第二十七章 ストラテジー

 するどい太陽の日差しが窓からこぼれる。その光にも慣れてマリアは気にした様子なく、胸元にある炎のように赤い石をなんども押さえていた。

 不安に思うことがある“あるじ”を心配げに見つめてジュリアは声をかける。


「姫様、大丈夫ですか」


「大丈夫だよ、行こうか」


 すでにマリアは朝食を食べ終えて正装を着込み、いつでも武道場へ行く準備が出来ていた。ジュリアは「どこか不安げでしたので」と言い直した。それほど不安げな表情を浮かべていただろうかと、再度「大丈夫」と答えて部屋を出た。そこにはギルとダミアン、ソロモンが待ち構えていた。


「ダミアンは試合に出るので、護衛としてギルについてもらうことにしました」


 マリアが王族らしく「うん、よろしく頼む」とギルに視線を向ければ、武官らしく頭を下げる。


「もちろん、俺はあなたの臣下ですから」


 にやりと不敵な笑みを浮かべたギルに、マリアは微笑んで見せた。歩き出せば後ろにソロモン達も続く。下女に案内されて武道館につけば、強い熱気が満ちていた。

 武道館に屋根はなく、太陽が直接ここへ届くし風も吹かない。さらに試合が行われる中心部にある場所をのぞいて、ぐるりと一周人の座れる席がある。つめられて座っており、人が多いことが分かる。

 その中で豪華な椅子が用意された場所だけは、一般の人は座れないよう特別な施しがされてある。バルコニーのようになっていて、特等席なのだろうと見て取れた。その椅子には皇帝バハードゥルが座っており、隣にはジャハーンダールがいる。

 何かをたくらんでいるのか。不気味な笑みを浮かべる彼に、マリアは身震いする。そのとき。


「王子様!」


 声をかけられて振り向けば、インディラとレイヴァンが立っていた。


「インディラ様」


「いよいよですわね!」


 嬉々としてインディラは楽しげであるが、マリアはやや疑念を抱く。表情は笑っているのに、目の奥が笑っていないのだ。それもマリアを敵視にしているのではないと感じ取れた。国が傾いていることには、気づいているのかもしれない。


「クリス王子」


 今度はアンドレアスが来て声をかけてきた。後ろには、ジェラールも一緒だ。


「アンドレアス様」


 マリアが名を呼んだとき、レイヴァンが不愉快げに眉を潜めた。それに気づいたの人物は数少なかったが、インディラは周りを気にもとめずに問いかける。


「どうかしたの」


「いいえ、なんでもございません」


 腑に落ちないのか。インディラはふたたび問いかけるが、かわされてしまう。ギルはニヤニヤと表情を浮かべた。ソロモンはどこかおかしげに肩を振るわせている。

 マリアは首をかしげたが、視線をアンドレアスに戻した。


「クリス王子、今日はよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 あいさつを交わせば、ジャハーンダールまでもマリアの元へ来て手を取り握り締める。


「クリス王子、来てらしたのですね。本日はよろしくお願いします。ベスビアナイト国の兵はとても強いと聞きます。どれほどのものなのか、楽しみですなあ」


「あ、ありがとうございます」


 気圧されつつもマリアに、ジャハーンダールが顔をずいと近づける。


「さぞかし、想像を絶する強さなのでしょうな」


 おだてる言葉が次々と飛び出しているから、まわりは不機嫌そうだ。ジャハーンダールは気づいていながら、関心を持たず笑みを浮かべている。


「おや、こうして見るとクリス王子というよりもひめ――」


 飛び出したジャハーンダールの言葉にマリアの背筋が凍ったとき。横から手が伸びて「失礼」と、褐色の手をやんわりほどいた。白くてやわい手を取って、指先に口づけを落とす。


