大人の嗜み、大人の愉しみ

カゲトモ

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 最近、とあるものにハマってしまった。年甲斐もなく、いや大人だからこそ買い集めてしまうわけで。大人げないとは分かっているけど、やめられない。

「あぁ~またお前かぁ」

 かぁぁぁ、とエコーが響く。チャプン、と湯船に浮かべたのはキャラクターものの小さな人形だ。

「もう三体目だぞ、俺のこと好きすぎか」

 浮かぶのは片手を挙げたネコのようなキャラクターだ。コイツは戦隊のマスコットキャラ的存在で、嫌に流暢に日本語を話すやつだった。

「われがぬしなど好いておるわけなかろう、なーんてな」

 しかも武士言葉を話す。顔が可愛いだけに子供ながらにギャップを感じずにはいられなかった。まぁそれが狙いなんだろうけど。

 俺が最近ハマっているのは、子供のころ大好きだった戦隊ものの入浴剤だ。球体の入浴剤の中に一体人形が入っていて、湯船に入れると周りの入浴剤が溶けて、人形が出て来るってやつ。

 少し前にドラッグストアで見つけてつい手に取ってしまって。湯船に浸かれる時間がある時はその入浴剤を入れるようにしている。それが最近の俺のひそかな楽しみだ。

「早くブラックでないかな」

 俺が好きだったのは孤高の戦士であるブラックだ。昔の戦隊ものと言ったら、レッド、ブルー、グリーン、イエロー、ピンクの五人が定番だったが、この戦隊ものはプラスしてブラックというキャラクターがいた。

 ブラックは中盤を過ぎた頃から仲間になっていて、その前は戦士たちの敵として登場していた。以前は敵の幹部の一人で、ライフルをぶっ放すようなキャラだったが、それは実は洗脳だったということが判明して、戦士たちが助けたんだよな。

 うーん、あの時のレッド達が本当に格好良かったんだよなぁ。それでも俺はブラック派だったけど。

「馴れ合いはしない、けれど救ってもらったこの命は、お前たちの為に使いたい」

 当時小学三年生だった俺にはあんまり言っている意味が分からなかったけど、なんかいい事言っていることだけは分かっていて。そんな格好いいブラックに憧れていたんだよなぁ。

 俺もいつかそんな大人になれたら、なんて可愛いことを思っていた時もあった。本気で変身できる時が来るかもしれないって思っていたし、その時は絶対ブラックが良いって思っていた。

だいたいレッドってキャラじゃないし、ブルーみたいにかっこつけもなんかヤだし、グリーンみたいなお調子キャラも違う。なれるなら絶対ブラック! そう思っていた。

 でもみんなそうだろ? 魔法少女になれるとか、スーパーヒーローになれるとか思わなかった? 不思議な力を手にして自己犠牲を払いながら平和を守るとか、絶対みんな一度は考えたことがあるに違いない。そう思うとみんな中二病を一度は患っているわけで。もちろん俺も。

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