第3話 ミケ、しばしの住処を決める
さすがここに住んでおるだけあって、若いのは色々と物知りじゃな。おかげで我も他の「ノラネコ」とやらと同じ動きが出来る。
『昔はここにヒトのいいじーさんが住んでたんだよ。その頃はここに来れば飯が貰えたんだが、今はこうやって追い出されるから近寄るな』
棒きれを持ったヒトが我らを追い立ててきおった。何もしとらんし、敷地にも入っておらんぞ! 失敬な。
『ふむ。あの光るものはなんじゃ?』
目がちかちかするわ。
『俺っちたちが近寄らないようにするまじないらしいぞ。昔みたいに中に入ったら、棒きれで叩かれたくらいなら可愛いもんだ。中にはでかいイヌけしかけられた、とか、人間の集団に捕まったとか色々聞くぞ』
厄介じゃな。
どこで飯を貰えるか、というのは大事じゃ。危険な所も教えてもらえれば、我とて動きようがある。
何となくじゃが、このあたりで落ち着きたい気分になった。
若いネコマタはどうやら、他猫に舐められておるようじゃな。我が行けばあっさり解決する問題も、あ奴は頼らん。
まぁ、我の方が新参猫だしの。我も舐められておってもおかしくない。
『旦那、実力行使だけは止めといて欲しい。後々大変だから』
『ふむ。おぬしがそういうなら、我は手出しせん』
『た……助かる』
『ただ、我に何かしてきたら、しっかりと返すがの』
『嫌な予感しかしねぇ!』
舐めてもらっては困るからの。
ここいらをまとめるボスは、どうやら「イエネコ」とやらに恋をしておるらしい。そして、そ奴が不平でも言おうものなら、それを理由に他猫を排除するとな。
まとめ役としては如何なもんかの。
我はそのまとめ役にも「イエネコ」にも近づかないでおくか。
『莫迦には構わず、今日の飯を探しに行くぞ』
『旦那ぁ……あいつの腰巾着が』
おや、おったのか。まぁよい。その時は我が躾をしてやる故。
『あんた絶対わざとだろ!!』
何のことかの。
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