「淡い雪のような主の肌が、あなた様の熱で溶けてしまわれたら大変だ」


 そう謎めいた笑みを浮かべたのはギルだった。軽妙な動きに、誰もが吐息を漏らした。


「これは失敬」


 一番早く我に返り、ジャハーンダールは両の手のひらを上げる。もう触れないという意思表示らしい。それから「楽しみにしておりますよ」ときびすを返した。


「ありがとう、ギル。助かった」


 ギルはおどけて笑って見せた。


「あなたの臣下ですから」


 ギルにどこか救われて、マリアはゆるりと笑みを浮かべる。

 そのようすにアンドレアスは羨望のまなざしをむけ、インディラは美しい臣下との絆に目を輝かせていた。となりにあった黒い影は、ただでさえ黒い姿であるのに感情にまでも黒い沼のような色を滲ませてギルを睨んでいる。

 嫉妬しているとマリアとインディラ以外はすぐに気づいた。おそらく未だにギルが白くやわい手を、離さないからだろう。なにも言い出さないのは、自分の立場をわきまえてのことだろう。


「ギルはいつも当たり前のように言うけれど、それは十分尊いものだよ」


 アンドレアスやインディラが目を見開き、驚いている。気づかされたようだ。ギルは驚きもせずに、笑みを零した。


「俺はあなたのそういうところは、尊いと思いますよ」


「そうだろうか? 当たり前だろう」


 簡単に「当たり前」と言ってのける。それが“あるじ”なのだとギルは、この世界に知らしめてやりたいとどれほど思ったことか。ジャハーンダールには分からぬ感情だろうが、少なくともアンドレアスとインディラにはひびいていた。


「王子様と臣下の距離が近いのはそういうことなのですね」


 小さな声でインディラが呟く。当然となりにいる黒い騎士には聞こえていたが、ソロモンにもきこえており口元に笑みを浮かべる。

 金鼓の音がひびき、試合の準備をするよう兵が告げた。最初の試合はダミアンとジェラールらしい。


「よし、行ってくるぜ。かならず、吉報を持ってきますよ我が主」


 ダミアンはさっそうと去る。ジェラールもアンドレアスと言葉を交わしてから、準備へと向かった。


「貴殿の兵士がどれほどのものか、楽しみだ」


「こちらこそ、よい試合となればいいですね」


 裏のないマリアに、アンドレアスは楽しげに返した。二人の会話を聞いてソロモンは、くすりと笑う。かわいらしい会話だと思ったのだ。

 ソロモンが見てきた世界はどれも欺瞞と腹の探り合いばかりだった。こうも真っ直ぐで何一つ裏のない言葉で交わし合うのを聞いていると、守りたいと思うのはどこから来るというのか。親心なのだろうかと考えていると、マリアが近寄ってきた。


「少しいいだろうか」


「はい、なんでしょう」


「ソロモンから見てダミアンはどうなのだ」


 唐突なその問いを計り知れず、だまりこんでしまったが顎を撫でながら「そうですね」と紡いだ。


「彼は力があるため、一対一ではそうそう敵う者もおりますまい。しかし、彼は力ばかりで知能を使おうとはしないので、そこは弱点ですね」


 指摘は間違っていない。ダミアンは何度かマリアを助けてくれたが、力で解決しようとする節があると感じたのだ。


「そう思うか」


「ええ、それがどうかしましたか」


「いや、自分の臣下のことをよく知っておかねばならないと思って。それにソロモンから見てどうなのかも知っておきたかったから」


 驚いた。そんな考えが飛び出すとは、思っていなかったのだ。


「では、王子。戦っているところをよく見ておいて下さい。それもまた勉強になると思いますよ」


 また金鼓の音がひびいて、競技場によろいを身につけ愛用の槍パルチザンとともにダミアンがあらわれた。反対側からは、ジェラールがあらわれる。

 今一度、金鼓の音が響いたかと思えば兵が「はじめ」と声をかけた。刹那。先に動いたのは、ダミアンであった。パルチザンの剣先をジェラールに向け、空を切る。盾でそれを防ぎ、ながせば鈍い音が辺りにとどろく。

