第4話 ミケ、若いのに色々教える


 あの莫迦ネコが色々手を回したらしく、我らに餌が回ってこなくなったわ。舐められておるの。

『飯を取ってくる故、少し待っておれ』

『俺っちも行く。久しぶりに狩りもいい』

 そうやって動けば、あの莫迦ネコの腰巾着どもがうろうろと……。


 わざとらしく大きい獲物を見せつけんでよいぞ。我らは食せる分だけで充分じゃ。

 でかい獲物を狩ってもな、食いきれんと黒い鳥がやってくるぞ? あ奴らは狡猾。相手にしてはならんからの。

『このあたりでいいかの』

 明日は雨のようだし、多めに獲物を捕ったがの。


 我ら捕るのはよくいる鳥や時折魚、あとは鼠じゃな。

 ところがあの莫迦ネコ……何を考えておるのか色の珍しい鳥だの、あの黒い鳥だの、大きな獲物だのを狙ってヒトに睨まれ始めておる。

『旦那、あそこに飯が置かれたぞ!』


 以前ここに来ると追い出されると言っていた家の前に、わざとらしく餌が置いてあった。

『やめておけ、あれは毒入り。我とて食ってしまえばお陀仏じゃ』

『うまそうに見えるのに』

 残念そうに言うても、事実じゃ。

『あの莫迦ネコがやらかしたせいであろ』

『なにしたんだ?』

『ここに来るまでに聞いたのじゃが、あまり人間の領域で悪さをすると、恨む人間が出てくるらしいからの』

『……納得』

『若いの、そういうのは覚えておいた方がよい。特に匂いは忘れるでない』

 こくりと若いのが頷いた故そのまま素通りしたわ。


 それを食して莫迦ネコの腰巾着が死したらしい。それすらも我らの性にするとな。

『阿呆か』

 莫迦ネコに向かって我は言った。

『あれが毒入りだと、我の後をついてきた輩は知っておるはずじゃ。我はこやつにせつめいしたからの』

『その食いもんに毒入れて放置したのはてめえらだろうが!!』

 威嚇しても無駄じゃ。それに莫迦も休み休み言って欲しいものじゃな。

『それに我らは触れておらぬ。匂いを嗅いだだけじゃ。それに、我らを嫌うところにおいてある餌を食うのは死にたいネコだけにしておけ』

『だ……旦那?』

 そういうものだと覚えておけばいいのじゃ。それも長生きのコツだしの。



 莫迦ネコは我らに構う暇がなくなったのはしばらくしてからじゃ。黒い鳥に狙われるようになったからの。

『黒い鳥は狡猾じゃ。敵に回すでない』

『おうよ。説明が欲しかったぜ』

 莫迦ネコが黒い鳥に襲われているのを横目に、我は若いのに説明した。こういうのを「じっちくんれん」とかいうらしいぞ?


 莫迦ネコが絡んでこないというのは、平和じゃな。前のように餌をねだりに行けるしの。

 我はあくびをしながら、そんなことを思った。

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