第2話 ミケ、自分以外のネコマタに会う


 どこにでもそこを取り仕切るようなネコはおる。そ奴らに挨拶すれば大抵驚くのは、いい加減にして欲しいものだの。「ネコマタだ!」はある容認するが「オスだよ! オス!!」と言われたとき、我はどうしていいか分からなかったぞ。オス以外の性別に産まれてきたことはないからの。

『そりゃあんた、オスでミケなんざ、めったにお目にかかれないもんさ』

 我と同じ尻尾が二つに割れたメスの茶ネコがあくびをしながら言ってきた。

『あたしが聞いた話だと、あんたの色合いのやつを人間たちは「三毛猫」っていうのさ。で、人間の話だと三毛猫のオスってのはなかなか生まれない上に短命なんだとさ。あたしの弟も三毛だったけどあっという間に死んじまったねぇ』

 我の名前は毛色、つまり三色あるからミケという名前がついたのだが、珍しいというのは初耳じゃ。

『あんたはあたしより長生きしてるってのに、その辺は疎いんだねぇ』

『我はもっと山奥で暮らして居ったからの。ここしばらくは我一匹ひとりしか居らなんだ』

『どんくらい山奥なんだい。……あんたはここに腰を落ち着ける気はないのかい?』

 すまぬな。何となくじゃが、もっと下に降りたい気分でな。……煩くなってくるのががんじゃが。


 さて、ここにも世話になったの。次の町へ行くとするか。



 ゆるりとヒトが多くなる町へと足を進めていく。何故か分からぬが、我はそちらに用がある気がするのじゃ。

『このあたりは夜も騒がしいのじゃな』

 今まで夜になればある程度静かになっておったが、ここは夜も煩い。クルマとやらも、それに似た煩いものも、夜だろうが動きまくっておる。


 ……あれは我の妖力も効かぬな。近づかぬに越したことはないの。


 それにしても空気が汚いの。欲にまみれたものが多すぎる。

 時折性根が清らからしいものにも会うが、特に夜は欲が強いヒトがおる。


 どこか静かな所はないかの。

『なら、俺っちの使ってるところにするか、ネコマタの旦那』

 誰じゃ。……我をネコマタというが、お主もネコマタではないか!

『俺っちは最近なったばっかりなんだよ。だから尻尾もうまく隠せねぇ。まぁ、俺っち程度だと、二つ目の尻尾が見える奴の方がすくねぇけどな』

 なるほど。我に色々聞きたいと見える。ねぐらが出来るのはいいことじゃ。しばらく世話になるか。


 若いネコだと思ったら、「ちょこれーと」とやらを人間に貰って苦しんだ後ネコマタになったと笑って言われてしまったわ。

『かようなこともあるのか?』

『逆に俺っちがそれを聞きたかったんだよ』

『ふむ。我はこの身体になってから、「たまねぎ」とやらを食したが何ともなかったの』

『「たまねぎ」も悪いのか?』

『うむ。我の連れ添いが「たまねぎ」を食した後死した』

『なるほどなぁ。で、あんたは?』

『その時には尻尾が二つに分かれておったから、何ともなかった』

『あんた、いつからネコマタなんだよ』

 そのようなこと覚えておらぬわ。


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