 そこからダミアンは一度、距離を取ると今度は回り込んだが、かわされてしまう。そんな攻防が幾度か続いたとき、今まで防御に回っていたジェラールが動いた。大きく足を踏み込み、パルチザンを弾こうとしたのである。弾かれる前に後方に飛び退いたために、槍が宙へ投げ出されることはなかった。

 ふたたび剣で弾こうとするジェラールに、槍で防いだ。どちらも譲らず、つばぜり合いが続く。

 椅子に座って見ていたマリアは、ケガをしないかと憂懼ゆうくして胸元にある石を強く握り締める。そんなマリアの手にジュリアが優しく触れた。少しでも安心させようとしているのだろう。


「大丈夫ですよ。この試合は武器を弾いた方が勝ちで、命を奪うことではないのですから」


「うん」


 手がわずかに震えている。青い金剛石ブルーダイヤモンドの瞳が伏せられた瞬間、にぶい金属の音があたりにひびいた。視線を向けると、剣が宙に弾かれていた。


「勝ちましたよ、王子!」


 ジュリアの言葉に、マリアもほっと息を吐いた。インディラも、飛び上がって喜ぶ。


「やはり、お強いのですね!」


「ありがとうございます」


 マリアが笑みを浮かべれば、となりにいる黒い騎士は険しい表情を浮かべる。


「王子!」


 声をかけられ振り返ると、ダミアンが戻ってきていた。


「ダミアン、ケガはしていないか」


「大丈夫ですよ、我が主。それに俺たちの体は丈夫だからな」


 ダミアンはおだやかに微笑んだ。心に落ち着きを取り戻し、「良かった」とこぼした。

 金鼓がひびき、今度は黒い騎士とジェラールが戦うこととなった。黒い騎士はインディラに「行って参ります」と、さっさと下へ降りてゆく。愛想がないものだから、インディラはむくれて腕を組んだ。


「『必ず勝ってくる』くらい、いってくれれば良いのに」


 仲が良いようであるのに二人の間には、距離があるのは何故だろう。マリアは密かに首を傾げた。

 試合をはじめるよう合図がなされると、レイヴァンとジェラールは同時に動いた。目にもとまらぬ早さで剣が弾かれる。あまりに早さにやや目がついて行きかねたが、勝ったのはレイヴァンであった。彼の剣さばきは健在らしい。


「強い」


 となりでジュリアが呆然と呟いていた。ダミアンもレイヴァンの早さと強さに愕然とし、目を白黒させる。

 次はレイヴァンとダミアンが戦うことになり、ジェラールが戻ってくると同時にダミアンは下へ降りる。金鼓の音がとどろいて、試合開始合図が出された。

 力であれば強さは、ほぼ互角であろう。決定的な違いは、レイヴァンの方が知性は富んでいる。果たして、ダミアンが勝てるだろうか。ベスビアナイト国の代表であるから、負けるわけにはいかない。今のカルセドニー国を優位に立たせるわけにはいかないのだ。

 マリアには国同士の関係性よりも、大切な人同士が剣を向け合うのがたまらなく悲しかった。

 競技場では剣がぶつかり合い、互角に戦っているのが見て取れた。

 苦しげにマリアは立ち上がり、この場を立ち去ろうとする。あわててお供するようジュリアが申し出た。けれども、断られてしまい寂しげな背を見送る。

 ソロモンはジュリアとギルに言いつけると、マリアの背を静かに追う。



 一人になって会場から出たマリアはうつむいて、風に当たれる場所をさがしてさまよっていた。熱気ばかりがあたりに充満しており、涼めそうにない。一人にもなりたかったが、涼しい風にもあたりたかったのだ。そうすれば頭を冷やすことも出来ると考えていたのだが。

