どこにでもある登校風景
「今日ね、なんだか変な夢をみたんだ。自分に殺される夢。」
「お前、よく夢の内容なんかを覚えてるな。俺はとんでもない悪夢かとんでもなくいい夢を見たときぐらいしか覚えてないぞ。それもそんなに明確には思い出せない。」
「いやいやいやいや。待って、これってそのとんでもない悪夢じゃない!?」
俺はここでひとつ咳払いをした。絵理が不思議そうにこっちを見ている。
「そうでもないぞ。ほら、今お前が右手に持ってるその文明の利器で夢の意味でも調べてみるんだな。」
頭の上に疑問符を浮かべながら、絵理はスマートフォンのロックを解除し、ブラウザアプリで検索エンジンを立ち上げた。先程まで明るい声はスマホに夢中で口からお留守になる。
某私鉄にある
「へぇー!殺される夢って
朝からやかましい。まぶたのように外界からの刺激をシャットアウトするような器官が耳にもあればいいのに。
「……聞いてるよ。俺、徹夜明けなんだよね。ちょっと寝かせてよ。」
「もう!そんなこと言っても次の駅ですぐ降りるからそんなに寝れないよ?」
「その些細な時間だけでも睡眠時間として割り当てられたら授業中の俺がその分頑張れるんだからいいだろ。」
「そんなこと言いながら、結局寝ちゃうんでしょ。」
「うるせぇ。」
そんなやり取りをしていると、車掌が聞き取りづらいアナウンスで扉を閉める旨を告げ、ずっと開いたままだったドアが閉まる。発車の合図が響く。程なくして、ゆっくりと2つの連なった車両が動き出し、千石港駅を去っていく。そうして、電車は俺たちの住む
県立の
先程の夢の話はどこへ行ったのか。絵理はいつもの調子で勝手にしゃべり続けている。その様子を見て、俺は呆れながらもう一度目をとじた。電車の揺れは心地よく俺を眠りの淵へ運んでいった。
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