第79話最近しているソシャゲが重くなってきている……重くなりすぎると辛いんですよね

 ディフェンスライムの一撃によりかなりのダメージを受けた老人だが未だその目には闘志が漲っている。


 役目を終え消えていくディフェンスライムの代わりに呼び出すのは俺が良くパズルスライムで使っていたキワモノスライムだ!


「な、何だね ⁈ その薄気味悪いスライムは! 先程のスライムも奇妙だったが、それはもうスライムとは呼べないだろう ⁈ 」


 いきなり俺のスライムをディスり始める老人に少しムッとしながらも、俺は手の中に現れた赤褐色の肌に筋肉のようなものが浮かび上がる目つきの悪いスライムを天に掲げる。


「いきなり人のスライムを貶すとはいい度胸だ! 私のスライムに文句があるなら倒してからにしてしてよね! 」


 スイカほどの大きさであるスライムを片手で天に掲げた体勢から老人に目掛けて投げつけた俺はこのスライムの真の恐ろしさを知らしめるべく、投げたスライムの後を追いかけるように飛び出していく。


「どんな奇策を打ってきたかは知らないが何度も私に不意打ちをできると思わないでいただきたい! 」


 スティックを右手で回転させると、まるで扇風機の羽のように残像を残しながら俺のスライムにスティックを向ける老人だが、その程度の防御で俺のスライムを防げるなどと思わないでほしい。




 ランク3


 マッスライム


 通常ゼリー状の体が異常進化の為、筋肉のような繊維質の体となったスライム。


 敵に接触すると、その体を変化させまとわりつくような関節技をかけ1ターン行動不能にする。




 要は相手を1ターンだけ行動不能にするというトラップ型のスライムな訳だが、俺が相手のカウンターを受けずに一方的に最大攻撃を仕掛ける事が出来る事を考えるとかなり強力で扱いやすいスライムである。


 ゲーム内では相手の凶悪な攻撃を封じ込める時や、相手のチャージ攻撃などを止める為によく使われていたスライムだが、その余りの姿に賛否両論のあるスライムでもある。


 マッスライムは旋風のような老人のステッキに当たった瞬間、玉のような体をヒトデのような形へと変化させステッキ自体に絡まってゆく。


 回転の中心をマッスライムに絡まれた老人は、驚きのあまりマッスライムを剥がそうと懸命に腕を振るうが、そこから更に体を伸ばしながら腕ひしぎの形を取っていくマッスライムから逃れる事が出来ないようだ。


「な、何というクレイジーなスライムなのだ! 老人の触手プレイなど、何処に需要があると言うのですか ⁈ 」


 右腕に関節技を掛けられながらも何とかギリギリで極められる一歩手前で耐えている老人は、脂汗を流しながらこちらに対して悪態をついてくる。


 俺はそれを聞きながらも。老人の下まで駆け寄ると精霊達の歌で煌めく己の拳を握りしめマッスライムに関節技を掛けられて地面に転がっている老人へと容赦なくその拳を振り下ろす。


「ぐほぉぉぉっ ⁈ 」


 鳩尾に俺からの強烈な一撃を受けた老人は苦痛の声を上げながら地面から跳ね上がるように空中へと浮き上がる。


 そこへ俺は聖剣を使い、(ソニック・ブレード)で追い討ちの攻撃を撃ち込む!


 空中で何もする事が出来ない状態から、俺のオーラを纏った一撃が無慈悲にも老人の体へと直撃し、大爆発が起きる。


 七色に光りながら爆発するそれを俺は見上げながらも、俺は気をぬく事なくその場で更なる攻撃を加えるべく聖剣を構える。







『ぬおおおおおおおお! 』


 突如として爆発した光が一瞬にして、湧き上がる闇に包まれ消えていくと、雄叫びが聞こえてくる爆心地より飛び出てきた『何か』が俺の目の前へと突き刺さるようにやってくる。


 その何かに向けて俺が魔法を使おうとした時、その何かはステッキに白い布を付けて俺に向けてぶんぶんと振られる……どうやらこの戦いの終着点に着いたと俺が知ったのは、そんな奇妙な結末を見ながら意識を失う途中の出来事であった。







「ご主人は無理をし過ぎです! どうしていつもいつも戦い終えたら倒れてしまう程の激闘をしちゃうのですか! こんな事ならあの時に縛ってでも止めておくべきでした」


「全く……相手が引いたから良かったようなものの、意識を失うまで攻撃するなど、戦士としては失格だぞ? 主人はもう少し力配分を考えて戦うべきだ」




 意識を取り戻した俺が最初に見たものは、俺を抱きしめながら俺に対して怒り続けるシロの説教と、それを横から見ながら呆れたような表情で俺の未熟さを指摘する、子供状態の姿に戻ったスプリガンの顔であった……




 シロやスプリガンからその後の話を聞いたのだが、俺が老人の白旗を見て意識を失い倒れ掛けた所を老人が焦りながらも抱きとめてくれたらしい……どうなっているんだ?


 それを見たシロが老人の前へと駆け寄ると、老人はシロに俺を手渡して困惑するシロをおいてその場から消え去ってしまったそうだ。



 よく分からない結末となってしまったが、何とか誰一人として欠ける事なく戦いが集結した事を知った俺は、抱き締めながらも文句を言い続けるシロをどうにかして落ち着かせようと、力の入らない手でシロを撫でながら落ち着かせるのであった。




「申し訳ありませんご主人様。先行しながらも何一つご主人様のお力になれなかったこの私をお許しください」


「何言ってるの? ミーアが2人を助けてくれたから私は戦いに専念できたんだよ! 2人の命を助けてくれたミーアに感謝する事はあってもミーアを叱る事なんてありえないから……後、残念そうにこちらを見ないの。それと隙があればすぐに私の脚を撫でてくるのはやめなさい! 」


「ご主人様とのスキンシップが少ないとメイドパワーが足りなくなってしまうのです……」


「ええぃ! この駄目イドめ! 」


 俺の元に戻ってきたミーアがいきなり土下座をしながら謝ってきたのでそれを止めようとしたのだが、どうやらこの駄目イドは俺からの叱責が欲しかっただけのようだった……


 お望み通りにミーアを踏みつけてやると嬉しそうに悶えている彼女を足元に見ながら、俺はこんな緩い時間がとても大切なものだった事を心で噛みしめるのであった……変な性癖つけたく無いなぁ。




次回配信は月曜日予定です。





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