第23話 再会
(ここは何処だ?)
パーサーは今、森の中に居た。
鳥達のさえずりが心地好く、森の中であっても太陽の優しい光指す場所には色とりどりの花が咲き乱れており、それらが木々と調和して幻想的な風景を醸し出している。
(綺麗だな)
あまり、自然に触れた事の無いパーサーでもこの森の持つ魅力に引かれていた。
そんな森をパーサーは歩いていると不意に森が途切れて目の前に泉が現れた。
そして、泉のかたわらに一人の女性が居た。
『**!』
パーサーは名前を呼んだ。
恐らくは女性の名前。
(あれ?僕はなんて言ったんだ?)
自分で自分の言った言葉が解らなかった。
不思議に思ったパーサーだったが、女性がゆっくりと自分の方に向いたときに全ての思考が停止した。
シルクの様な柔らかさと光沢のある、腰まで届く長い髪を揺らして振り返った女性は女神と言っても信じ混む程の美しさがあった。
『***!』
女性は嬉しそうに誰かの名前を呼ぶとパーサーに近づいて来た。
近づいて来る女性は小柄で身体には美しい括れや豊かな胸があり、かの有名な古代美術彫刻ヴィーナスの様だと思った。
(って、わわわわ!)
パーサーは彼女が何も着ていない事に気付き、一気に慌ててしまった。
(ちょっ、ちょっと!待って待って!何で、着てないの!?)
眼をそらす又は眼を閉じようとするも身体はまったく言うことを聞かない。
女性は直ぐにパーサーの目の前に来た。
『***、*****!』
女性は笑顔でパーサーを見つめて何かを言っている。
不意に女性がパーサーの顔に近づいて来た。
(えっ!?待って!それってあれ?この流れはあれなの!?)
女性の透き通った青い瞳がパーサーにどんどん迫って来る。
(あっ、ああ!ん?この人、誰かに似てる様な気が?えっ?ちょっと、待って!この人、クラーディに似てる?)
「クラーディ!待って、まだ心の準備が!!」
パーサーは慌てて起き上がった。
それと同時にゴツッと頭に何かが当たってパーサーは痛みに悶絶した。
起きたパーサーの眼前にクラーディが居たのだ。
「おう!クラーディ、パーサーが起きたか?」
ネッドの声が聞こえた。
どうやら、狭い脱出挺に戻って来た様だった。
「ん?パーサー、どうした?顔が赤いぜ、風邪か?」
「えっ?い、いや、大丈夫です!」
パーサーは首を振りつつ、答えた。
隣ではクラーディが首を傾げているのが目に入ったが、パーサーは今はクラーディを見ることが出来なかった。
(何で、僕はあんな夢を見たんだ!)
顔を真っ赤にしてパーサーはハァと溜め息をついてネッドに向き合った。
「ネッド、どうしました?」
「おう!パーサー、どうやら俺達は運が良いみたいだぜ。あれを見ろよ」
パーサーはネッドに言われた海上を見ると遠くの方で黒い黒煙が立ち上っているのが見えた。
「あれは何だ?」
「あれ、知らないのか?あれは最近、開発された機械で出来た何て言ったか・・・そうそう、蒸気船ってヤツだよ!」
ネッドは意気揚々と説明し出した。
曰く、動力はマストでの風力やゴーレムの力ではなく、蒸気機関と言う機械で動いている。
曰く、蒸気機関とは木炭を釜で燃やしてボイラーと言う水の入ったタンクを熱して沸騰した蒸気を上手いこと利用して動かしているシステムである。
「どうよ、パーサー!すげぇだろ?」
「う~ん。別にそんな大掛かりな事をしなくても中型ゴーレムとかでオールを漕がせた方が簡単ですよね?」
「まぁラビから見れば、そうなんだろうな。ハハハハ」
とにもかくにも助かったとネッドは信号弾を取り出して上空へと撃ち上げた。
そして蒸気船でも信号弾が撃ち上がり、脱出挺へと向かって来た。
黒煙が脱出挺に近づいて来る。
時が進む毎にそれは大きくなっていた。
「でっ、でかい!!」
パーサー達の脱出挺からでも見えて来た蒸気船にパーサーはギョッとした。
リーグルよりも更に巨大でかつ、灰色の鉄で出来た船は船と言うよりも中世の要塞を前にしている様でパーサーを驚かせた。
「何人だ?怪我人は居ないか?居たら、教えてくれ!」
船から、声が聞こえてネッドが返事をする。
「三人だ!一人は足に怪我をしている!引き上げてくれ!」
「ネッド?クラーディはゴーレムだよ?」
「シッ!良いから任せとけ。縄ばしごが下りたら、お前が先に行け。俺はクラーディにロープを巻き付ける」
縄ばしごが下ろされてパーサーは取り敢えず、先に上がって行った。
「わあ!」
甲板に上がったパーサーは思わず声を上げた。
甲板にはリーグルの様なマストは無く、空に高くそびえ立つ鉄の構造物と黒煙を吐き出す大きな二本の煙突にパーサーを出迎えていた。
「なんだ、あんたラビか?」
呆然と周りの風景を見ていると蒸気船の船員が話し掛けて来た。
「え?はい」
「チッ」
船員は舌打ちをしてパーサーから離れていった。
パーサーは訳が分からず、その船員を見送ったが周りの自分を見る目が何だか険しいのに気付いて居心地の悪い気がしてきた。
「パーサーくん?パーサーくん、ですよね?」
突然、パーサーを呼ぶ声が聞こえた。
その声にパーサーの心臓が一瞬、高鳴った。
「やっぱり!パーサーくん、私です!」
パーサーは声の方を見ると灰色のベールと長袖のワンピースを着た少女が近づいて来ていた。
「マリア!」
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