 ため息を吐いたとき。数名の足音がひびいて、マリアを囲ってしまう。


「お前達は……」


 黒いローブを身にまとい、不気味な笑みをたずさえている。手を剣の柄にかけたが、先に背後にいた男が薬品を染みこませた布を取りだして口をおおう。

 抵抗したもののマリアのやわい手ではあらがえず、力を失い下へ垂れる。

 男達はマリアの体を持ち上げると、城の地下へと向かう。そのさらに地下にある牢獄へ、人形のように放り込んだ。重々しく扉が閉じられ、足音が遠ざかるのを感じるとむくりと起き出す。

 嗅がされた薬品に対してマリアは抵抗力があったのと、ソロモンから午前中に“作戦”について話されていたため、心構えが出来ていたのだった。

 ソロモンが言うには、“ティマイオス”は今日、接触を図ってくるだろうことだった。わざと罠にはまったふりをして、クライドとクレアを探すというものであった。その間、ソロモンは“ティマイオス”の基地を探るために黒いローブの集団のあとを追うらしい。

 とにもかくにも、マリアは二人を救うために歩き出す。あたりは闇に包まれており、つま先すら見えない。こうなっては、手探りで進むしかないと決め闇の中に手を沈めた。

 ひやりとした感覚がマリアの手を襲う。手をついた壁はどうやら、つめたい水が這っているようだ。

 これくらいで怖じ気づくわけにはいかないと自らを叱責し、足を動かして闇の中を進んでいく。いくらか進んだが一向に光は見えてこない。ここには太陽の光はおろか、“たいまつ”や蝋燭ろうそくもないのかもしれない。たといクライドやクレアがいたとしても、見つけられそうにないと希望が消えようとしていた。無謀のように感じる。武器は意外にも、うばわれずに無事であった。ここから出られるわけがないと確信しているのかもしれない。それはそれで腹立たしいが、この闇では彼らも間違っていない気がした。


「クライド、クレアいないか!」


 声を張った。こだまするのは、自分の声と足音ばかりで他に音はない。

 さすがに心が挫かれて、ずるずると座り込む。きれいな正装が汚れてしまうが、気にしている余裕はない。ふいにどこからか音がひびき、こちらへ近づいて来るではないか。

 クライドかクレアであれば、声に応えてくれるはず。ならば、別の誰かであろう。敵か味方かも判別できず、とどまっていると赤い紅蓮の炎をゆらめかせて女性が姿をあらわした。

 炎の色でよく見えないが、マリアによく似た顔立ちだ。大人の女性らしく見目佳し。容姿に見とれていると、女性はゆるりと微笑む。


「ああ、良かった。人がいたのね」


 どこか懐かしく感じつつ、マリアは女性に問う。


「あの、あなたは?」


「私はディアナ。よろしくね、王子様」


「なぜ、わたしが王族だと」


「服を見ればだいたいどの階級の者かわかるわ。王子様、ここから出ましょう」


 ディアナはマリアの手を取り、“たいまつ”の灯りだけを頼りに進んでゆく。出口を知っているのか。足に迷いはない。


「ここにわたしの仲間がいるかもしれないんです」


 声をかけてみるとディアナは少し悩んでから、にっこりと微笑んだ。


「大丈夫よ、この場所は牢屋であって迷路ではないわ。きっと、もう外へ出ているはずよ」


 不思議と信用できる気がした。そこで前に夢の中であった女性のことを思い出す。その女性と姿が重なって見えた上、『いつかまた逢える』と台詞が頭の中で木霊する。だから、マリアは聞いてみたくなった。


「あのどこかであったこと、ありますか」


 ディアナの手が小さく震えた。


「いいえ、ないわ」


 声はつとめて冷静を装っているが、どこか憂いが混じっている。これ以上は聞けないとさとれば、マリアはけっきょく口を噤んだ。行き止まりに行き着けば、ディアナは扉を押す。どうやら牢獄のようだ。一つの牢に何人もの人間が入っている。


