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「俺はブラックみたいになれているかな」

 今の俺は昔の俺が憧れた格好いい大人になれているだろうか。世界平和を揺るがす怪獣とは戦えていないけれど、誰かを守れる大人にはなれているだろうか。

「なーんてね」

 ぴちゃん、と天井から水滴が落ちる。湯船から上がった湯気が浴室内に満ちている。

「次はブラック来るかな」

 この入浴剤のストックはあと四つ。既に六個開けていて、三つのダブり以外はイエローとピンクと敵の幹部だった。ちなみに敵の幹部はシークレットで、まさかの一発目に引き当てた。まぁこいつ、敵だとしても憎めないキャラで結構好きだったから嬉しいんだけど。

「コンプまであと四つか」

 上手く行けばストック分でフルコンプできる。出来ればこれで出て欲しい。だってドラッグストアのおばちゃんが、ニヤニヤしながらレジを打ってくれるから。少しだけ恥ずかしいじゃないか。

 いや、待てよ。もしブラックならこんな時どうするだろうか。

「・・・諦めない心が道を切り開いていくものだ、か」

 ブラックのセリフを口にする。そんなセリフを言いながらド真面目な顔で入浴剤を買い占めている様子が浮かんで来て、ちょっと笑える。

 いや、待てよ。その様子、この前の

「俺のことじゃん」

 ある意味、ブラックに近づいている気がしなくも、ない? なんてね。

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