第78話ガチャのやり方って人それぞれですがジンクスって大事ですよね。それでも当たらない時は当たりませんが

 謎の聖剣の呟きがかなり気になる所ではあるが、みんなの安否が気になる俺はそのままミーアの向かった方向へと向かって行く。


 どうやら聖剣の一撃はかなりの範囲に渡って影響があったようで、今の所俺の前に出てくる魔物の気配は感じられない。




 しばらく走っていると俺の危険察知に激しく反応する存在が感じられる。


 ……これ程のプレッシャーを感じたのは先程のミドリとの邂逅の時と、世界の守護者との戦闘の時以来だ。


 俺は残り魔力が半分程度なのを承知の上で更にその存在に向けての走る速度を上げるのであった。







「だからさっさと帰れと言ってるのです! 」


 シロの怒っているような叫び声と共に、こちらに向けて吹き飛ばされてくる敵だと思われる存在に、俺は容赦無く(サンダー・アロー)を数十本をお見舞いする。


「ふぁ⁈ いきなり魔法を撃ち込んでくるとはどれだけ凶悪な幼女なのだ! 」


 こちらの感情を逆撫でるような言葉使いの相手は俺の魔法を腕の一振りで消し去るとその場で一回転をして何事も無かったかのように着地をしながら身嗜みを整えている。


 見た感じ壮年の紳士といった感じの服装をした老人だが、明らかに普通の人間とは思えない程の存在感と見ただけで感じる胡散臭さがこいつが只者でない事を証明してくれている。


「主人よ、気を付けろ! そいつは飄々としているがかなりの手練れだ。我々の前に急に現れたと思ったら、セシルとアクトを瞬く間に行動不能に追いやられた。今の所はライアと先程現れたミーアに診てもらっているが正直な所……劣勢だ」


 既に巨人と化しているスプリガンからの報告を受け、どうやら俺の中の嫌な感じの原因が目の前にいる胡散臭い老人が原因だった事が証明される。


 スプリガンとシロ、そして俺を見ながらも飄々とした態度を崩さない老人を見ながら、俺は現状でこの男を倒す為の戦力の確認を始める。


 現在の俺の魔力は半分程度……シロとスプリガンの方は多少の疲れはあるようだがまだまだ戦えそうだ。


 今の現状で俺の【無課金ゲーム】スキルで召喚出来るキャラはそれほど多くはなく、スライムか競争獣が呼べる程度だ。


 ミーアとライアがセシルとアクトの元にいる以上、今いる2人との連携でこいつをどうにかしないといけないのか……厳しい所だ。




「おやおや? ようやくお出ましですか、エルフの姫君よ。貴女に会う為にこの老体に鞭打ちここまで来たのに中々つれないご様子だ……ご安心を。貴女の連れのお方には少しだけ動けなくなるようにしただけですぞ? そのような目で見られると年甲斐もなく興奮してしまいますな! 」


 俺の睨みをまるで喜ぶかのように手を口に当て目だけで笑う老人。


 よく見るとステッキ以外に武器は持っておらず、黒のタキシードにも武器と思える物は一切見受けられない状態だ。


「ご主人、こいつかなりの体術の使い手です。索敵していたセシルの目の前にいきなり現れると右の掌底でセシルを一撃で動けなくしました。すぐさまライアの護衛に入ったアクトもある程度は打ち合っていましたが蹴りの一撃でこちらも戦闘不能に追い込まれています」


 悔しそうなシロの口ぶりから、どうやらシロもかなりあしらわれたようだ。


 シロとスプリガンはかなりの耐久力を持つ為今まで耐えてこれたのだろう。


「了解した。シロとスプリガンは俺のサポートに入ってくれ。私がメインでこいつと戦う。どうやらお目当は私のようだしね……」


「ご主人、それは危険です!せめて3人同時で戦いましょう! 」


「そうだぞ主人。こいつの力は未知数だ。今のままではこちらが不利すぎる。一旦態勢を立て直すべきだ」


 シロとスプリガンの2人から反対意見が出てくるが、残念ながら今の俺には聞けない話だ……何故なら


「2人も倒されて黙ったままではいられないよ! それに2人には悪いけど……全力で戦うつもりだから出来れば2人には手を出さないでもらいたい。何処まで被害が出るか分からないしね」


 そう言うと、俺は魔力を全開で開放し、アオをシロへと投げ渡す。


 ただ魔力を開放しただけなのにあたりの木々の葉が飛び散り、風が悲鳴をあげ始める……




「これは……失礼した。世界の守護者の戯言かと思っていたが、どうやら本物のようですな。宜しい! 私も全力でご相手致すとしましょう」


 先程までの人を馬鹿にしたような雰囲気から何処かの達人のような研ぎ澄まされた気迫がこちらにまで伝わってくる! どうやら俺だけに意識を向けてきたようだ……だけど、こちらだって負けられない!


 俺は自分の魔力を使い精霊達に援護をお願いする。


 俺のお願いに答えてくれた精霊達が風を悲鳴から闘争の歌へと変えていき、無数の光が俺の周りを漂い始める。


「伝説の【精霊歌】だと⁈ エルフの姫は精霊すらも掌握していると言うのかね⁈ 」


 驚きの声を上げる老人に俺は全力で走り寄るとその体目掛けて聖剣を振り抜く!


 動揺した老人は辛うじて胴薙ぎの一撃を後ろに飛んで躱すことに成功するが、それは俺の目論見通りだ!


 そこから更に追撃する為、(ブースト)で加速力を上げ(パラレル・ドライヴ)で四方から追撃を掛ける。


 老人は俺の本体が分かっているのか背後に振り向く反動でこちらに後ろ回し蹴りを放ってくるが、俺はそこに新たなるスライムである(ディフェンスライム)を召喚しその足に向けてスライムを投げ放つ!


「何と! ここまで読んでいたとは ⁈ 」




 ランク3


 ディフェンススライム


 相手の攻撃に当たると反応し、その攻撃力を倍加させた上で相手にダメージを与えるスライム。


 消極的な性質の為、攻撃をしなければ害のないスライムだが攻撃に巻き込むと痛いしっぺ返しが待っている。




 歓喜のような叫びを上げながら、スライムに蹴りを当て全身から血を流す老人と俺との戦いはまだまだ続くのであった。

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