「これは一体」


 マリアが驚くと、ディアナが答えてくれた。


「みんな、この国の民よ。皇帝陛下が妙な宗教にだまされているのは知っておられますか」


 頷けばディアナは街に“クスリ”や毒が蔓延していること、さらにはそのことで皇帝に諫言をした者が投獄されていると告げられた。なぜ、とマリアが呟けば、二人の会話を聞いていた牢屋の中にいた男が言葉を吐いた。


「おれたちの言葉は、皇帝には届かねえ。その前にあの妙なローブを着た男達が適当な罪状を言って、ここにつれてくるのさ」


 ふつふつと怒りがわき上がるのを感じた。ディアナは振り返り驚く。マリアの怒りが、外へにじみ出ているかのようだったからだ。


「行こう、ディアナさん。彼らの思い通りになんてさせない」


 ディアナは朗笑して「ええ」と、またマリアの手を引いて外へと向かった。



 ソロモンは黒いローブの集団のあとをつけていた。彼らの基地までたどり着くことが出来たが、第二皇子とその母の姿はない。てっきり基地にいるのかと乗り込んだが、見当違いのようだ。ならば牢獄であろうかと考えていると、会話が聞こえてくる。


「ベスビアナイト国の王子は地下へ入れておいた。あの場所ならば、誰も気づかないだろう」


「そうだな」


「護衛として雇った“仮面の男”はどうした?」


「さあ、どこかほっつき歩いてるんじゃないか」


「まったく、あの男はいつもどこに行っているかわからん」


 そのとき、音も立てずにエリスが来た。どうやら上手くいっているらしく、口角を上げてうなずく。


「首尾良く行っているようだな。よし一度、武道場へ戻るぞ」


 ソロモンがささやけば、二人で立ち去ろうとする。そこをローブを着た男にばれてしまい、大声で仲間を呼ばれてしまった。


「おい、侵入者だ」


 まずいとソロモンが焦燥の色を浮かばせていると、「こっちだ」と仮面の男に声をかけられた。それに従い導かれるままに進めば外へ出られた。


「おぬし、なぜ助けてくれた」


 もっともな問いをソロモンがすると、仮面の男は小さく笑う。


「まあ、ばらしてもいいか。俺はオーガスト国王陛下の命を受けて“ティマイオス”の動向を見張っていたんだ。裏の仕事をしながらな。そしたら、そこそこ有名になってアンドレアスの目にとまり、彼の命で“ティマイオス”を探っていた」


 やはり、とソロモンは思った。オーガスト陛下が“ティマイオス”のことを警戒していたのは知っていたし、最近は動きがなかったから大丈夫と判断し、マリアの正体を公言しようとしたのであろう。しかし、それはマリアが断ったためになくなった。


「アンドレアス殿の命も受けていたのか」


「ああ、司祭バラモンの動きがあやしいからってな」


 アンドレアスも大変だな、と呟いてソロモンは腕を組む。なにやら、考え事があるらしい。


「ソロモン閣下、なにをお考えで?」


「いや、なんてことない。今のところ、俺のよみどおりだ」


 したり顔でいいながら、組んだ腕を解かない。彼の中にある疑義の念は消えていないようだ。仮面の男が問いかければ、ソロモンは別のことを考えていたらしい。


「べつ?」


「ああ、どうもいやな考えが消えなくてな」


 それがなにであるかわからず、また仮面の男は問う。ソロモンは眉間に皺を寄せて、顔を歪めた。


「やめておこう。今は、“あるじ”の願いを叶えることが先決だ」


 エリスがうなずく。


「では、一度、武道場へ向かわれますか」


「ああ、行こう」


 仮面の男はまだやることがあると、ソロモン達とは別れた。二人が競技場へ行くと、レイヴァンとダミアンが対峙している。ずいぶんと接戦らしく、いまだに決着がついていない。


「やはりこうなるか」


 面白げにソロモンが呟いたとき、二つの閃光が弧を描きながら宙に放たれる。引き分けという声とともに騒音がひびいたのは、その直後であった。

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