3、そういうことだP23119、直ちに方位を094に取り、52km飛行しろ、そこを新しいポイントα0へ変更する、新たな飛行計画は現在調整中》

《P23119了解、1時間でポイントに到着する、偵察内容は魔力観測のままか?》

《それでいいが、状況によっては光学観測を頼むかもしれない、それと先行観測班からヴェレスのカラスは攻撃的との情報が入っている、貴機はカラス型だから十分に注意されたし》

《了解した、地元のカラスからは十分距離を取る》

《仕事は多いぞP23119、”魚”は網の中に入った、これから”水揚げ”だ》


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